日本自動車輸入組合(JAIA)試乗会で次々に輸入車に乗る安東弘樹さん。今回はアバルト「695C Rivale」、ジープ「ラングラー」、マクラーレン「570S クーペ」の3台に試乗したときの模様をお伝えしたい。

※文と写真はNewsInsight編集部の藤田が担当しました

アバルトで味わったコンパクトカーの楽しさ

「695C Rivale」はアバルトがラグジュアリーボートブランド「Riva」(リーヴァ)と組んで作った台数限定のクルマだ。アバルト「595」と同じくフィアット「500」をベースとする。エンジンは直列4気筒インタークーラー付ターボ。「ATモード付5速シーケンシャル」というトランスミッションを搭載していて、自動変速と手動変速が切り替え可能なところも特徴だ。

安東さんは「アバルトの“屋根開き”の楽しさを体験してみたくて」このクルマを試乗することにしたそうだ。試乗したクルマは「カブリオレ」といって、屋根を開閉できるモデルだった。これまでに2台のフィアット「500」を所有したことがある安東さんは、アバルトがチューニングを施した「695C Rivale」から何を感じたのだろうか。

  • 「695C Rivale」と安東さん

安東さん(以下、安):(クルマに乗り込んですぐ、マホガニーを採用したインストルメントパネルを見て)ウッドが渋いですねー。あ、ルームミラーは自動防眩(後続車のヘッドライトの反射を自動的に抑制してくれる機能)だ! あいかわらず、テレスコは付いてないんですね、チルト(※)だけで。

※編集部注:「テレスコピック」はステアリングの前後位置、「チルト」は上下位置を調整する機能のこと

安:(しばらく走って)やっぱり“抜いた”方がいいな……。

編集部(以下、編):何をですか?

安:いや、シフトアップするとき、アクセルを抜くとスムーズにいくんですよ。

編:そうなんですね……。しかし、高速道路を走っているときの感じが、さっき乗ったジャガー「XF スポーツブレイク」と比べて、だいぶ違いますね。同じ速度でも、こちらの方が迫力があるというか……。

安:そうですね。ジャガーからは余裕を感じましたけど、運転する楽しさという意味では、こちらが上かもしれません。ただ、もう1段、ギアが欲しいかなー。あと、足まわりは結構、ビシビシ突き上げがきますね。嫌いじゃないですけど(笑)

  • 「695C Rivale」のサイズは全長3,660mm、全幅1,625mm、全高1,505mm。価格は422万円だ

編:フィアットの「500」に乗っていたときって、サブカーみたいな感じだったんですか?

安:いえ、乗っていた距離でいうと、メインカーでした。本当はMT(マニュアルトランスミッション)がよかったんですけど、クラッチの左側に空間が少ないというか、足の置き場がなかったので、長く乗ると疲れるかなと思って、シングクラッチの2ペダルモデルをマニュアルモードで変速しながら乗ってました(※)。

※編集部注:シフトレバーでシフトを上げ下げできる機能のついたATがある。安東さんはシフト操作に悦びを感じるタイプのクルママニアだ

安:3台目のクルマが買えれば「695C Rivale」みたいなクルマもいいかもしれないんですけど、ただ、距離を乗ることになると思うので、やっぱりディーゼルエンジンのクルマにしちゃうかな……。そういう意味では、「リーフ」の「e+」(※)も興味ありますね。

※編集部注:駐車場の都合もあって、今は2台のクルマを所有している安東さんだが、もし3台目を買えるなら、日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」のハイパワーバージョン「e+」にも興味があるという。リーフの航続距離はWLTCモードで322キロだが、e+は約40%向上して同458キロになった

安:長距離を乗ることがあるので、内燃機関に比べて航続距離の短いEVは選択肢に入らなかったんですけど、「e+」は航続距離が伸びましたもんね。航続距離を伸ばそうとして高性能なバッテリーを積むと、ハイパワーのモーターと相まってパワーも向上するところはEVの面白いところだと思います。内燃機関だと、パワーを上げると大抵、燃費が落ちますから。ただ、500万円近いですよね? 値段には驚きました(価格は「リーフ e+ G」というグレードで473万円弱)。その価格帯だと、どういう人が買うのかなー。「ちょっとEVに乗ってみよう」という人には高いですよね。

  • アバルト「695C Rivale」を運転しながら電気自動車について思いを馳せる安東さん

安:アバルト、小粋でいいと思います。それに……(信号待ちで隣に止まったクルマを見て)あっ、「アルトターボRS」だ! ああいうクルマに乗っている人というか、ああいう嗜好を持っている人にとって、このクルマ(695C Rivaleのこと)は憧れかもしれませんね。運転されてる方も、こちらを見てましたし。しかし、こういう小さいクルマって、楽しいですよね!

