「Nexus Player」は、Android TVを搭載したメディア再生専用機です。Android TVは、「スマートテレビ・アダプタ」とでも言うべきもので、テレビに接続して、インターネットのコンテンツを再生するためのアダプタです。今年国内でも販売が開始された「Chromecast」と似ていますが、Android TVは、ゲームなどのアンドロイドのアプリケーションを動かすのに十分な性能を持っている「アンドロイドの1種」である点が違います(ChromecastにはChrome OSが使われています)。なお、Android TVは、Chromecast機能をもっているため、Android TVを接続したテレビは、Chromecastとして、スマートフォンなどから利用することが可能です。

Nexus Playerは、12センチCDとまったく同じサイズの背の低い円筒形

Nexus Playerの「ホーム画面」。メディア再生専用の画面になっている

すでに米国では出荷が始まりましたが、いまのところ日本でのアナウンスや出荷については未定なようです。ただアンドロイドの公式サイト(www.android.com)では、日本語ページが用意してあり、そのページでGoogle Play ミュージックに「日本国内対応未定」といった表記があり、単なる自動翻訳のページではなさそうです。日本では販売予定のない新興国向けのAndroid Oneのページは日本語に翻訳されていないことからも、日本語ページの存在は、意図的なものと思われます。なので、Chromecast同様に、国内でもAndroid TV製品が登場する可能性はありそうです。ソニーがAndroid TVのテレビへの採用をアナウンスしており、必ずしも、Nexus Player自体の発売を意味しているとは限らないのですが。

Nexus Playerは、12センチCD(注01)とほぼ同じ大きさの背の低い円柱のような形をしています。CDを上にのせるとほとんど大きさが一緒です。底面からみると、本体の一部に切り込みがあり、その部分にHDMI(フルサイズ)、マイクロUSB、電源コネクタの3つが配置されています。また、底面側は中央に向かって緩い曲面で構成されていて、普通に置いたとき、周囲に少し空きができます。底面の正面側には、白色LEDがあり、これが電源インジケーターを兼ねています。普通に置くと、視線を低くしないと、直接LEDを見ることはできませんが、間接光で光っているかどうかは確認可能です。おそらく、テレビのそばに置いたときに部屋を暗くしても光が気にならないようにという配慮だと思われます(注02)。

注01: 国内では12センチといいますが、本来の定義では5インチです。
注02: 米国の家屋では、間接光を使った照明が多く、全体的に薄暗い感じになることが多い。

付属のACアダプタは、家電製品などによく見られる丸い円筒形の俗に言うEIAJ(注03)プラグを使うものです。出力は12ボルト、1.5アンペアでNexus Player専用となります。Nexus Playerには電源ボタンはなく、ACアダプタを接続すると電源がオンになります。規格としてはEIAJ RC-5320A(注04)で定義されているコネクタを利用しています。ただ、プラグの直径が4ミリ程度なので、いわゆるEIJA#2(あるいはEIAJ Type2)と呼ばれるコネクタのようです(注05)。

注03: 「日本電子機械工業会」。EIJAはいまは存在せず2000年に「日本電子工業振興協会(JEIDA)」と統合され「日本電子情報技術産業協会(JEITA)」となった。旧EIAJの規格はJEITAが管理している。
注04: EIAJ RC-5320Aは、「外部電源プラグ・ジャック(直流低電圧用・極性統一形)」という規格になる。
注05: EIAJ RC-5320Aでは、利用する電圧でプラグのサイズを変えており、電圧区分2(Type2。またはEIAJ#2ということもある)は、6.3Vまでとなっています。仕様上は、12Vの場合、電圧区分4(Type 4)のプラグを使うことになっています。

Nexus Playerのパッケージに入っているのは、本体(中央)とリモコン(右)とACアダプタ(左)のみ。ACアダプタの出力はいわゆるEIAJプラグでマイクロUSBではない

また、底面の中央には「リセット」ボタンがあります。動作中にこれを押すと、Bluetoothのデバイス検索(表示上はアクセサリ検索)が開始されます。付属のリモコンやオプションのゲームパッドはBluetooth接続です。万一、リモコンなどが交換になったような場合、最初にペアリングしない限り、Nexus Playerは、操作不可能になるため、ボタンでアクセサリのスキャンが開始できるようになっているのだと思われます。また、電源ケーブルを抜き、電源オフにしてから、ボタンを押したまま電源ケーブルを差し込んで電源をオンにすると、ブートローダーモード(注06)となり、ここからフラッシュメモリの初期化(工場出荷状態への復帰)などを行うことが可能になります。

注06: Bootloaderモードは、システムのメンテナンスなどを行うモードで、アンドロイドが起動前に起動し、フラッシュメモリの書き込みやユーザーデータの消去などが可能になる。一般的に、アンドロイドのマスコットであるDroidが寝ていたり、おなかのフタが開いた画像などが表示されることが多い。

