前回のブライス・キャニオン国立公園の前編はいかがでしたか。『天空の城ラピュタ』の世界を思い出させるその場所に、行ってみたい! と思っていただけましたでしょうか。私自身も前回のコラムを書きながら、そして掲載されたコラムを読み返しながら、「また、ブライス行きたい!」と思いました。また、近いうちに行こうと思います。それでは、今回は、ブライス・キャニオン後編。他のエリアの紹介とトレッキングについてお話します。
南側のビューポイント:標高9,115フィートのレインボー・ポイント
前回でも少し触れたが、南側のビューポイントへ上る道は、積雪のために封鎖されることがあるが、幸いなことに私たちが行った2004年4月も、2007年3月も、道路わきや日陰に雪が残っている程度で、南端のレインボー・ポイント&ヨビンパ・ポイントまで車で行くことができた。
南端のパーキングから、すぐにアクセスできるのがレインボー・ポイント。ここの標高は、9,115フィート(約2700m)。前回ご紹介したインスピレーション・ポイントが8,100フィートなので、約1,000フィート(約300m)高いことになる。そのため、空気が透き通っていて遠くまで綺麗に見渡せるのだが、ブライス・キャニオン特有のオレンジ色をしたフードゥー(Hoodoo)が少なく、北側のポイントを見てきた人には物足りなく感じるだろう。また、同じパーキングからレインボー・ポイントと反対側にある、ヨビンパ・ポイントからも、あまりフードゥーは見えない。その代わり、この2つのポイントからは緑の木々がたくさん見え、北側とは異なるブライス・キャニオンを見ることができ、面白い。ヨビンパ・ポイントは、パーキングから5分ほど歩くのだが、そのトレイルの入り口が少し分かりにくいので、要注意。
そこから、下に降りてくると8,627フィート(ちょうどインスピレーション・ポイントとレインボー・ポイントの中間ぐらいの高さ)のところにナチュラル・ブリッジがある。"ブリッジ"、と呼ばれているが、学術的には、第10回、第11回のコラムでご紹介したアーチーズ国立公園の奇岩"アーチ"に属したものだと、ブライス・キャニオン国立公園のウェブサイトに掲載されている。このナチュラル・ブリッジは、アーチーズにある世界最大のランドスケープ・アーチに比べると、かなりしっかりしていて力強いと感じる。
他にもいくつかのビューポイントがあるが、今まで紹介したポイントに勝るものはないので、気に入ったポイントで数枚写真を撮ればいいだろう。もちろん、全てのポイントからフードゥーが見えるが、やはり前回ご紹介したインスピレーション・ポイントが最高だと私は思う。
『天空の城ラピュタ』のお城ような岩の下を歩いてみよう
さて北側のビューポイントに戻るが、朝、天気が良く、ブライス・キャニオンの壮大な景色を確認できたら、まるで『天空の城ラピュタ』の"お城の中"のような気にさせてくれる岩々の真下に行ってみてほしい。ブライス・キャニオンの中には、たくさんのトレイルがあり、どこでも気軽に歩くことができる。谷底まで下りてしまえば、アップダウンはあまりなく、日陰も多いので長距離を歩くのもそんなに大変ではない。また、ほとんどのトレイルが途中で繋がっているので、決められた道を歩かなければいけないこともなく、自分の体力に合わせて歩くことができる。
北側の主なビューポイントであるサンライズ・ポイント、サンセット・ポイント、インスピレーション・ポイントのすべてに、トレイルヘッド(トレイルの出発地点)があり、谷底へ下りることができる。私たちは、サンセット・ポイントから出ているナバホ・ループ・トレイルを下り、ウォールストリートと呼ばれる場所まで歩いてきた。このトレイルの最初は、なだらかな角度のスロープのため、なかなか標高が下がらない。歩いても、歩いても、谷底はまだまだ先という感じで、だんだん精神的に疲れてくる。それでも、何とか下りて、たどり着いたところがウォールストリート。高層ビルがそびえ立つ、ニューヨークのウォールストリートのように、サイドの壁が高く、トレイルの幅が狭いことからこの名前が付けられた。(なお、私たちが歩いたのは2004年4月。公式ウェブサイトによると、2007年7月現在、ウォールストリート周辺は落石が多いため閉鎖されている)
インスピレーション・ポイントなどから見下ろすと、とても小さく、同じような岩が並んでいるように感じるのだが、近くで見ると、違う形をした1つ1つの巨大な岩の存在を実感し、そこに自分が立っていることに感動した。頑張ってトレイルを下りてきた価値はある。また谷底に立つと、自分があまりにも小さくて、お城とも、石の森とも見えるラピュタの迷宮に誘い込まれたような感覚に陥るだろう。こんな不思議な世界は滅多に体験できないので、ぜひ一度足を運んでみて!
それでは、次回は、国立公園なのに、果物を自由に収穫できるキャピトル・リーフ国立公園とゴブリン(小鬼)の名前にふさわしい奇妙な岩がゴロゴロあるゴブリン・バレー州立公園をご紹介します。お楽しみに~。
(写真:フォトアーティスト飯富崇生)
芦刈いづみのミニコラム:冒険はここから! Ruby's Inn
ブライス・キャニオン周辺の宿泊施設といえば、Ruby's Inn。レストラン、カフェ、ガソリンスタンド、ギフトショップ、プール、スーパーなど何でも揃っている複合施設だ。このモーテルは、ブライス・キャニオンが国立公園にも指定されておらず、まだ有名ではなかった時代に、この土地に魅せられたRuby夫妻が始めたもの。今は、アメリカのビックチェーン、Best Westernグループの1つになっているが、内装は、ロッジ風で冒険心を掻き立てる。夏期はシャトルバスもこのRuby's Innの前から出ており、車を使うことなく園内にアクセスでき、大変便利。ブライス・キャニオンに行く際は、Ruby's Innに泊まろう!
アクセス情報
最寄りの国際空港:ラスベガスマッキャラン国際空港。日本からの直行便はないので、アメリカ西海岸で乗り継ぎ後、約1時間。車の場合:ラスベガスからはI-15North→UT9でザイオン国立公園内を抜け、US98North→UT12で、約5時間。 ザイオンも巡りつつ1泊2日程度でドライブをするのがオススメ。ラスベガスから日帰りは少し厳しいが、同地からザイオンとセットの日帰りツアーあり。周辺観光地
グランド・キャニオン国立公園、アンテロープ・キャニオン&レイク・パウエル、バレー・オブ・ファイヤー州立公園、ザイオン国立公園、キャピタル・リーフ国立公園、ゴブリン・バレー州立公園