6月に販売が始まったAndroid Wareを搭載したスマートウォッチLG G Watch(LG-W100。以下G Watchと略す)を購入してみました。国内での販売開始と同時に注文し、7月4日に出荷され、翌月曜日となる7月6日に到着しました。SamsungのものよりG Watchのほうが出荷が早かったので、選択したので、特にこちらがいいという評価をしたわけではありません。色は黒(ブラックチタンとなっています)です。

LG G Watch

腕に付けてみた第一印象は、「ちょっとデカイ」という感じです。世の中にはダイバーウォッチなどの大きな時計はありますが、それに匹敵するぐらい大きな感じです。また、本体の形は長方形で、厚みが1センチ近くあり、装着しているときには、ちょっと注意しないとあちこちに引っかかる感じがあります。

Android Wareを使ったスマートウォッチのメインの使い方は、スマートフォンなどの「通知」の表示です。通常は、「ホーム画面」で時計を表示しており、一定時間操作しないとスタンバイ状態になります。アクティブな状態でのタッチや「オーケー・グーグル」の発音で音声認識状態になり、音声コマンドを受け付けます。また、この画面をタッチすると、メニューが表示されて内蔵機能などを実行可能になります。

時計を表示するホーム画面をを起点として音声認識やカード表示、バッテリ残量、ウォッチフェイス切り替えなどの画面を使う

G Watchは、Androidのスマートフォンに表示される通知を表示してくれるため、スマートフォンを見ることなく、メールや電話、メッセンジャーなどの着信、Google Nowの天気やスポーツ結果などの通知結果を表示してくれます。

Google Nowのカードを表示できる。ただし、表示タイミングなどを制御することはできない。基本的にスマートフォン側でカードが出るとG Watch側にもカードが表示される

アンドロイドアプリの通知も大半がそのまま表示されるほか、GMailのようなAndroid Ware対応アプリなら返信などもG Watch側からおこなえる

音声認識によるコマンドの実行は、スマートフォン側のGoogle Nowなどが持つ機能を使って音声認識を行い、コマンドとして認識できるものは、それに応じた処理を行い、コマンドでないと判断されるとインターネット検索が行われます。

音声認識では音声コマンドが解釈され、それに応じた動作をおこなう。また、コマンドと解釈されない場合には、インターネット検索となる

また、このとき、一部のコマンドでは、さらに音声認識を使って追加情報を得たり、コマンドとパラメーターを同時に受け付ける場合があります。前者の例としては「メモを入力」というコマンドがあり、これを音声認識すると、メモ内容を音声で入力することができます。後者の例としては、アラームの設定があります。「8時30分に朝食としてアラームを設定」と発声すると、8時30分にアラームを設定します。なお、標準では、このアラーム設定は、G Watch内の機能として設定され、スマートフォン側の時計アプリとは独立して処理されます。

さらに、Android Wareは、スマートウォッチ側で動作するアプリもサポートしています。これには、スマートウォッチ組み込みのものと、Playストアで配布されているものの2つがあり、G Watchの場合、「ワールドクロック」と「コンパス」、「Fit」(歩数計)の3つが組み込まれていました。

後者には、Googleの「Keep」やEvernoteの「Evernote for Android Wear」などがあります。

内蔵メニューからは、内蔵機能や設定、組み込まれたAndroid Wareアプリなどの起動が可能になっている

Android Ware自体は、アンドロイドをベースにスマートウォッチなどを構成するのに必要な機能を実装したものです。ただし、スマートウォッチなどはその大きさからあまり大きなバッテリを搭載できず、したがってプロセッサもさほど強力でないものになっています。LGのG Watchでは、Qualcomm社のSnapdragon 400を最大1.2GHzで動作させています。液晶は、1.65インチで解像度は280×280ドット。メインメモリは512メガバイトで、内蔵ストレージは4ギガバイトになっています。センサーとしては加速度計、コンパス、ジャイロスコープを装備しているほか、マイク入力があります。ただし、サウンド出力はなく、通知は基本的にはバイブレーターで行われます(オフにすることも可能です)。

スマートフォン側とはBluetooth 4.0 Low Energy(LE)で接続し、Android Ver.4.3(Jelly Bean MR2)以上が動作している必要があります。また、Playストアからサポート用アプリ「Android Ware」をインストールして利用します。

このAndroid Wareアプリは、スマートウォッチとの接続(Bluetoothペアリング)や通知の転送などを行います。また、スマートウォッチ側の設定の一部は、このアプリ内から可能です。ちょっと残念なのは、このアプリというか、スマートフォン側では、スマートウォッチのバッテリ残量を確認できないことです。スマートウォッチ側では、もちろん確認は可能だし、残量が20%になると、カードの通知(ただしウォッチ側のみ)が出ます。

