全国各地で勃発する嫁姑問題。Twitterでは2人の男の子を子育て中の秋山さんの義母ツイートが話題を呼んでいる。「孫の誕生日プレゼントは水ようかんの空き容器」「手土産にお菓子よりも現金を要求する」......そんな衝撃的な義母との終わらない戦いに挑む秋山さん。今回は「旅行に行った義母が孫へ買ってきたもの」の話をお届けしよう。

  • 義母がお土産で持ってきたもの

    義母がお土産で持ってきたもの

アトピーとアレルギーと

我が家には2人の子どもがいる。2人とも0歳の頃にアトピー性皮膚炎と診断された。そしてそれに起因した食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎も持っている。幸い長男は3歳を過ぎたあたりから肌の状態が改善し、一度病院にかかって以降は食物アレルギーも喘息も起きていない。6歳になる今でもお風呂上がりの保湿は欠かせないが、前ほど神経質に世話を焼く必要がなくなった。2歳の次男は今も毎週の病院通いが続いているが、これも長男の今の元気な姿を見て、いつか改善する日がくることを信じて過ごしている。

そんな子どもたちの状態をお義母さんには逐一伝えていた。もともと肌の弱い子は食物アレルギーや喘息になりやすい。これはアレルギー・マーチと呼ばれ、何よりも肌をいい状態に保つことが一番の対策であり、そのために病院の指示でステロイドを使う機会もあること。保湿に使う白色ワセリンは粘土のような触感で、全身に塗るとそれはもうベタベタで真っ白になるがこれも保湿には欠かせないものであることを、長男のときから繰り返し何度も伝えてきた。

お義母さんは私がその話をするたび「え、そうなの?」というリアクションをする。たぶん私の話をちゃんと聞いていないのか、私が話をしている相手が毎回違う人物なのだろう。その場面が来るたび、同じことを繰り返し何度も根気強く説明するのだが、たぶん2歳の方がもう少し記憶力はいい。

旅行帰りの義母襲来

そんなある日、突然お義母さんが我が家に来た。日が暮れて夕飯の準備にとりかかる時間だった。その日は夫が出張中だったので「来てもつまらないですよ」と伝えたが、それでも来ると言う。玄関を開けてガラガラとスーツケースを引いて現れたお義母さんは、なんと旅行帰りにそのままうちに来たようで、手にはたくさんのお土産を持っていた。

こんな状態でうちに来るなんてよほどの用でもあるんだろうか、と思っていると「秋山ちゃん、孫ちゃんたちの肌のことなんだけど」とお義母さんが切り出した。ちょうどお風呂上りで長男は自分でヒルドイドを、次男は例のごとく私の手により白色ワセリンで全身のコーティングが完成されたところだった。

「今日ご主人がお医者様をしてらっしゃるお友達と旅行に行ってきたんだけど、今は保湿じゃなくてアロマで治せるそうよ」

聞いた瞬間、『これは詐欺です』と私の頭の中で厳しい顔をした警察官が手を前に突き出して『STOP特殊詐欺』と訴えるポスターが完成した。今現在小児アレルギーの専門病院にかかっているが、今まで一度も聞いたことがない話だった。

「どちらから聞いた情報ですか」と聞くと、少し勿体ぶって「そのお友達の知り合いのお孫さんもひどいアトピーだったんだけど、そのアロマを買って焚いてから肌が良くなったらしいの。彼女曰くそのアロマのおかげだって。ご主人もお医者様だからそんな根拠のないものは勧めないと思うわよ」と言うのだ。

ここに医者の妻、つまり素人の高齢者が言う情報を鵜呑みにし嫁に発信する悲しい姑の図が完成した。余談だが、お義母さんは以前孫たちのために「頭の良くなるお香」を火災報知器が作動するスレスレに焚いて夫に怒られた経緯がある。もしかしたらそういう話に弱いのかもしれない。

「でもお高いんですよね?」と通信販売の安い謳い文句みたいなことを言うと「それがね、初回はお試しでこのくらいなんだって」と指を何本か立てて嬉しそうに言うので、私の中で2枚目の『これは詐欺です』のポスターができあがった。

お義母さんとしてもかわいい孫に何かしてやろうという心からの純粋な気持ちで言ってくれたのだと思う。しかし「保湿じゃなくて」と言われるとそれは何年もかけて医師と相談してステロイドも使って今の状態までやってきた私の苦労をすべて無駄にする発言だと非常に悲しくなった。そしてなんだか無性に腹が立ってきて、気づいたら大きな声で「いりません」と声が出ていた。

こういった場面で「大丈夫です」などと曖昧な返事で濁すと、超絶ポジティブなお義母さんはきっと肯定の意味で受け取るだろうと思い、『不要です』という意思表示が必要だった。「孫ちゃんたちがいつまでもお薬でベタベタになるのはかわいそうじゃないの?」とこれも本当に孫を想う純粋な気持ちで良かれと思って言ってくれているのだろうと頭の中では十分に理解しつつ「うるせえな」と思った。

私は普段めったにお義母さんに口答えしない。なので今回の件、お義母さんはさぞかしビックリしただろう。しかし、このかわいく尊く自分の命より大事な2人の成長をずっと見てきたのは私なのだ。私があまりにもはっきりとNOを突き付けたのでお義母さんはそれ以上何も言わずに出されたお茶を飲むとそそくさと帰っていった。「アキちゃん(夫)に“体に気を付けてね”って伝えてね」といういつものフレーズだけは忘れずに。そして驚いたことにあんなに手にぶら下げていたお土産の山の中に我が家へのものはなかった。戦いは続く。