フォルクスワーゲンがミニバン「シャラン」のディーゼルエンジン搭載モデルを日本で発売すると聞いたので、安東弘樹さんに試乗してもらった。以前、ガソリンエンジンのシャランに乗っていたことがある安東さんは、新モデルをどう評価するのか。
※文と写真はマイナビニュース編集部の藤田が担当しました
「シャラン」が日本市場に登場したのは2011年のこと。両側の後席が電動スライドドアになっている7人乗りのミニバンで、累計約1万5,000台を販売している。パワートレインはこれまで、1.4L直列4気筒のガソリンターボエンジンのみの設定だったが、このほど2.0Lのクリーンディーゼルエンジンが登場。性能はガソリンエンジンが最高出力150ps、最大トルク250Nm(ニュートンメートル)、ディーゼルエンジンが同177ps、380Nmとなっている。
「シャラン」とディーゼルは相性抜群!
安東弘樹さん(以下、安):(乗り込んですぐ)うわ、懐かしいなー! メーターも変わってないですね。ステアリングの形は少し変わっていますけど、景色はほぼ一緒です。変な話、ガッカリするほど変わってない(笑)
マイナビニュース編集部(以下、編):いつ頃、シャランに乗っていたんですか?
安:2013年から2016年までくらいですかね。その後、ジャガー「F-PACE」(SUV)に乗り換えたんですけど、当時、シャランにディーゼルエンジン搭載車があれば、乗り継いでいたかもしれないです。
なにしろ、家族が気に入ってたんですよね。電動スライドドアで、2列目にガッチリした椅子が、ちゃんと3つ付いてて。それと、滅多になかったですけど、7人乗りでよかったと思ったシーンがありました。私と妻と子供2人、それに義理の両親を乗せて出掛ける時なんかに。
編:お子さんも、まだ小さかった?
安:そうですね。例えば2013年だと、長男が7歳で次男が4歳とか。
編:海に遊びに行くのでも、車内で着替えたりする場合、このくらい広いと便利でしょうね。
安:もー、本当に便利ですね! だから、F-PACEに乗り換えた時に、妻が唯一、新しいクルマで気に入ったポイントといえば、明るいベージュのレザーシートくらいでしたから(笑)
編:そのくらい、奥様もシャランが気に入っていた。
安:買い換えると決めた時には「えー!」みたいな感じでしたよ。スライドドアじゃなくなりますしね。子供がいると、ドアを開ける時、隣のクルマにぶつけないかと気を使うんですよ。電動スライドドアなら一切、そこを気にしなくてもいいので。本当に気に入ってましたね。しかも、乗っていたシャランには電動サンルーフが付いていて、車内は明るかったですし。
シャランにも当時、明るいベージュのレザーシートが用意されてはいたんですよ。ただ、電動サンルーフとレザーシートの組み合わせが選べなかった。だから、泣く泣くサンルーフを選んだんですけどね。
今回のシャランでは、サンルーフとレザーシートの組み合わせが選べるって聞いたので嬉しかったんですけど、なぜか、レザーシートの色が黒しかない(笑)。本国ではベージュも用意されているだけに、そこは、またしても残念です。フォルクスワーゲンは、オプションの選択肢の少なさがほかのドイツブランドと比べて弱みになっていると思います。
編:いつも、クルマを選ぶ時に何か1つが足りないと感じるとおっしゃっていますね(笑)
編:これが前からあれば、購入していたかもしれないというディーゼルエンジン搭載のシャランですが、乗ってみていかがですか?
安:1.4Lのガソリンエンジンとは、まるで違いますね。断然、ディーゼルの方がいいです。走り出す時なんか、ガソリンエンジンだと「頑張んなきゃ!」という感じでしたけど、このディーゼルエンジン搭載モデルは、当時の気分でガスペダル(アクセルのこと)を踏むと、背中がシートに押し付けられる感じですもんね。それと、音がディーゼルエンジンっぽくないというか、ガソリンエンジンとほとんど変わりません。
あと、「DSG」(2つのクラッチを持つトランスミッションのこと。シャランは6速DSGを搭載)もキビキビしてて、好きです。自分の思い通りのタイミングでシフトチェンジできますから。
※編集部注:DSGのシフト制御に好感を示した安東さんだったが、マニュアル車が好きな安東さんは運転中、シフトを「マニュアルモード」に設定し、ステアリングの裏側に付いているシフトパドルを使って、自らシフトポジションを操作しつつ運転していた。
編:ディーゼルエンジンだと燃料代が軽油だから安くなりますし、燃費もガソリンに比べると良くなりますよね。
安:そうですね。さっきの高速道路では、時速80キロでエンジン回転数が1,230rpmくらいで、時速100キロだと1,620rpmくらいでした。
安:それと、アイドリングストップとエンジンの始動が、すごくスムーズなのでびっくりしました。私が乗っているメルセデス(メルセデス・ベンツの「E220d 4MATIC オールテレイン」というクルマ。納車から4カ月弱で約1万4,000キロを走ったとのこと)よりスムーズかも。始動の時の振動も、こっちの方が少ない感じがしますね。ちょっとびっくりしましたが、意外な発見でした。あと、意外にもシャランは小回りが利く!