スマートウォッチの「ホーム画面」には時計が表示されています。スタンバイ状態になったときに、設定で画面を消すこともできます。一定時間、何も操作しないと、スタンバイ状態になりますが、腕に装着しているときには、G Watchが水平になるように腕を上げると、スタンバイが解除され、表示が復活します。使った感じでは、位置や向きだけでなく動きも検出しているようなので、すでに腕を水平にしていた場合には、顔に近づけるような感じで少し上に腕を動かすとスタンバイが解除されます。

このとき、カードがあれば、先頭のカードが画面の下1/3のところに表示されます。ホーム画面の時計表示によっては、2/3まで表示することもできます。この時計表示は、「ウォッチフェイス」と呼ばれ、ホーム画面を長押しすることで切り替えることができます。このウォッチフェイスも1種のAndroid Wearアプリケーションになっていて、SDKを使えば開発が可能です。すでにPlayストアには、追加のウォッチフェイスも公開されているようです。

基本的にスマートウォッチに表示されるのは、アンドロイドの通知の情報などを簡略表示した「カード」です。内容としては、アンドロイドの通知シェードなどに表示されるものと同一です。カードは、スマートウォッチの画面に対して縦方向に並んでいます。これをタッチパネルで画面をスクロールさせて見ていくという形になります。並びは最新のものが最も上になります。Android Ware上で動作するアプリも基本はカード表示になります。

カードによっては、追加のカードや機能を実行するボタンなどがあり、これらは、画面の右側にあって、横スクロールで表示させます。ちいさな画面のタッチ操作なので、ボタンなどは画面に1つだけでタッチして実行するか、タッチせず左右にスクロールするかといった操作しかおこなえません。

また、カードは、右方向にフリックすることで消去することができます。アンドロイドの通知を消すのと同じ動作で、アンドロイド側の通知も同時に消えます。Android Wareで実行されるアプリも同じ右方向へのフリックで終了させることが可能です。

実際に使って見た感じ、一般的な通知は、この操作で問題ないのですが、Google Nowが表示する天気予報なども、同じように消えてしまいます。Google Nowの天気カードはしばらくすると再び表示されるのですが、いまのところ、消した直後にすぐ天気カードを再表示する機能はありません。

このあたりの操作性は、いまいちな感じがあります。スマートウォッチは、通知に関してスマートフォンを取り出す手間を省くもので、積極的に何かを見るのなら、スマートフォンを直接操作しろという感じなのでしょうか。なお、いくつかのカードや、音声による検索結果などには「端末で開く」という機能があり、これを使えば、端末側で対応するページやアプリが表示されるようになります。

なお、通知は、Android Ware非対応のものも含め表示されますが、プライオリティの低い通知、たとえば、アプリのアップデートや画面キャプチャなどに関する通知はスマートウォッチ側には表示されません。また、Android Wareアプリで、通知を表示させないアプリを個別に指定することができます。

もう1つの機能である音声入力は、認識率には問題ありませんが、途中でモタモタしていると、動作がキャンセルしたり、ヘルプ表示になってしまいます。うまく使うコツは、何を発声するか事前に決めておき、一気に離すことです。

まず音声認識は、ホーム画面がスリープから回復した後「オーケーグーグル」(OK Google)といえば、スタートしますが、そこで画面が変わるのを待つのではなく、続けて入力を行うほうがエラーになりにくい感じです。たとえば、「オーケーグーグル明日の天気は」という感じです。

また、いくつかの音声コマンドでは、少し複雑な文章を解釈できます。たとえば、「山田さんにメールを送信。明日行きます」みたいな文章も解釈してくれます。このときも「メールを送信」と本文内容「明日行きます」の間で何を言うか考えて止まってしまうと、ヘルプメッセージに切り替わってしまいます。なので、あまり間を開けずに一気に発声する必要があるのですが、そのためには事前に何を話すかを頭の中で決めておく必要があります。ここはちょっと煩わしさを感じます。なお、メールの送信は「××という件名で山田さんにメールを送信」といったパターンも可能です。メールの送信のほか、「SMS」(ショートメッセージも可)や「電話」(山田さんに電話)も対応できます。ただ、音声コマンドとしてどのようなものがあるのかに関してのちゃんとしたドキュメントがなく、何が利用できて、どういう文章が認識可能なのかがはっきりしません。唯一確実なのは、音声入力画面を下にスクロールさせて表示させたときのメニュー項目とそれをタップして表示されるヘルプメッセージです。

