「アンガ―マネジメント」という言葉をきいたことがあるだろうか。アンガ―とは「怒り」、マネジメントとは「管理」を表し、自分の怒りを適切に管理することを示す。今や、企業の研修や小学校での授業にまで広がっているというアンガ―マネジメントについて、日本アンガーマネジメント協会 代表理事の安藤俊介さんにお話を伺った。

「怒らない」ではなく、「怒ることと怒らないことの線を引く」

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事 安藤俊介さん

――アンガーマネジメントとは一体どういうものなのでしょうか?

アンガーマネジメントは1970年代にアメリカで生まれた、怒りと上手につきあうための心理教育、心理トレーニングと言われています。怒らないことが目的ではなくて、「怒ることと怒らないことの線引きができるようになる」ことが目的です。

我々って実は怒っても後悔するし、怒らなくても後悔する。それを繰り返しているんですね。「怒らなきゃよかったな」「やっぱり言っときゃよかった」、どちらにしても後悔してしまう。なので、怒らなくてもいいことは怒らないようにしよう、怒らなきゃいけないときは怒るようにしよう、線引きができるようになるというのがマネジメントの意味です。

――怒らない方法を学ぶのかと思っていました

そう思われる方もけっこういらっしゃるのですが、人間には喜怒哀楽があり自然な感情のひとつですから、それ自体が悪いわけではないんですね。

――適切な場面を見極めるのが大切なんですね

あとは怒るにしても適切な表現をしておくことが大切です。

――その場面は普遍的なものですか?

仕事の場合であれば、怒らなければいけないのは「決められたルールを守らなかったとき」ですよね。逆にやってはいけないのは「ラインが曖昧な怒り方」です。例えばサラリーマンがいたとして、ある日は部下が10時に来ても怒らない、ある日は9時55分に来ても「お前は遅い」と怒る。そうなると、相手はどうして怒られているのかわからなくなります。怒る基準をいつも動かしているのは失敗なんです。ラインを決めておいて、そこから外れたら怒る、ということが大切です。

――最初に示しておくんですか?

本当は最初に決めておいた方がいいですね。我々はいつも三重丸で説明します。一番中心は自分と考え方がまったく同じ。2番目は自分の考えとはちょっと違うけど許してもいいライン。一番外側、3番目の丸は許せないラインです。

三重丸の図。(1)「価値観が同じ」(2)「受け入れられるもの」(3)「受け入れられないもの」という構成になっている

多くの人は、相手が10時に来たことに対して、ある日は許すことができます。ということは(2)なんですよ。ところが、許せない日もあります。これは(3)になってしまっているんです。でも、他の人からはその違いが見えない。だから、(2)のラインをなるべく安定させましょうというのが考え方なんです。

その線引きをどうするかというと「後悔」が鍵となります。怒って後悔するなら怒らなくていいし、怒らなければ後悔するなら、怒るところなんです。

――そうなると、失敗してみないとわからない部分もありそうですね…

本当は毎日失敗しているんですよ。

――毎日の後悔の中から、線を見つけると

そうですね、努力しておくということですね。

※第2回「すぐ怒る人は怒られ弱い」は1月23日更新予定です。


<プロフィール>
日本アンガ―マネジメント協会
日本アンガーマネジメント協会は、ニューヨークに本部をおく「ナショナルアンガーマネジメント協会」の日本支部。教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナー、コーチングなどに日々奮闘している。また、アンガーマネジメントのトレーナーの育成にも力をいれている。