ただ、メーター周りからは、さすがに少し古さを感じますね。しばらくフルモデルチェンジしてないクルマですから、そこは仕方ないともいえますけど。
日独ミニバン談義
編:これまで、シャランというクルマのことをよく知らなかったんですけど、そもそもミニバンって、日本メーカーが得意とする車種というイメージがあります。フォルクスワーゲン製のミニバンは、日本製と比べてどうなんでしょうか。
安:もちろん、ティッシュボックスを収納できるとか、利便性で日本製ミニバンの方が優れている点はあります。だけど、見てくださいよ、このドア!
編:がっちりしてますね。
安:こんなミニバン、日本にはないですよ。シャランに乗っていた当時、たまたま日本製ミニバンに乗る機会があって、驚いたことがあるんです。同じミニバンでも、こんなに違うのかって。
編:どのあたりが、そんなに違ったんでしょう?
安:私が以前試乗した日本製ミニバンは、2列目がベンチシートだったんですけど、それがペラペラというかですね……。シャランからは、「俺が絶対、守ってやる」というメッセージを感じるじゃないですか。重厚感というか。
シャランのシートって確か取り外せるんですけど、1人では重過ぎて、とてもじゃないけど交換できません。椅子が重いということは、乗員は守られているということです。扉の厚さもそうですよ。閉まる時、「パタン」という感じか「ガチ」っていう感じかで、安心感が違います。
編:ここでも、ドアの開け閉めの話が出てくるんですね。
安:スライドドアでも違いが出ますから。
編:シャランの方が、ギッシリ詰まっているような感じがしますね。
安:そうなんですよ。そこは本当に、日本メーカーにも考えて欲しいと思います。安全装置を充実させるのも大切ですが、いざということもあるので……。
あ、水陸両用車だ! ロマンがあるなー。「シュヴィムワーゲン」を思い出しますね。
編:すみません、ミニバンの日独比較に戻りたいんですが、シャランはがっちり、ギッシリとした作りだけど、その代わりに値段が高くて、日本製は作りはそうでもないけれど、安く買えるといえますか?
安:いえ、日本製でも高いのは高いです。シャランより高いモデルもありますよ。いろいろと装備や便利機能が付いていますよね、日本製は。
編:日本とドイツだと、クルマづくりにおいて、何を「豪華だ」とか「リッチだ」と考えるか、その捉え方が違う、という感じですかね? 例えば、純銀がいいのか、金メッキがいいのかみたいな……。
安:おっしゃる通りですね。本当にそうです。ドイツ車は純銀というか、コンセプトが根本的に違いますよね。やっぱり、アウトバーンがあるのは大きいと思います。あそこで、ペラペラなクルマだと走れないですからね。
(河口湖周辺を引き続きドライブ中)
安:しかし、なぜ人間は、水辺に集まるんでしょうね?
編:え?
安:ただ「水が溜まっている」だけなのに、なぜ、観光地になるのかな。昔から、不思議でしょうがないんですよ。自分も含めてなんですけど、なぜ惹かれるんだろう。
編:(笑)そんなことを不思議に思っていたんですか?
安:子供の頃から不思議ですね。だって、「水が溜まっているだけ」で、観光地になっちゃうんですよ? 池は観光地になりづらいけど、湖は観光地になる。ある程度のサイズが必要なのかな? 暑い時に海に入るのは本能的に理解できるんですけど、湖って入りませんよね? ボートに乗るくらいかな……。
ただ、ボートは嫌いじゃないんですよ。やっぱり、「乗り物に乗って進む」ということ自体が好きなんですかね。試乗を中断して、ボートに乗ってみようかな……。
編:それはそれで画になりそうなんで、止めませんけど(笑)
最後はボートに心を惹かれていた安東さんだったが、懐かしのシャランについては「ディーゼルの方が断然、クルマのキャラに合っています。1.4Lのガソリンエンジンだと、特に上り坂でパワー不足を感じていましたが、見事に解消されていました。もっと早く、ディーゼルエンジン搭載モデルが日本に導入されていればとつくづく思いましたよ」と高評価だった。
次回は、こちらもディーゼルエンジン搭載車が日本に導入となった「ゴルフ」の試乗の模様をお届けしたい。