Nexus 5Xを使い始めてそろそろ一カ月。日常的に使っている間にいろいろなことがわかってきました。今回は、こうした気がついたことを中心にお話しすることにしましょう。全般的に評価としては、悪くはないんですが、完全に満足というわけでもありません。少し気になる部分があります。
従来機種との大きな違いを実感した部分に、USBコネクタが「Type-C」になっていることがあります。日常的に使う分には、付属の充電器とケーブルでなんの問題もありません。しかし、1週間ほど米国に出張したとき、従来のUSBコネクタではないことを強く感じました。付属の充電器は、充電コネクタもUSB Type-Cになっていて、付属のケーブルも両端がType-Cです。なので、付属のケーブルでは、いわゆる普通のUSB Type-Aのコネクタに接続できません。このためには、片側がType-A(オス)、一方がType-C(オス)になったケーブルが必要です。出発前に購入しておいたのですが、結局米国へ持っていくのを忘れました。
Type-Cのケーブルは、国内でもどこでも売ってるという状態ではありません。もちろん、通販を使えば全国どこでも入手は可能ですが、主張や旅行中は、通販というわけにもいきません。米国でも、店舗の状態はおんなじで、シリコンバレーと呼ばれるサンノゼ近辺の店舗であっても、やはり両側がオスになっているType-C/Type-Aのケーブルは入手できませんでした。すでにType-Cを採用しているハードウェアとしては、Macbookがありますが、その純正オプションには、両側がオスになっているType-C/Type-Aケーブルはなく、サードパーティ製品に頼らねばなりません。米国でApple Storeにも行ってみましたが、欲しいケーブルを見つけることはできませんでした。
充電だけならば、付属の充電器とケーブルでいいのですが、たとえば、PCに接続してファイルを転送したい、ナビに使うので車のシガーライターから充電したい、あるいはモバイルバッテリーを使いたいといった、モバイル的な利用には、Type-C/Type-Aのケーブルが必須なのです。もし5Xを持っているなら、とりあえずType-C/Type-Aのケーブルを一本用意することをお勧めします。いまのところType-Cは独自コネクタに近く、当面は注意する必要があります。筆者は帰国後、もう一本購入して、1本はカバンにいれっぱなしにすることにしました。
そんなType-Cコネクタですが、メリットがまったくないわけではありません。Nexus 5Xのウリ文句の1つでもある急速充電機能、「10分の充電で4時間使用可能」というのは、USB Type-Cを採用することで可能になっています。というのは、両端がType-Cになるケーブルは、大電流を流すことを前提に作られていて、専用の充電器を使えば、従来のUSB 3.0の仕様を越えた大電流が利用可能です。また、USB Power Delivery(USB PD)に対応しているなら電圧を高くすることも可能で、より多くの電力(電力は電圧×電流)を供給できるのです。
そういうわけで、入手したUSB Type-A/Type-CケーブルとUSB電源を組み合わせ、専用充電器と専用ケーブルと充電時間などについて比較してみることにしました。結論からいうと、専用充電器だと1時間で80%の充電が可能で、1時間40分から2時間程度で充電が完了し、USB Type-A/Type-Cケーブルと通常のUSB電源の組み合わせでは、電源の出力に応じて充電時間が変わるということです。通常のUSB電源とType-A/Type-Cケーブルの組み合わせでも充電時間は遅くなるものの問題なく充電できるということです。
専用充電器と専用ケーブルの場合
Nexus 5X付属の充電器は、出力が5V、3Aとなっていて、出力側は、USB Type-Cコネクタになっています。付属のUSBケーブルは、両端がUSB Type-Cです。ケーブルは割と太く、ちょっと取扱に不便です。これはUSB Type-Cでは、規格上最大20ボルト、100ワット(20ボルトのとき5アンペア)の電力を供給する可能性があるのと、信号線の数が従来のUSB 1.1~3.0よりも多いためです。
この専用充電器とケーブルを使って、Nexus 5Xの充電を行ったときのグラフが(写真01)です。測定には、Battery Logというアプリを利用しています。これは、バッテリ残量が%レベルで変化した時点の時間や電圧、バッテリ温度などを測定するツールです。
写真01: グラフ「付属USB Type-Cケーブル+付属電源」。専用充電器で充電した場合の充電量(青)、温度(赤)、電圧(緑。ただし10倍の値)をグラフにしたもの。温度と電圧の縦軸は右側になる。充電開始直後の温度変動が大きく、なんらかの制御が行われていることがうかがえる。充電は2時間で完了、10分間の充電で約8%を充電 |
充電は1時間43分。電流を測定してみたところ2.4A程度でした。グラフを見るとわかるように、最初は充電時間と充電量のグラフは直線になっていて、1時間で80%まで充電されています。さらに90%に近くなると傾きが小さくなってきて、残り40分でフル充電になります。
なお、専用充電器を使った場合、充電開始直後の温度上昇が大きく、グラフが上下しています。これは、温度が一定値を越えないようになんらかの制御が働いたことを意味しています。おそらく急速充電時には、温度が高くなったら、充電量を抑えるなどして温度が上がりすぎないように制御しているのだと考えられます。そこでケースを付けて充電してみました。すると、充電時間は2時間近くと、充電時間が長くなりました(写真02)。厳密に周囲温度などを管理したわけではないので、他の原因の可能性もありますが、急速充電中、放熱が十分にできないと、充電時間が長くなってしまう可能性があります。
写真02: グラフ「付属電源2つの充電パターン」。専用充電器と付属ケーブルを使い、Nexus 5Xのケースの有無で充電時間を測定してみた。このように充電時間に差ができた。これは、ケースにより放熱効率が落ち、急速充電の制御により、電力供給が押さえられたと考えられる |
