前回のグランド・キャニオン・ウエストのスカイウォークの話、いかがでしたか? 今回から、グランド・サークルにある国立公園や見所を次々に紹介していきます。グランド・サークルとは、アリゾナ州、ユタ州、コロラド州、ニューメキシコ州の国立公園が集中している場所のことを指します。この中には、8個の国立公園と16個のナショナルモニュメント、十数個の州立公園が含まれており、私たち国立公園大好き人間にとってはたまらないエリアなのです。
モニュメント・バレーとナバホ・ネイション
グランド・サークルに含まれるモニュメント・バレーは、アリゾナ州とユタ州にまたがるナバホ・ネイションにある。ナバホ・ネイションはNation(国家)というように、アメリカ合衆国公認の"国"で、それに準ずるナバホ族の法律、国旗、国章、学校、大学、警察が存在する。
モニュメント・バレー自体は映画によく出てくるアメリカの風景なので、見たことがある人が多いはず。日本人に一番親しまれている映画だと、「フォレスト・ガンプ」が有名だろう。フォレストが、マラソンをやめるシーンに使われている。
モニュメント・バレーの正式名称は、モニュメント・バレー・ナバホ・トライバル・パーク。日本の地図などを見ると、モニュメント・バレーのエリアだけが、ナバホ・ネイションと示されているものが多い。しかし、アメリカの地図を見ると、その一帯(周辺100km以上)すべてがナバホ・ネイションだということが分かる。実際に、グランド・キャニオン国立公園からモニュメント・バレーまで運転をした時、グランド・キャニオンを出て1時間ぐらいでナバホ・ネイションに入ったのを感じた。感じたというのは、やはりアメリカにいながらアメリカじゃない、そんな雰囲気になったからだ。スーパーも私が知っているアメリカの大手とは違うチェーンになったし、アメリカ国内では禁止されているヒッチハイカーも"独立国"では多くなった。このエリアに入り、人々の生活の様子を見ると 、ナバホ族の歴史とはどういったものなのかに興味を抱く。
グランド・キャニオンからモニュメント・バレーの最寄りの街、カイエンタには、約2時間半で到着する。とても小さな町でモーテルやホテルは数軒しかないが、ゲート近くにもロッジが1軒しかないので、ほとんどの旅行者がこの町に泊まる。しかし、最寄りといってもここからモニュメント・バレーまでは、車で約30分。なんと約35kmもあり、結構遠くて驚いた。ゲートから1kmのところにあるグールディングス・ロッジは、モニュメント・バレー観光 & 映画産業の立役者であるグールディング夫妻が始めたもので、ホテルからモニュメント・バレーの絶景を眺めることができるので有名。1年中、観光客でいっぱいのホテルで、なかなか予約が取れないようだ。
ゲートオープンは3月~4月が7時~19時、5月~9月が6時~20時、10月~2月が7時~17時が基本。天候に影響するようで、私たちが行った3月は、1日目は砂嵐がひどく18時過ぎに閉まってしまったが、次の日は天気が良かったので、19時になっても閉まらなかった。入場料は1人5ドル。
モニュメント・バレーの中を見学。あなたは車? それともツアー?
ゲートでお金を払い、中に入るとビジターセンターがある。ビジターセンターでもモニュメント・バレーを真正面に見ることができるが、ここだけではやはりモニュメント・バレーに来たとは言えない。せっかくなので、自分の車かツアーに参加して中まで入ってみよう。
自分の車で入る場合は、全長約27kmのシーニックドライブと呼ばれるルートを運転することになる。全て未舗装道路で最初の約1kmは、かなりの急坂。下りるのは大丈夫だが、帰りが普通車ではちょっと心配……。私たちも上のパーキングからしばらく様子を見て、私たちの車より古い普通車でも上れることを確認してから出発した。前回のグランド・キャニオン・ウエストと同様、1時間近く未舗装道路を走らなければいけないので、ツアーに参加した方が無難。また自分達では入れるエリアは限られているが、ツアーだとガイドさん付きで奥の方まで入って行ける。
ツアーは事前申し込み不要で、ゲート近くのパーキングの中にある「Tour」と書かれた建物で申し込めばよい。半日ツアーで40ドル程度。1日ツアーで70ドル程度。トラックの荷台に乗り、モニュメント・バレーの中を見学する。ビュート(Butte)と呼ばれるモニュメント・バレー独特の岩には、それぞれ名前が付けられていて、岩が綺麗に見えるビューポイントで車を止め、ナバホ族のガイドが岩の謂れやナバホ族の歴史について話をしてくれる。自分の運転では行けない部分も多いので、初めての人にはツアーの方がオススメだ。特にサンズアイと呼ばれる、ドーム型の天井に目のような形をした穴が開いている場所は面白い。寝そべらないとうまく見えないし、写真も撮れないのだ。数年前の8月に行った時は、皆で寝そべり、ガイドさんがナバホの歌を歌ってくれた。近くには壁画もあり、昔からここがナバホの人々に愛されていた場所なのだと感じるだろう。ツアーの難点は、トラックの荷台に乗ること。囲いがないので、砂埃にまみれてしまう。コンタクトをしている人は、ゴーグルを忘れずに。
また1日ツアーでしか行けないのだが、モ二ュメント・バレーにはミステリー・バレーと呼ばれるなぞのエリアがある。なんでも、ここに住んでいた人々が、ある時期突然いなくなったことからこの名前が付けられたらしい。私たちもまだ足を踏み入れたことがないのだが、次回はぜひ行ってみたいと思っている。
それでは、次回は、モニュメント・バレー周辺の見所、フォーコーナーズ、グースネック州立公園、メキシカンハットなどをご紹介します。お楽しみに~。
(写真:フォトアーティスト飯富崇生)
フォトアーティスト飯富崇生のミニコラム:
モニュメント・バレーは映画撮影のメッカ。「フォレスト・ガンプ 一期一会」「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」「2001年宇宙の旅」など数多くの名作がここで撮影されている。中でも、この地を愛した映画監督で一番有名なのがジョン・フォ-ド。「駅馬車」「荒野の決闘」「黄色いリボン」など、懐かしのウェスタン映画の数々が撮影されたのがここだ。ジョン・フォードが一番好きだったポイントは、ジョン・フォード・ポイントとして、今も観光ポイントのひとつとなっており、たまに写真撮影用に馬にまたがったカウボーイが現れるラッキーな場合もある。また、タバコブランド「マールボロ(Marlboro)」の広告にも起用されたことでも有名。
映画とモニュメント・バレー
アクセス情報
最寄りの国際空港:ラスベガスマッキャラン国際空港または、フェニックス国際空港。 いずれも直行便はないので、アメリカ西海岸で乗り継ぎ後約1時間。 車の場合:ラスベガスからはI-15North→UT9→US98→US160→US163で、約10時間。 途中、ザイオン国立公園またはペイジで1泊した方がよい。ラスベガスからツアーあり。 フェニックスからはI-17North→US89→US160→US163で、約7時間。 グランド・キャニオンで宿泊した方がよい。周辺観光地
グランド・キャニオン国立公園、アンテロープ・キャニオン&レイク・パウエル、メキシカン・ハット、 フォーコーナーズ、グースネック州立公園、キャニオン・デ・シェリー国定公園、メサベルデ国立公園、セドナなど。