Googleが昨年から招待方式で開始したメールアプリInboxを使ってみました。簡単にいうと、Inboxは半自動分類のメールアプリ(およびWebアプリ)です。

「Inbox」は、Gmailをベースにした新しいメールクライアント。半自動でメールをカテゴリ分けしてくれる

「Inbox」ではメールはInbox、Snoozed、Doneのどれかに置いて管理する。また、リマインダーやごみ箱、スパムなどの専用ラベルや、旅行関連、通知関連、SNS関連などのシステム定義のラベルがある

メール本文の表示。右上のアイコンでメールの保存場所を決めたり、Inbox内でピン留めするなどが可能

画面右下にある+記号をタップすると、メール作成(Compose)やリマインダーなどの利用頻度の高いコマンドや頻繁に連絡する宛先(上の3つ)などが表示される

Inboxは、正式には「Inbox by Gmail」と言うようですが、面倒なので以後「Inbox」とします。さらに面倒なことに「Inbox」では、Gmailと同じようにメールが着信するところをInboxと呼んでいます。混同することはないとは思いますが、以後アプリやサービスの名称はカギ括弧付きで「Inbox」としておきます。また、「Inbox」は現在のところメニューやメッセージが英語表記(日本語のメールは表示可能)のみなので、表示はすべて英語ですが、わかりやすいように一部は翻訳して後にカッコで原文を入れておきます。

最大の特徴は、前述のように半自動でメールを仕分けてくれるところ。あらかじめ用意された「Social」(SNS関連のメール)や「Promos」(セールスプロモーション関連のメール)といったカテゴリに対応するラベルが最初から用意されており、Googleが該当するメールを勝手に振り分けてくれます。またGmailでは、一連のメールのやりとりを「スレッド」として1つにまとめて表示していましたが、同じラベルを持つメールを1つにまとめて表示する「バンドル」という機能があります。これがあると、メッセージ同士にはスレッドのような関連がなくても、同一の人から来たメールにラベルが付くようにしておけば、過去のメールを含めて全部まとめて見ることができます。あるいは、メーリングリストなどにラベルを付け「バンドル」を指定しておけば、まとめて見ることが可能です。

「Inbox」は、基本的にはGmailです。Gmailと同じような機能があります。Gmailでは、「ラベル」でメッセージを分類し、Inboxに残しておくか、アーカイブしてInboxに表示させないかを選択します。ラベルを付けると同時にアーカイブすると、inboxから消えるため、これをフォルダのように扱うことができます。実際imapでGmailにアクセスするとラベルはimapのフォルダのように見えます。

また、Gmailとは見せ方が違っている部分もあります。Gmailでは「ラベル」機能と「フィルタ」機能は個別のものでしたが、「Inbox」では、1つの機能(ラベルの機能の1つ)にまとまっています。このため、フォルダ的な性格が強まっています。ヘルプの説明でも「Trash」ラベルを付けることを「Move to Trash」と表現しています。なので、この記事でも、「Inbox」のラベルは一般にいう「フォルダ」と同じものとして、たとえば、「フォルダへ移動」と同じ意味で「ラベルに移動」と表現することにします。

なお、「Inbox」は、Gmailの上に構築されているため、Gmail側でラベルやフィルタを編集すると「Inbox」側でも同じ状態になります。たとえば、Gmail側でラベルを削除すると「Inbox」側でもラベルが消滅します。

また、「未読」、「既読」という状態はなく、メールをユーザーが放置しておくか、「Done」(処理済み)か、Snoozed(後で読む)の2つのラベルで区分けします。なお、Doneは、Gmailで言えば「アーカイブ」に相当します。また、Done、SnoozedともにInboxには表示されなくなります。

また、削除したメールや迷惑メールも単純なラベルとなり、メッセージは「削除」するのではなく「Trash」へ移動、「Spamを報告」ではなく、「Spam」へ移動という操作を行います。

ラベルはGmailより「フォルダ」的になっている

システム定義のラベルには自動メール追加条件がなく、Google側でラベルへの振り分けを決定する

ユーザー定義のラベルでは、自動メッセージ追加の条件やバンドルや通知の有無が設定できる

バンドルを行う場合、タイミングを3つの中から指定できる

自動仕分けは、Gmailの「優先トレイ」とほぼ同じ機能です。ただし、対象となるカテゴリは増えていて(下表)のようなカテゴリが用意されています。これらも1種のラベルですが、ユーザーが定義したラベルと違うのは、その選別が自動で行われることです。ユーザーに出来るのは、該当のラベルへメールを移動させたり、そこから出したりという操作だけです。

ラベル 対象
Promos 優待や提供などのセールス関連メール
Social SNS関連のメール
Updates オンラインアカウントの通知や警告、確認など
Finance 銀行など金融関係のメール
Purchases 出荷案内や購入通知など買い物関連のメール
Travel 航空券の確認やホテルの予約などの旅行関連のメール
Forums メーリングリストや討論グループからのメール
Low Priority 重要でないメール