このため、充電時には、置き場所などに注意したほうがいいかもしれません。できるだけ放熱ができるように、あまり温度の高い場所に置かず、スタンドに立てておくなどして周囲の空気が流れやすいようにしたほうがいいかもしれません。また、急いで充電したい場合にはケースは外したほうがいいかもしれません。
汎用充電器とUSB Type-C/Type-Aケーブルの場合
では、一般的なUSB Type-Aの出力を持つUSB電源と市販のUSB Type-C/Type-Aケーブルの組み合わせではどうなるのでしょうか。さまざまな通販サイトなどをみたところ、USB Type-C/Type-Aケーブルには、USB 2.0対応のものと、USB 3.0対応のものの2種あるようです。価格としてはUSB 2.0対応のものが安価で、短いものなら1,000円以下で入手可能なようです。USB 3.0対応のケーブルは、1,000円以上のものがほとんどです。
この2つの違いは、USB Type-AコネクタがUSB 2.0かUSB 3.0かの違いです。写真などを見る限り、必ずしもコネクタがUSB 3.0だからといってUSB 3.0ケーブルになっているとは限らないようです。USB 3.0ケーブルも高速化で信号線が増えたため、一般にUSB 2.0に比べると太めのケーブルが使われます。ただし、世の中のすべてのケーブルが規格に準拠しているわけではないので、なかには、USB 2.0と同程度の細いUSBケーブルを使うものもないわけではありません。しかし、一般のUSB電源の出力はUSB 2.0のType-Aコネクタなので、ケーブルがUSB 2.0なのか、3.0なのかは出力には関係がありません。
もう1つ、汎用のUSB充電器には、出力電力がさまざまなものがあります。Nexus 5X付属の充電器のように最大3アンペアとなっているものもあれば、2アンペアや1アンペアといったものがあります。これは、充電時間に影響を与えます。
まずは、USB 3.0のType-C/Type-Aコネクタのケーブルを使い、定格が2アンペアと1アンペアのUSB電源で充電してみました。結果としては2アンペアでは2時間30分(写真03)、1アンペアでは3時間30分(写真04)という充電時間になりました。このとき、2アンペア電源では、1.36~1.27アンペア程度の電流が流れ、1アンペア電源では、0.94アンペアの電流が流れていました。
写真03: グラフ「USB Type-A~Cケーブル+2.1A電源」。出力2アンペアのUSB充電器を使った場合。充電時間は3時間。急速充電にならないせいか、温度変化はゆっくりとしている。なお、ケースは外した状態である |
基本的に、汎用のUSB電源と市販のUSB Type-C/Type-Aケーブルでも充電は可能で、充電時間は、USB電源の出力電流に依存することがわかりました。なので、とりあえずUSB Type-C/Type-Aケーブルさえ持ち歩けば、汎用のUSB電源で充電が可能です。
このため、充電用ならば、USB 2.0対応の安価なケーブルでもいいでしょう。PCと接続してデータ転送を行うといった場合、USB 2.0とUSB 3.0では速度差が出ますので、データ転送のことを考えるとUSB 3.0ケーブルを選択したほうがいいかもしれません。ですが、スマートフォンとPCで大量のデータ転送を行うことはそれほどないし、Nexus 5Xは、無線LANが802.11ac(2x2 MIMO)に対応していて、対応のアクセスポイントがあれば、高速な通信が可能なので、必ずしもUSB 3.0ケーブルが必須というわけでもないでしょう。なので、充電を主体とした持ち歩き用などには、安価なUSB 2.0対応のケーブルで十分といえます。
10分間の充電で最長4時間利用を試す
Nexus 5Xの特長の1つに10分間の充電で最大4時間動作という点があります。どのような条件で動作するのかがはっきりしていませんが、Nexus 5Xの公式サイトには、「使用時と待受時を含む平均的なユーザーの使用状況に基づいています」とあり、また、スペックとして、以下のような動作時間が掲載されています。
- 待受時間: 最長 420 時間
- 通話時間: 最長 20 時間
- インターネット使用時(Wi-Fi): 最長 9 時間
- インターネット使用時(LTE): 最長 8 時間
- 動画再生: 最長 10 時間
- 音楽再生時: 最長 75 時間
実際に専用充電器での充電状態を見ると0%から開始したとき、10分間の充電による充電量は、約8~12%とばらつきがありました。これは、前述のように放熱が影響している可能性があります。ここでは話を簡単にするために、10分間で10%は充電できるとしておきます。
10%程度の充電量で最長4時間動作するなら100%(フル充電)では最長40時間動作することになります。単純な待ち受けだけでなく、ちょっとしたインターネット利用や音楽、動画再生ぐらいは行って最長4時間ということなのでしょう。もしかしたらバッテリセーバー機能がオンになっている場合の動作時間かもしれません。
俗に言う「話半分」を実践すると、Nexus 5Xのバッテリが残り10%になったら、2時間程度は利用でき、待ち受けのみで4時間以上動作するという可能性があると考えればいいでしょう。着信などをしてしまうと、あっという間にバッテリがなくなってしまいます。前記のスペックから通話は待ち受けよりも21倍の電力を消費することになるからです。
イメージ的には、外出前に充電し忘れていたことに気がついたら、とりあえず、可能な限り充電して外出すれば、10分間の充電で2時間程度の移動の間は最低現の利用が可能と思われます。なので、通勤では、会社についたらすぐ充電すれば「ギリギリセーフ」という感じでしょうか。もちろん、ケーブルさえ用意しておけば、モバイルバッテリが利用できます。そういうわけで、Nexus 5Xを持ち歩くことを考えると、1本は、USB Type-C/Type-A変換ケーブルを持っておくべきでしょう。
本稿は、2015年11月30日にAndorid情報誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。 |
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