全国各地で勃発する嫁姑問題。Twitterでは3人の男の子を子育て中の秋山さんの義母ツイートが話題を呼んでいる。「孫の誕生日プレゼントは水ようかんの空き容器」「手土産にお菓子よりも現金を要求する」......そんな衝撃的な義母との終わらない戦いに挑む秋山さん。今回は「義実家の家族グループLINE」の話をお届けしよう。

  • ついに入ってしまった義実家ライングループで起こった出来事

    ついに入ってしまった義実家LINEグループで起こった出来事

義実家のグループLINEへのお誘い

先月、とうとう義実家のグループLINEに招待されてしまった。

私は今まで義父母とLINEをしたことがない。わざと避けてきた。夫にも緘口令を敷き、どんな状況下においても私のLINEIDは教えてはならないと、村の掟より厳しく言いつけてきた。お義母さんとのやり取りは、メールくらいの距離感がちょうどいい。それが何をどうしたのか、いきなりグループLINEに入ることになってしまった。

事の発端は今年の1月。私は忙しくてお義母さんからのメールに返事をしなかった。そしてそのことを指摘された時に

「あれ、おかしいですね……こちらには届いていないみたいです……」

とすっとぼけた。スマホのせいにした。本当は届いている。「2回目の緊急事態宣言が出たので家から出ないでください。5つの『こ』が重要みたいです」というメールだ。見た。最初に開いた時、都知事からメールが来たのかと思ったことも覚えている。そして全てを読んだ後、面倒で返信をしなかった。これだけだ。

無視して三日後に、電話が鳴った。お義母さんは何度も「私の送信ボックスにはメールが残ってるのに、おかしいわねえ……」と言っていた。私もお義母さんの声のトーンに合わせ「本当に不思議ですね……途中でどっかに行っちゃったんですかね?」と言った。おかしな返しだが、機械に疎いお義母さんにはこれでいい。ポイントは自分で言って笑わないことだ。

そして、ここで例の一文が切り出された。

「私もせっかくスマホにしたから、これを機に秋山ちゃんを家族LINEに招待します」

お義母さんは昨年スマホデビューしている。BluetoothやらAirDropなどは何度説明してもさっぱりのようだが、本人は『スマホ』という響きだけで強くなれた気がすると嬉しそうだった。

「私がそんな……ご家族のグループLINEに入るなんて、申し訳ないです」

私は咄嗟にそう言った。しおらしい嫁を演じて謙遜で切り抜けようとした。しかしこれは、後の調査でも完全に悪手だということが証明されている。正解はこうだ。

『LINEはしていません』

あの時私が生き残る道はこれしかなかったのに。正常な判断ができなかったことが悔やまれる。

「大丈夫。あなたは特別よ」「あたし、親友はたくさんいるけどLINEは家族としかしないの」「つまり、あなたは家族なの」「皆には了解を取っておくからすぐにでもいらっしゃい」

高額な鍋でも買わされるのではないかと思うほどのパワーで私を誘ってくる。何がお義母さんをそうさせるのか。電話なので「一旦持ち帰って検討します」とも言えず、結局、私はその日のうちに義実家のグループLINEに参加をした。

ついにグループに参加

『秋山です! よろしくお願いします!』

事前に話がいっているのだから改まった自己紹介するのも変だと思い、当たり障りのないコメントにした。滅多につけない! マークを2つもつけた。新入りは元気が肝要だ。

すぐに既読が3と出る。3人が私のメッセージを読んだということだ。家族LINEのメンバーは私を入れて6人で、夕方までに既読は5になった。全員が私の元気なメッセージを読んだということになる。しかし、不思議なことに日が暮れても夜が明けても誰からも返事が来ない。怖い。一体何が起こっているのだ。あなたたちから誘ったのではないか。不安で胸が潰れそうになっていると、翌朝の10時頃に「こちらこそよろしくお願いします」と返事が来た。名前が「のんびり」になっている。誰だか分からないが、敬語を使っているのでたぶん義弟だ。

そこから三十分後、キャサリンから「昨晩は有頭エビを食べました。お腹いっぱいです(^^♪」と写真付きの報告が入った。数分後に鳩が「美味そうだな!」と返す。誰と誰だ。とりあえず、このグループLINEで本名を登録している人間は私しかいないらしい。私が元気を振り絞って書いたメッセージは見事にスルーされ、そのあとも各々が自由な報告を続ける。

キャサリン「緊急持ち出し袋の確認をしましょう!」
鳩「腰が痛い」
キャサリン「今日の感染者は〇〇人です! 引き続き自粛を!」
鳩「頭が痛い」
キャサリン「このあとお友達とランチです(^^♪)」

大体キャサリンと鳩が喋っている。そこにたまにのんびり君が「気を付けてね」と合いの手を入れる構図だ。夫は返事をしない。私はどこまで会話に入っていいのか分からず、静観を続けるしかない。

お願いに応じた先で気づいてしまったこと

そんなある日、キャサリンが唐突に「秋山ちゃん、孫ちゃんたちの動画がたくさんほしいわ」と言ってきた。キャサリンからのご指名だ。言われたとおり、三男の誕生日会動画の中から一つを選んで送信する。フェルトの王冠をかぶって笑顔の三男。最近拍手を覚え、動画の中でも披露している。何度見ても最高にかわいい。

瞬時に既読がつき、キャサリンから返信が来る。

『1』

もう一つ送る。ケーキのろうそくを、ぽかんとしている三男の横で長男と次男が我先にと消そうとする動画だ。

『2』

……ヨーグルトで作ったケーキを食べる三男。

『3』

怖い。ホラー映画か。

結局私が送った動画の個数をカウントすると、キャサリンは消息を絶った。鳩は具合が悪いのか何も言ってこない。しばらくしてのんびり君が「かわいい甥っ子たち。皆で成長を見守っています」と送ってくれた。気を遣わせてしまったと、申し訳ない気持ちになる。

こうして私が招待を受けてからそろそろ2カ月になるのだが、相変わらずキャサリンと鳩は日記代わりにLINEを使っているし、私はLINEの通知が増えるたび、2人ともTwitterにいけばいいのにと思うようになった。

何より怖いのは、義実家は4人家族でそこに私を加えても5人のはずのグループLINEに、なぜかメンバーが6人いることだ。6人目のメンバーは未だに発言してこない。