メールやショートメッセージ(SMS)の場合には、「メモを入力」のように不足した情報を尋ねてくることはありません。宛先や本文(または件名)をまとめたセンテンスとして発声しなければなりません。ただし、候補となる宛先が連絡先に複数あるような場合には、宛先を誰にするかを選択する画面が表示されます。

そのほか、時計関係(アラーム、ストップウオッチ、タイマー、設定したアラーム表示)、歩数計(Fit機能関連)、カレンダー関連、メモ(Keep)の音声コマンドが利用できます。

■表 おもな音声コマンド
機能 アプリ 発声例 認識後の反応
メモの入力 Keep/Evernoteなど メモを入力 コマンド認識後音声入力で内容入力
通知を設定 Keep/Google Now 7時にジョギングに行くと通知を設定
3時間後に洗濯物を取り込むことをリマインド
家に着いたらゴミ出しをするとリマインドして
認識後ただちに設定
メール GMail 太郎にメール送信。金曜日に会える?
もうすぐ行くという件名で茉莉にメールを送って
宛先の確認や選択
SMS Hangout他 今どこにいると達也にショートメール送って 宛先の確認や選択
ナビゲーション Maps ジブリ博物館までどうやって行くの
レインボーブリッジにつれてって
近代美術館までナビして
目的地が確定するなら本体でナビ開始。しないときはインターネット検索で目的地検索
歩数計 Fit 歩数計を表示 歩数計カードが表示
予定の表示 カレンダー 予定リスト 月曜日/明日 予定のリストが表示
タイマー 内蔵機能 タイマー設定 待ち時間をメニューから選択して設定
ストップウォッチ 内蔵機能 ストップウオッチ ストップウォッチアプリが起動(タッチ操作)
アラーム設定 内蔵機能 アラーム設定 画面でアラーム時刻設定
設定 内蔵機能 設定 設定メニューが表示される
電話 電話 山田さんに電話 通話先の選択確認
※コマンドとして認識されない場合にはインターネット検索になる

また、G Watch自体の設定は、音声入力画面をタップして表示させるメニューや「設定」の音声コマンドで起動できます。設定では、画面の明るさ設定やリセット、再起動といった機能に加え、「端末情報」(アンドロイドの設定にあるものとほとんど同じ)やAndroid Wareアプリの起動メニューなどがあります。

組み込み機能の1つである「設定」からは、画面の明るさ、ウォッチフェイス変更などの機能や端末情報などの機能が起動できる

さて、2~3日ほどつかってみた感じとしては、ユーザーインターフェースがもう少しこなれた感じになってほしいことと、対応アプリなどがまだまだ少ない感じがあります。

音楽をスマートフォン側で再生させると、G Watch側には、曲名の表示などが行われますが、G Watch側の音声入力でアーティスト名や曲名などを入れても、インターネット検索が行われるだけで、音楽の再生へたどり着くことはできません。スマートフォンでも現在のGoogle Nowは、アーティスト名を入れたのち、手動で「端末内の検索」を行わせ曲を見つけないと再生メニューは出てきません。このあたり、Android Wareや、その後にあるGoogle Nowは「まだまだ」、「もう少しがんばりましょう」という感じがします。音声認識から検索までは、かなりの機能があることを感じるだけに残念なところの1つです。日本人の普通の発音で「アラン・パーソンズ・プロジェクト」と入力すると「Allan Persons Project」と認識され、正しいインターネット検索結果が出ます。また「アイ・イン・ザ・スカイ」という日本語の発音で「i in the sky」と認識されるものの、検索結果の先頭には「Eye in the sky」というAllan Persons Projectの曲が結果の先頭に来ます。しかし、同じ曲をGoogle Playに保存していても、すぐに音楽再生できないところにGoogle NowやAndroid Wareの問題があります。

スマートフォンは、パーソナルなデバイスなので、デスクトップマシンでの検索に比べると、個人的な機能のほうが優先されるべきで、該当する曲を持っているような場合、インターネット検索を行うのは間違った方向です。スマートフォンなどのパーソナルなデバイスで使うなら、保存してある音楽や自分の予定、連絡先などを優先して検索すべきです。

そういう意味では、まだ「未知数」的な部分があり、簡単に人にオススメできる状態ではないようです。もちろん、こういうのが好きな人には、いいのでしょうが、一般の人に普及するには、もう少しという感じもします。とはいえブームとは、そういうレベルのときに来るものです。他社もスマートウォッチを開発中というウワサもあるので、今年後半から来年にかけては「スマートウォッチ」ブームが来るのかもしれません。

本稿は、2014年7月11日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。