前回解説したように、Android Pの基本コンセプトは、
- Inteligence
- Simplicity
- Digital wellbeing
の3つです。このうちSimplicityに関しては、基本ナビゲーションの変更やホーム画面の変更があります(写真01)。
基本ナビゲーションが変わる
Android Pのコンセプトである「Simplicity」(単純)における、もっとも大きな変更点は、ホーム画面のレイアウトや基本ナビゲーションが変更になる点です。Android Pでは、ナビゲーションバーはホームボタンのみ(写真02)となり、従来の「Overview」(「最近使ったアプリ」、「最近」などと呼ばれたこともあった)は、ボタンが廃止され、起動したアプリの一覧は、ホームボタンの上へのフリックや左右へのドラッグで表示されるようになりました。
アプリのサムネイル表示は、横に並んで表示されます(写真03)。このサムネイルでは、画面全体がそのまま表示され、ここでテキスト選択なども可能になるようです(従来は上下方向だったので下の方は前のアプリに隠されていた)。「戻る」ボタンは、ホーム画面では表示されず、何か機能を起動して「戻る」が有効になったときのみ表示されるようになります。
また、ホーム画面の下部、ナビゲーションバーの上には、Googleの検索欄があり、その上に「お気に入りバー」(アイコンを登録できる場所)があります。 最終的には「アプリ画面」ボタンは廃止され、ホームボタンを2回上にフリックすることで表示されるようになります。まずは、一回フリックして起動したアプリから選択、なければもう一回フリックして全アプリのリストから選択、というわけです。
たしかに、従来のナビゲーション構造では、一回起動したアプリを「Overview」から選ぶこともできるし、再度、アプリ画面から選ぶこともできました。また、アプリは、ホーム画面に配置したショートカットアイコンからも起動でき、複数の起動方法がありました。従来からのやり方と互換性を取ったのでしょうが、複数の方法があるため「Overview」の意味がわかりにくい構造でもありました。
今回の改良では、過去に起動したアプリのリストを第一優先として、アプリ画面の優先度を下げています。ホーム画面のアイコンは使えるので、利用頻度の高いアプリをお気に入りバーに登録すればいつでも1アクションで開くことは可能です。また、Google Playストアの標準設定では、アプリをインストールするとホーム画面にアイコンを登録します。この点でいえば、アプリ画面の必要性はそれほど大きくありません。また、前回解説したApp Actionは、Google Assistantなどからも利用可能で、アンドロイドは、適切なアプリを推奨するようになります。このため、リストからアプリを選ぶという操作自体、今後は比重が小さくなると考えられます。
Android Pでは、切り欠きのあのディスプレイをサポートしており、画面上部にあるステータスバーのアイコン配置などが多少変化しています。すでにβ版でも、時計表示は左端にあり、左右の端からアイコンを埋めていくような感じになっています(写真04)。また、ステータスバーの下にある領域は「At A Glance」と呼ばれる領域になっていて、従来のように検索ウィジェットではありません。ここには、日付と天気が表示されますが、予定(写真05)やフライト情報、交通情報などを表示させることが可能です(写真06)。
ステータスバーを引き下ろして表示させる通知シェードやさらに引き下ろして表示するクイック設定にも変更があります。クイック設定には、デバッグ関係の機能アイコンを「開発者向けオプション」から追加できるようになっていて、ここから簡単に機能のオンオフが可能になりました。
また、従来、画面上部に横方向のスライダーとして表示されていたボリュームは、画面の端に縦方向のスライダーとして表示されるようになっています(写真07)。おそらくは、ボリュームのボタン配置と合わせるのだと思われます。Oreoでも電源ボタンの長押しメニューは、電源ボタンの横に縦に表示されるようになりました。ボリュームに関してもこれと合わせたのだと思われます。
Android Pで変わるのは、もう1つ画面の回転です。OreoことAndroid 8.0までは、画面の回転は、自動もしくは固定のどちらかしか選ぶことができませんでした。しかし、場合によっては、画面に回転して欲しくないこともあれば、ユーザーが意図的に横向きにしようと本体を回転させることもあります。Android Pでは、本体が回転したとき、ナビゲーションバーに「回転」アイコン(写真08)が表示され、これをタップすると、画面が回転するようになり、手動で、縦向き、横向きを選択できるようになりました。ただし、自動回転の機能は、残っており、これを設定することで、回転アイコンを使わずに本体の向きに合わせて画面を回転させることが可能です。
Android Pでは、個人が利用するスマートフォンではなく、業務などで利用する端末としての機能が強化されます。その1つが「ワークプロファイル」です(写真09)。これは、EMM(Enterprise Moblie Management)機能と連携したときに有効になるもので、アンドロイドデバイスで「業務用の機能」と個人用の機能を区別して管理できるようになります。業務用の機能に関しては、組織内の管理者が利用可能なアプリや業務用のデータへのアクセスなどを制御できますが、ワークプロファイルで管理されない部分に関しては、利用者が自由に利用できます。組織が所有するアンドロイドデバイスを完全に管理下に置くこともできれば、ユーザーが持ち込むデバイスを部分的に管理することも可能です。
毎回、改良される通知機能に関しては、SMS(RCS)関係の強化、通知チャンネルグループのブロック、マナーモードの強化などがあります。アンドロイドは、以前からテキスト以外のメディア情報を扱えるRCS(Rich Communication Services)に対応していました。RCSは、SMSと同じく、通信相手を電話番号で指定するマルチメディアコミュニケーションサービスで、最近日本で導入された+メッセージもRCSをベースにしたものです。今回の改良では、SMS/RCSの通知で添付画像を表示したり、通知内で応答することなどが可能になります(写真10)。また、RCSの機能の1つであるグループチャットと他のチャットを区別して通知できるようになります。
次回は、Android Pのその他の強化点をみていくことにします。