クルママニアの安東弘樹さんが人生初のプラグインハイブリッド車(PHEV)を購入した。BMWの「X5 xDrive50e」というクルマだ。レンジローバー「ヴェラール」のディーゼルエンジン車(マイルドハイブリッド)から乗り換えた格好だが、なぜPHEVをチョイスした? 買ってよかった? ご本人に聞いた。
PHEVってどんなクルマ?
安東さんに話を聞く前に、まずはPHEVとはどんなクルマなのかを押さえておきたい。
PHEVは外部から充電できる(プラグイン機能のある)ハイブリッド車だ。エンジンを搭載しているので、ガソリンを給油しておけば普通のクルマと同じように走るのだが、HVよりは大きい(電気自動車=EVよりは大抵の場合小さい)バッテリーも積んでいるため、充電すればEVのようにモーター駆動で走ることもできる。バッテリーの電力だけで走っていればガソリンはほとんど減らないのが売りだが、自宅で普通充電できないと「うまみ」が感じにくいクルマでもある。安東さんはご自宅とガレージハウスにクルマの充電設備を設置済みだ。
ちなみに、2024年2月に話を聞いた際、安東さんはPHEV購入にかなり心が傾いていた様子だったが、どのモデルにするかについてはメルセデス・ベンツ「GLC 350e」を含めてかなり迷っている様子だった。「X5 xDrive50e」については大きすぎる(特に横幅)ことが引っかかっている様子だったのだが……。
X5のPHEVはコスパが高い?
――「X5 xDrive50e」を購入されたそうですね! 「GLC 350e」と迷っていらっしゃったように記憶しているんですが、X5にした決め手は?
安東さん:まず、「X5 xDrive50e」にはシートベンチレーターが付いているからです。しかもアクティブベンチレーションというもので、排熱だけでなく、身体の熱がこもっている場所にエアコンの冷気を吹きかけるシートクーラーとの併用で、かなり快適です。
安東さん:バッテリーの容量は「GLC 350e」が31.2kWh、「X5 xDrive50e」が29.5kWhでGLCの方が少し大きいんですけど、X5も30kWh級ということで、こちらに決めました。
安東さん:購入にあたってはレンジローバー「ヴェラール」のPHEVとも比較したんですけど、「X5 xDrive50e」の方がコスパが高いんですよね。
――X5のPHEVとヴェラールのPHEV(最上級グレード)はだいたい同じくらいの価格ですが、X5の方がコスパが高い?
安東さん:ヴェラールのPHEVはバッテリー容量が19.25kWh、エンジンは2.0Lの直列4気筒ターボなのですが、X5のPHEVは29.5kWhでエンジンが3.0Lの直列6気筒ターボです。その組み合わせで、ヴェラールが値下げする前はX5の方が100万くらい安かったんです。X5はドアにソフトクローザー機能が付いていたりと質感も高いような気がしました。
それと、そこまで重要ではないのですが、「X5 xDrive50e」は車両重量が2.5トンと重いのに、「ゼロヒャク」(停止状態から100km/hに達するまでの時間)が4.8秒なんです。パワーがあってEV走行距離も長いところが魅力です。
ただ、デザインはヴェラールの方が好きなので、街で見かけると(心が)チクっとしますけどね……。
奈良県まで往復1,000km強を走行! 燃費は?
――バッテリー容量の大きさ、EV走行距離の長さは重要なポイントだったんですね。
安東さん:フル充電で100km走れるかどうかは大きいですね。X5は「ガチ」で100km走れます。何回試しても、バッテリー残量が95%からでも100km走れるんです。
カタログ上の数値(EV走行距離)は110kmで、購入する前は100km走れるかどうかについて少し懐疑的だったんですけど、経験上、ドイツ車がカタログに近い性能を発揮することは知っていました。
――例えば電気自動車(EV)だと、フル充電で何km走れるかは、カタログに書いてある数値と実際の数値にけっこう差があったりしますが、「X5 xDrive50e」はほぼカタログ通りのEV走行距離が実際に出るわけですね。それは感心しました。
ちなみに、充電しておけば電気だけで都内まで往復できますか?(安東さんは千葉県在住。都内までは往復100kmくらい)。
安東さん:ちょうど先日、TBS(東京都港区)まで電気走行だけで往復できました。
――それはすばらしい! もし走っている途中でバッテリーが減ってきたら、急速充電することもできるんですか?
安東さん:「X5 xDrive50e」は急速充電ができないんです。「GLC 350e」には急速充電口が付いているので、そこはメルセデスの勝ちですね。
ただ、考えるてみると、PHEVで急速充電器を使うのは、なんだか落ち着かないな、とも思います。
――PHEVはバッテリーが切れてもガソリンさえ入っていれば走れますが、EVはバッテリーが空になると走れないので、急速充電器を使う際の「切実さ」みたいなものは違う感じがしますからね。
安東さん:30分以内であっても、急速充電器を使うのはけっこう気を使うかもしれません。申し訳ない気持ちで使うくらいなら、急速充電機能はなくてもいいのかなとも思います。
――電気とガソリンを合わせた「燃費」の面から見て「X5 xDrive50e」はどうですか?
安東さん:先日、奈良県に出かけました。フル充電で出発して、宿泊先のホテルでバッテリーを充電し、翌日は少しだけ観光して自宅まで走りました。往復1,000kmを超える道のりだったのですが、燃費は17km/Lだったので、かなり良好だと思います。
PHEVといっても3.0Lのターボエンジンなので、出発前は「燃費はどうなのかな?」と思っていたんですけど、もともとBMWの直6エンジンは燃費がいいですし、電気の使い方も上手な制御だなと思いました。うまくエンジンで発電して、EV走行に切り替えてエンジンを休ませるような制御を細かくやってくれている感じです。
――電気を使い切ったら、あとは普通のエンジン車と同じような走りになるのかと思いきや、うまくハイブリッド走行をして燃費を伸ばしてくれるんですね。とても賢いクルマのようです。
安東さん:「X5 xDrive50e」はリアに305/40R20と幅の広いタイヤを装着(※)しているので、それも含めて燃費はどうなのかなと思っていたんですけどね。
※編集部注:幅の広いタイヤは接地面積が多くなるので、燃費が悪くなる傾向にある。
安東さん:それと、燃費は「満タン法」で計算したのですが、トリップメーターの数値にほとんど誤差がないことにも驚きました。やっぱり、最近のドイツ車、特にBMWのトリップコンピューターの精度はスゴイなという気持ちです。
――では、「X5 xDrive50e」を買ってよかったですね?
安東さん:そうですね、ただ、ヴェラールのPHEVのバッテリーが30kWh級になって、エンジンがもう少し大きくなって、実質燃費も「X5 xDrive50e」と同じくらいになったら、また悩むかもしれません。もちろん、価格も価格なので気軽に乗り換えられるわけではないんですけどね。