底面には、中央にリセットボタンがあり、後部は四角くくりぬかれた状態でコネクタが配置されている。また、底部正面側にちいなさLEDがある

マイクロUSBコネクタは、スマートフォンやタブレットと同じく、OTG(注07)対応になっていて、通常のケーブルを接続するとデバイスとして動作し、ホストケーブルを使うことで、USBデバイスの接続が可能になります。PCと接続すれば、Android SDKに含まれるADB(Android Debug Bridge)により制御が可能になりますが、一般のアンドロイド機のようにMTPやUSBマスストレージデバイスを使ったリムーバブルメディアとしては認識されません。

注07: OTGとは、「On the Go」の略で、ホスト側とデバイス側の動作を切り替えることができる仕様。接続されるコネクタのIDピンの状態で、ホストモードとデバイスモードを切り替える。もともとモバイルデバイス用でIDピンはミニUSBやマイクロUSBにしかない。現在出荷されているアンドロイドスマートフォン、タブレットの大半は、OTG対応のマイクロUSBコネクタを備えている。

またホストケーブルを接続すると、USBキーボードなどを接続することが可能です。Nexus Playerは、USBイーサーネットアダプタに対応しており、イーサーネット経由でのインターネット接続を利用できます。確実に利用できるのは、他のアンドロイド機同様にASIX社のAX88772チップを使ったUSBイーサーネットアダプタです。これは、Wii用などとして販売されていることも多く、比較的手に入りやすいものです。ストリーミングなどでは、一定以上の通信帯域が必要となるため、有線ネットワーク接続を使えるほうが有利です。無線LANでは、同じアクセスポイントを使う他のデバイスと帯域を共有することになるため、ストリーミングなどで影響を受けやすいのですが、イーサーネットでは、スイッチングハブを使うのが普通なので、自宅のネットワーク内の他の機器の影響をうけにくくなります。

付属のリモコンは、上下左右の4方向のキーと中央の「選択」ボタンからなる円形のナビゲーションキーと4つのボタンから構成されています。4つのボタンのうち2つは、アンドロイドの「もどる」キーと「ホーム」キーに相当し、もう1つは、メディアなどの「再生/ポーズ」、そして「音声検索」ボタンです。音声検索ボタンの上にはLEDがあり、音声ボタンを押して、音声入力が可能になると点灯します。リモコンにはマイクが内蔵されていて、Nexus Playerがどんな状態でも音声検索は可能なようですが、入力可能になるまでには数秒程度の時間がかかることがあり、入力タイミングを正しく通知するためにLEDが必要なのだと思われます。なお、本体との接続には、Bluetoothが使われており、操作するときにリモコンをNexus Playerに向ける必要はありません。接続はレギュラーレートではなく、LEによる接続とのことで、バッテリ(単四電池2本)寿命はかなり長そうです。

リモコンは、円形のナビゲーションキー(4方向+中央の選択ボタン)と音声検索(上)、「もどる」、「再生/ポーズ」、「ホーム復帰」の4つのボタンのみ

CPUには、インテルのAtom(Intel Atom Z3560。1.8ギガヘルツ、クワッドコア)が使われていて、GPUは、ImaginationのPowerVR G6430(動作クロック周波数は533MHz)です。このAtomは、Mooresfieldというコードネームで知られるもので、スマートフォン、タブレット向けのAtomで、Windowsタブレットなどに使われるBay Trailと同じ「Silvermont」コアを採用しています。メインメモリは1ギガバイトでZ3560だとするとLPDDR3-1600メモリを利用しているはずです。

内部ストレージは8ギガバイトで、メモリカードスロットなどはありません。少し少なめのような感じはしますが、メディア系は、ほとんどがストリーミング再生で、内部ストレージをキャッシュやバッファとして利用するため、ほとんどアプリ用として利用できます。また、使い方としてはユーザーが手持ちのメディアデータを転送して使うことは想定しておらず、Playミュージックのようにクラウド側に全部バックアップして使うか、Playムービー&TVのようにアプリ内で購入したコンテンツのみが再生可能のどちらかになります。このため、ストレージは8ギガバイトで不足することはほとんどないでしょう。無線LANがIEEE 802.11acに対応となっているのですが、手元にac対応のアクセスポイントがなく、これについては評価できていません。ただし、802.11 nのアクセスポイントには問題なく接続していること、802.11aのアクセスポイントがリストに表示されないことから、802.11 b/g/n/ac対応ではないかと思われます。

■「Nexus Player」の主なスペック
機種名 Nexus Player
メーカー Google
OSバージョン Android TV
CPU Intel Atom Z3560
コア数 4
クロック周波数(GHz) 1.8GHz
GPU Imagination PowerVT Series6
メインメモリ(GB) 1
内部ストレージ(GB) 8
メモリカードスロット ×
最大画面解像度(ドット) 1920×1080@60Hz
コネクタ フルサイズHDMI
無線LAN 802.11b/g/n/ac 2x2MIMO
Bluetooth 4.1
電源 専用ACアダプタ 12V/1.5A
サイズ(mm) 120×120×20
重量(グラム) 235
ワイヤレス充電 ×
GPS ×
NFC ×

とりあえず、入手したばかりなので、ざっとハードウェアの感触をお届けしました。次回は、ソフトウェアや実際に使った印象などをお届けする予定です。

本連載は、2014年12月1日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。