前回のキャニオン・デ・シェリー国定公園(ナショナルモニュメント)いかがでしたか? 私たちの感動が届いたでしょうか? さて今回から2回にわたって、キャニオン・デ・シェリーを車で約5時間北上したところにあるアーチーズ国立公園をご紹介します。
ひと癖あるアーチーズ国立公園
もし皆さんが、たくさんのアメリカ国立公園をまわっているという人に会ったら、まず、「どこが一番好きか」と尋ねてみよう。すると面白いほどに、かなりの確率でここアーチーズの名前が出てくるはず。私たちの中では、3位にも入らないので、正確な理由は良く分からないのだが、アーチの形をした奇岩の数や迫力、アーチ以外の岩の形や岩の色、そして、ユタ州のシンボルにもなっている、サンセットの時間に赤く輝く巨大なデリケート・アーチの存在が、たくさんの人を惹きつけているようだ。ちなみに、穴の開いた岩には、アーチ、ブリッジ、ホール、ウィンドウなど様々な呼び方があるが、アーチーズ国立公園内のアーチとは、縦でも横でも、3フィート(約91cm)以上の穴が開いている岩を指している。
最寄りの町はモアブで、国立公園ゲートまで車で約10分とかなり近い。この町は、キャニオン・ランズ国立公園と、デッド・ホース・ポイント州立公園のゲートシティにもなっている。そのため、小さな町の割にはモーテルもたくさんあるし、とても活気がある。私たちは、3月の下旬に立ち寄ったのだが、モーテルはほとんど満室で、部屋探しにかなりの時間を要してしまった。しかも田舎にもかかわらず、1泊100ドル近くと驚きの高価格だった。
アーチーズへのアクセスは非常に悪く(モアブやキャニオン・ランズへも悪い)、レンタカーまたは、グランド・サークルをまわるツアーでしか、アクセスできない。ラスベガスやソルトレイクシティから、アーチーズだけ、またはアーチーズとキャニオン・ランズだけを訪れるツアーはないので、旅行を計画する人はレンタカーで行くことを前提で考えよう。
アーチーズ国立公園、前半の見所
南側に1カ所あるゲートを入ると、急勾配の坂がある。その坂をちょうど上り終わったぐらいのところにパークアベニューというエリアがあり、ひとつの見所である。ここ辺はアーチではなく、大きな奇岩が立ち並んでいる。高い岩を下から見上げるのが、ニューヨークのパークアベニューのようで、この名前が付けられた。パーキングや車道から見ているだけでは、その大きさがあまり分からないが、パークアベニューの中まで入ってみると、、大迫力の奇岩を下から見上げることができるので、ぜひ立ち寄ってみよう。ただし、そのトレイルはループではなく一本道。グループの中に長距離を歩きたくない人がいるのなら、出口に車を回しておいてもらうのがベスト。ちなみに片道約45分はかかるので、そんない歩きたくない場合は、途中まで行って帰ってくるといいだろう。
そこから約5分車を走らせると、バランスロックが見えてくる。バランスロックとは、岩の上に、大きな岩が微妙な角度で載っているもの。今にも落ちてきそうな感じがする。岩の下まで行くことができるが、パーキングからの眺めが一番かっこいいので、そこで写真を撮って、すぐに次のポイントに行ってもいいだろう。
バランスロックの少し先で右折をすると、約5分でアーチの岩がたくさんあるウィンドウ・セクションに到着する。ここでやっと大きなアーチと遭遇でき、"アーチーズ"に来たという感じになる。パーキングで車を停め、真っ直ぐそのままトレイルを進むと、眼鏡のように2つ並んでいるノースウィンドウ、サウスウィンドウと呼ばれるアーチがある。アーチの中まで入ってみると、何だが不思議な感じがし、アーチの向こうにどんどん行きたくなってしまう。
パーキングまで戻り、車でパーキングに沿って進むと、今度はダブルアーチがある。1カ所から2本のアーチが出ているもので、ものすごい迫力がある。また、アーチの合間から見える空と、アーチの色の対比が非常に面白い。アーチの中まで入れるので、そこから真上を向いて、2つのアーチをフレームに入れて写真を撮るとかなりユニークな作品ができる。
園内には、大小さまざまなアーチが2000以上あるが、アーチの上部が侵食により薄くなり、壊れてしまうものも少なくない。逆に、将来アーチになるであろう、フィンと呼ばれる薄い板状の岩もたくさんある。
まだまだ書き足りないのですが、今回はここ辺でやめにします。次回はアーチーズ国立公園後編として、世界最大のアーチと言われるランドスケープ・アーチと、ユタ州のシンボル、デリケート・アーチをご紹介します。お楽しみに~。
(写真:フォトアーティスト飯富崇生)
フォトアーティスト飯富崇生のミニコラム:アーチのでき方を簡単に説明
アーチの作られ方はこんな風に言われている。2億5000万年前から、この土地では様々な地殻変動が続き、結果として赤い層と白い層が、ちょうどハムサンドを縦にしたような形状で連なる地層が出来上がった。その後、地殻変動が止まり、その土地に雨が降ると、塩で形成される、壊れやすい白い層がまず解け始め、パンと言われる部分がなくなりハムにあたる部分だけが残った。と同時に、赤い層も水の影響を受け、弱い部分から穴が開き始めた。その穴はどんどん広がり、現在のようなアーチを形成となった。つまり、このアーチも不変的なものではなく、穴が広がり続ければいつかは崩れてなくなる。私たちが今見ることができるアーチも地球の地殻変動のほんの一部なのだ。(参考文献:Geology of National Parks)
アクセス情報
アーチーズ国立公園の最寄りの国際空港:ソルトレイクシティ国際空港 日本からの直行便はないのでアメリカ西海岸乗り継ぎで約1時間半。そこからアーチーズまでは、レンタカーで行くのが一般的。所要時間約5時間。 車の場合:ソルトレイクシティから、I-15 South→I-70 East→US-191。US-191沿いにアーチーズの入り口やモアブの町がある。周辺情報
キャニオン・ランズ国立公園、デッド・ホース・ポイント州立公園、ゴブリンバレー州立公園、キャピタルリーフ国立公園、モニュメント・バレー、チャコ・カルチャー・ナショナルヒストリックパーク(世界遺産)、メサ・ベルデ国立公園(世界遺産)、など。