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安:フィアット「500」って、向こう(イタリア)では“足”として使われてますよね。すごいのは、新しいフィアット「500」が発売になったとき、イタリアでは、そのセレモニーが全国ネットでテレビ中継されたそうです。それを聞いて、国民的なクルマなんだなと実感しました。

こういうクルマって、運転を楽しむのには合っていると思います。フィアット「500」でも十分ですけど、もうちょっとスポーティーに走りたいっていう人にとって、「695C Rivale」は非常にいい選択肢でしょうね。

それに、4人乗れますしね! 「500」に乗ってたとき、小柄な女性を後席に乗せたことがあるんですけど、「快適だ」っていってましたから。ただ、前提として、前席に乗る人も小柄である必要がありますけどね。大柄な人が前に乗って、シートを後ろに下げちゃったら、さすがに厳しいので。

ジープ「ラングラー」で考えたクルマの合理性

アバルト「695C Rivale」の試乗を終えた安東さん。次に乗ったのはジープ「ラングラー」だ。実は、この時点で試乗時間が残りわずかになっていたので、あとの2台については少ししか乗れなかったことを、ここでお伝えしておきたい。

  • ジープ「ラングラー」と安東さん

安:(乗り込んで)わ、いいなー! 以前、フォードの「エクスプローラー」に乗っていたので、こういう感じ、懐かしいですね。あ、フットレストがないのか……(※)。右ハンドルだから、仕方ないんでしょうけど。

※編集部注:安東さんが気にしているのは、運転中に左足を置いておける「フットレスト」があるかどうかということ

編:ラングラーに試乗しようと思った理由は何ですか?

安:(走り出しつつ)乗ったことがなかったんですけど、1度、この世界観を体験しておかないとまずいなと思っていて。ヘビーデューティーなクルマって、嫌いじゃないですし。

  • 試乗したのは「UNLIMITED SAHARA LAUNCH EDITION」というグレード。価格は530万円、サイズは全長4,870mm、全幅1,895mm、全高1,845mm、ホイールベース3,010mmだ

編:過酷な使われ方を想定した、合理的な感じのクルマですよね。

安:合理的という概念は好きです。クルマの場合、スポーツカーなのかSUVなのか、車種によって理想とする合理性は違うと思うんですけど、その車種の中では、最も合理的であって欲しいというか。

ラングラーもオフロードを走るクルマとしての合理性を突き詰めていて好印象なんですけど、右ハンドルにしたときフットレストが付いていないといういうのは、少し引っかかりますね。だって、ラングラーのようなクルマは、足を踏ん張って身体を支えなければならないわけじゃないですか。市街地で乗るなら影響はないのかもしれませんけど、本当のオフロードを走るときに、どうなるんだろうっていうのは、ちょっと気になります。ただ、こういうことはインポーターが頑張るといっても、限界がありますよね。

編:合理性を追求しているクルマだけど、右ハンドルにした結果、少し不合理な部分が生まれてしまったという感じですか。

安:踏ん張りづらいんじゃないかなー。「695」なんかもそうなんですけど、左ハンドルだと大きなフットレストがちゃんと付いてますからね。

マクラーレン「570S クーペ」は操作感が面白い

最後に、別の媒体が安東さんの試乗用に用意していたマクラーレン「570S クーペ」にも同乗させてもらったので、その様子をお伝えしておきたい。

  • マクラーレン「570S クーペ」で疾走する安東さん

編:楽しいですか?

安:やっぱり、楽しいですね! ブレーキペダルが重くて、かなり踏まないと効かないんですけど、それも、いかにも操作しているという感じがして、面白いです。

編:本来は高スピードを出すクルマなので、あまり敏感にブレーキが効いても、ガクガクするというか、かえってよくないのかもしれませんね。

安:「明確に踏む」って感じが必要なのかもしれませんね。普通のクルマの感覚で踏むと「あれっ!」って感じになりますから。

スーパーカーではありますけど、普通に乗れるといえば乗れるんで、そこがマクラーレンのすごいところですね。ソリッドな乗り心地ではありますけど。ただ、最低地上高が極端に低いので、普段使いに適しているかどうかは疑問ですね(笑)

  • 「570S クーペ」は3.8リッターV8ツインターボエンジンを搭載するスーパーカーだが、安東さんによれば「普通に乗れる」とのこと。ただ、最低地上高が低く、高額なクルマでもあるので、段差を乗り越える際などは冷や汗をかきそうだ

慌ただしく3台の試乗を終えた安東さん。次に乗るのは、今回の試乗会で「最も乗ってみたかった」というテスラ「モデルX」だ。このクルマにはじっくり乗ってもらったので、その模様は次回、お伝えしたい。