最近日本のテレビでは、世界を紹介する番組が多いですよね。私たちがこのホワイト・サンズの存在を知ったのも深夜にテレビで放映していた番組でした(2005年夏)。それを見てすぐにホワイト・サンズについて調べ、2006年1月、ここを目的地に旅をしました。それ以来、様々なイベントやメディアを通して、2人でこの場所を勝手にプロモーションしています。今回、私たち2人はこの連載の中でやっとこの場所を紹介できることを本当に嬉しく思います。それでは今回のコラム、いってみましょう!

ビーチでもない真っ白な砂漠

ビーチでもないニューメキシコ州の内陸に、ホワイト・サンズはある。この白い砂漠は、東京の3分の1の広さもあり、その約60%が軍の施設、残りの約40%が国定公園(National Monument)に指定されている。この白の砂漠の正体は石膏。ギブスなどに使われる素材だ。そのため、少し水に濡れるだけですぐに固まってしまう。

ホワイト・サンズの看板です。どこに行っても必ず看板の写真を撮るようにしています

実はこの砂漠、1年に10mほど北東へ移動しているという。なぜかと言うと、夕方から夜にかけて南西から強風が吹くことが多いからだ。2006年1月に訪れたとき、夕方16時ぐらいに到着した私たちを待っていたのは、立っていられないほど強風と砂嵐だった。それでも、少し外で遊んだりした私たちは、後から大変なことに……。モーテルに着いて、シャワーを浴びると髪の毛からすごい量の砂が出てきた。砂は小さいので、洗っても洗ってもなかなか取れない。結局15分以上、バスタブのないシャワールームで立ったまま、髪を洗い続けることに……。言うまでもないが、とても疲れた。この時に、シャワールームのあちこちにたくさんの石膏の塊ができていて、「ホワイト・サンズの砂はすぐに固まってしまうんだ」と認識したのだ。

2007年3月に再びホワイト・サンズを訪れた私たち。今度も立ちっぱなしで髪の毛を洗い続けるなんてイヤだ! と思い、バスタブのあるモーテルに宿泊した。すると滞在していた3日間、風は全く吹かず、疲れるほど髪の毛を洗うなんていう羽目には遭わなかった。

半日~1日滞在なら、デューンズ・ドライブ周辺で遊ぼう

観光のルートは、デューンズ・ドライブと呼ばれる片道8マイルの道路。ゲートからしばらくは舗装されているが、それ以降は未舗装。未舗装と言っても、砂が完全に固まっているので、ガタガタと揺れることもなくスムーズに走ることができた。まるで雪の上を走っているようなのに、滑りもせず寒くもないのがなんだか不思議な感じがした。

デューンズ・ドライブの途中、ビック・デューン・トレイルの出発地点ぐらいまでは白い砂漠の上に結構草が生えているので、写真を撮るのはちょっと我慢。なぜなら、これを通り過ぎたあたりから、見えるものは全て白の砂漠という世界に入って行くからだ。前を見ても後ろを見ても、右を見ても左を見ても、全てが真っ白。唯一色があるのは空だけ。しかもその空は青く澄んでいて、素晴らしくきれいだ。真っ白な砂と青い空の対比が、地球上の景色とは思えない幻想的な情景を作り出している。

デューンズ・ドライブの前半には、植物が生えています。ニューメキシコ州の州花・ユッカです

どこを見ても真っ白です

デューンズ・ドライブの至る所にパーキングがあり、車を停められるようになっている。お気に入りの場所が見つかったら、車を停めて砂の山を駆け上がってみよう。もちろん、服の中にたくさんの砂が入るので、その覚悟で。砂山の上まで行き、周りを見渡すと、またまた真っ白な世界。車の中から見ているのと違い、白い砂を触って、踏んで、感じることでこの目の前に広がる白い世界が現実味を帯びてくる。

パーキングです。下に車を停めて、周りの砂山で遊びます

そして、誰も歩いていないところにできた自分の足跡を見て「自分の足でここに来たんだ」と実感してほしい。大自然を前に、人間はちっぽけな生き物なのだと感じたとしても……。

少し哲学的な話になってしまったが、そんなことを考えてしまうほど、ホワイト・サンズの景色は素晴らしいのです。まだまだ書ききれていないので、次回は、ホワイト・サンズでのトレッキングと遊び方をご紹介します。お楽しみに~。

(注)日本では、ナショナル・モニュメントを国定公園と訳すことが定着しているので、この記事ではそのように記述をした。だが、日本の国定公園とは規模も管理体制も全く違うものである。
フォトアーティスト飯富崇生のミニコラム:刻一刻と表情を変えるホワイト・サンズの朝と夕
ホワイト・サンズは時間によって様々な表情を見せる。中でも、朝と夕のホワイト・サンズは本当に幻想的な雰囲気に包まれる。朝、まだ暗いうちに早々と撮影ポイントを決めよう。太陽が出る直前、その白い砂漠は薄いピンク色に染まる。白い砂漠であるがゆえに、太陽の色がそのまま砂漠に写るのだ。朝日は1秒毎に色が変わるので、きっと何度もシャッターを切ることになる。フィルムの人は必ず事前に新しいフィルムを入れ替えておくことを忘れずに。撮影に夢中で、フィルムを換えている時間などないのだから。さらに、細かい砂がカメラボディに入るので、フィルムやレンズの交換はなるべく避けよう。一方夕日は、朝日とは逆に真っ赤な砂漠を見ることができる。夕日に染まった空の赤と砂の赤、アメリカ政府観光局の人が「世界で1番綺麗な夕日」と認めた絶景だ。夕方は風が強いことが多いので、カメラのプロテクトをしておかないとレンズの隙間などに砂が入り込んでしまう。また、撮影後は機材の掃除をお早めに。

朝日が当たったホワイト・サンズです

空と砂がピンクに染まる静寂な時間

アクセス情報
最寄りの国際空港:エルパソ国際空港。2007年8月現在、日本からの直行便はないので、アメリカ西海岸各都市やテキサス州ダラスフォートワース国際空港を経由する。 エルパソからホワイト・サンズのまでは、フリーウェイI-10→I-25→US70で約2時間。
周辺観光地
エルパソ、サンタ・フェ、タオス・プエブロ、アコマ・スカイ・シティ、チマヨ、ロズウェル、カールズバッド国立公園など