スマートウォッチのAndroid Wearがアップデートされました。Android Wear Ver.1.0.5から1.1.1となり、ベースがAndroid 5.1.1になりました。前のバージョンは5.0.1で、スマートフォン用などに5.1が作られ、それに合わせたのだと思われます。スマートフォン用の5.0と5.1には大きな違いはありませんが、Android Wearの1.0.5と1.1.1は大きく違っています。
一番大きな点は、画面の遷移構成が変わったことです。1.0.5では、通常状態でWatch Face(時計表示)が表示され、タップや「Ok Google」の発声で音声認識などを含むメインメニューに移行していたのに対して、1.1.1では、Watch Faceで右からのスライド操作やタップでメインメニューが表示されます。メインメニューは横に3ページ並ぶ構成になっていて、1枚目がWearアプリや設定などの起動メニュー、2ページ目が連絡先(スターを付けたものと頻繁に連絡する相手)、3ページ目が音声認識メニュー(1.0.5のメインメニューと同じもの)になっています。これにより、Wearアプリの起動がより簡単になりました。また、Wearアプリとして「地図」が用意され、現在位置の地図を簡単に表示できるようになっています。
また、改良点として、Wearアプリを表示している最中にスタンバイ状態になると、そのままWearアプリ画面がモノクロ表示になります。以前は、ここで勝手にWatch Faceに戻ってしまい、起動したWatch アプリは再度起動せねばなりませんでした。しかし、Wearアプリの起動は、音声コマンドを使うか、メニューの最後のほうにあった「起動」を使わねばならず、わりと面倒でした。このため、Wearアプリの使い勝手はあまりよくありませんでした。
地図アプリは、地図の表示(スクロールと拡大縮小)、現在値の表示、現在値の近辺のスポット(店舗などの自動検索)が可能で、いわゆるマップアプリの簡易版とでもいうべきものです。ちょっと地図を見たいなんて場合に、便利で、わざわざスマートフォンを出さなくてもスマートウォッチだけで地図の表示が可能です。
また、通知などが表示されているとき、手首をひねるように動かすことで、スクロールが可能になりました。たしかに、外出先で、片手にカバンを持っていて、スマートウォッチを見ているような場合、タッチ操作も難しい場合があります。そういうときでも手首を動かすだけでカードをスクロールさせることができます。
また、通知を左方向へスライドさせていくと、最後に「アプリをブロック」という項目が表示されるようになりました。これにより、不要な通知を出すアプリを簡単にブロックすることができます。以前のバージョンでも特定のアプリをブロックすることはできたのですが、そのためには、スマートフォン側のAndroid Wearアプリからアプリを登録する必要がありました。ですが、場合によっては、どのアプリの通知なのかが不明なことがありました。原則、Android Wearに表示される通知は、背景にアプリを区別するような画像を表示するようになっているのですが、アプリのアイコンなどと雰囲気が違いすぎて、どのアプリなのかがわからないことがあります。また、通知内容もアプリ間で重複するような場合もあり、特定のアプリの通知をブロックするのが面倒でした。しかし、今回のアップデートにより、アプリ名などを調べることなく、直接通知内容を見てブロックを指定できるようになったのです。これは、地味ながら、わりと便利な機能です。
アンドロイドでは、さまざまなアプリが通知を行います。ちょっと放っておくと、スマートフォンなどの通知領域がアイコンで一杯になってしまいます。通知のしすぎという感じもしないでもないですが、場合によっては、重要な通知もあります。ただし、重要な通知であっても、時計にまで通知する必要があるかどうかは別問題です。たとえば、アカウントの設定が必要なアプリだと、インストール後にバックグラウンドで起動しようとしてユーザーにアカウント設定を要求する場合があります。とにかくアカウントを設定しないとアプリは動作できないのですが、重要といえば重要です。これは、通知で行われますが、時計にまで表示するようなメッセージとは思えません。それに、利用者としては、必要があってわざわざアカウント設定を今していないのかもしれません。アプリによっては、通常の利用では通知を出さないものも少なくありませんが、そんなアプリでも、アカウント設定のような重要な問題では、通知を出すことがあります。
もう1つの改良点は、手書きによる絵文字の入力が可能になった点です。たとえば、ハングアウトのメッセージ通知に対して応答する場合、音声認識によるメッセージを送ることもできますが、画面に手書きした絵を画像認識して絵文字を検索し、これを応答として送ることができます。
手書きによる絵文字の認識は、結構精度というか、それらしいものを候補にしてくれるため、それほど上手に描く必要はありません。線が離れていたり、端がくっついていなくとも、なんとなく似たものを候補としてあげてくれます。簡単そうに見えますが、高度な技術といった感じです。ただ、こうした絵文字で応答できるのは親しい人に限られ、用途としてはチャット、メッセンジャーアプリ用でしょう。
ハングアウトで「返信」を選択すると音声入力とならんで「絵文字を描く」がメニューに表示される |
絵文字入力欄。ここに指で絵を描くと認識されて絵文字候補が出る。左下のグレーのアイコンをタップするとリストから絵文字を選択できる |
「設定」は、今回、アプリの1つという位置付けになり、ラウンチャーから起動できます。フォントサイズの変更、前述の手首によるスクロールのオンオフ、トリプルタップによる拡大操作の有無、画面ロック(時計を外すと自動ロックがかかり、パターン入力で解除する)のオンオフなどが追加されています。筆者的にありがたいのは、フォントサイズが少し大きくできることや拡大機能です。
また、今回のアップデートで、スマートウォッチが無線LANを利用できるようになりました。初期に発売された一部のスマートウォッチは、無線LANを搭載していましたが、これまでそれを使うことはできませんでした。ただ、筆者の使っているLG G Watchは、無線LANを内蔵していないので、この機能は試していません。Bluetooth 4.0では通信可能な距離は見通し範囲で10メートルぐらいなので、間に壁が入ると近距離でも通信できないことがあります。いまのところBluetoohでは、中継などを行うことができないため、通信可能な範囲を拡大することができません。このため、自宅の中でも常にスマートフォンを一緒に持ち歩かねばなりません。しかし、無線LANがあれば、スマートフォンは別の部屋に置いたままでもよく、使い勝手は上がりそうです。
Android Wearの今回のアップデートは、Lollipopベースになって、最初のメジャーアップデートといえます。腕のジェスチャーを使うなどウェアラブル固有のユーザーインターフェーススタイルが徐々に確立されつつあるという感じがします。まだ、タップが必要だっり、腕を水平にしてからスタンバイから復帰するまでの時間がちょっと長いなど、完成はまだまだ先という感じです。
本稿は、2015年6月25日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。 |
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