これに対して、ユーザーが定義したラベルは、メールアドレスやタイトルなどラベルを付ける条件を指定することができます。

システムが用意するラベルのうち、ちょっと特殊なのが「Low Priority」のラベルです。基本的には、ここには、Gmailで重要とマーキングされなかったメールが表示されます。

もう1つの重要な概念はバンドルです。Gmailでは、一連のメールのやりとりをスレッドとして1つにまとめる機能がありましたが、バンドルは、同一のラベルを持つメールを1つにまとめる機能です。バンドルはInboxの中でのみ意味を持ちます。ラベルの設定でバンドルをオンにしたラベルは、1つにまとまって表示されますが、バンドルをオフに設定したメールはバラバラに表示されます。自動仕分けの対象となるシステム設定のラベルは標準でバンドルが指定されていますが、オフにすることも可能です。

また、バンドルは、これを行うタイミングを指定することができます。「メールの受信時」(As message arrive)とすれば、常にメールはバンドルされて表示されますが、「一日一回朝7時」(Once a day 7AM)とすると、朝7時以前に到着したメールはバンドルされますが、以後に到着したメールは、バンドルされません。同様に「1週間に一回。月曜朝7時」(Once a week Mon,7AM)では、到着したメールは1週間はバンドルされませんが、翌月曜日の朝7時にバンドルされて表示されるようになります。この機能を使うと、当日(あるいはその週)に来たメールは別々、前日(あるいは先週)のメールはまとめて表示という状態を作り出すことができます。

メールに関連して、あとで何か通知をして欲しい場合には、リマインダー(Reminder)を設定します。リマインダーは、Google NowやKeepから設定可能なリマインダーと同じもので、どこで設定してもReminderラベルには、項目が追加されます。リマインドの条件も同じで、時間か場所を指定します。

また、メールに返事を書かねばならないけど、今はできないという場合には「Snoozed」が利用できます。Snoozedは、メールにリマインダーを付けてSnoozedラベルに登録する機能で、メールを表示しているときの右上の時計マークをクリックして設定します。このときに具体的な日時を指定することもできるし、「いつか」といった漠然とした設定にしておくこともできます。Snoozedラベルには、Snoozedに設定したメッセージとリマインダが表示されます。

メールは当日来たものが先頭に時間順(最近のものが最も上)に並び、下は今月、その下は先月などとなります。あまり多くのメールをInbox内で管理することは考えられておらず、かなり以前のメールをスクロールで表示させるのは簡単ではありません。このような場合には検索機能を使うべきでしょう。

また、このことから、読んだメールは右上のチェックマークやラベルのチェックマークを使って「Done」ラベルを設定します。これは、Gmailのアーカイブと同じで、Inboxには表示されなくなります。

逆にこれは重要と思えるメールは、Pinアイコンを使ってInbox内に固定表示させることもできます。これは、Gmailでいえばスターを付けるのと同じです。画面上部のPinアイコンを使うと、ピン留めされたメールのみを見ることができます。

画面右上の時計アイコンで「Snooze」をメールに指定することができる。リマインダと連動して通知日などを設定可能

Snoozedラベルには、リマインダとSnoozed設定したメッセージの両方が表示される

ピン留めするとメッセージやリマインダがIbox内で常に表示されるようになる

アカウントごとの設定が可能で、通知方法やラベル設定が行える

ラベル設定では、ラベル一覧からそれぞれを設定可能

少しクセはありますが、「Inbox」を使うと電子メールが少し使いやすくなります。ただ、すでにGmailでラベルやフィルターを設定して使っていたユーザーは、あまり設定する必要がありませんが、そうでないユーザーはラベルの作成やバンドルの指定などを多少行わないと、Inboxに毎日大量のメールが表示されて従来とあまり変わらない状態になってしまいます。

筆者は、デスクトップではThunderBirdを使って、独自ドメインのメールサーバーをアクセスしていますが、メールのコピーをGmail側にも転送しています。Gmail側は原則読むだけ(BCCが設定できないので送信したメールがGmailにしか残らないため)にしていますが、Inboxだと読むべきメールがわかりやすく、また、DoneとSnoozedでメールの処遇を簡単に決定できます。Snoozedはリマインダと組み合わせになるため、放置したまま忘れることがなく、しかもメールをすぐに処理しなくてもいいのでかなりラクです。出欠を問うようなメールもとりあえずSnoozedにしておいて、スケジュール調整が済んでから返事を出すといったことが可能です。

仕事などでメールの利用頻度が高いのなら、一回試してみる価値はあるでしょう。なお、現在では、Inboxのサイトにアクセスして「Request INVITE」ボタンでGoogleアカウントを登録しておけば比較的短時間で招待メールが来るようです。

本稿は、2015年1月15日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。