全国各地で勃発する嫁姑問題。Twitterでは3人の男の子を子育て中の秋山さんの義母ツイートが話題を呼んでいる。「孫の誕生日プレゼントは水ようかんの空き容器」「手土産にお菓子よりも現金を要求する」......そんな衝撃的な義母との終わらない戦いに挑む秋山さん。今回は「子どもたちが入院したとき」の話をお届けしよう。
次男が入院することに
先月3歳の次男が検査入院をした。以前から簡単な検査はしてきたのだが、更に詳しく調べる必要があると判断されたためで、私もその3泊4日の入院生活に付き添った。主治医から「可能性」として聞かされた病名は難解で、それに加え検査当日の説明や同意書にサインをしたりと、とにかく慌ただしく手続きを終えた。
入院準備を進める中で、義実家へ報告するか私は迷っていた。我が一族は何かあった時にはまずお義母さんに連絡しなければならない。私が実家に帰る際には毎回
「〇月〇日から〇日間、◆◆時の便で実家に帰ってもいいでしょうか。子どもも一緒です。〇月〇日〇時の◆◆時の便で戻ります」
と連絡する決まりがある。こんなに詳細に届け出ないと外泊できないのはうちか警察学校くらいだろう。ちなみに警察学校では申請後、担任教官から外泊に際し注意事項を聞かされるそうだが、私も毎回「向こうのご家族のご迷惑にならないように」と注意を受けている。
例えば今回の入院をお義母さんに報告したとする。「入院」という単語を聞いたお義母さんは驚いて二言目には「どんな病気なの?」と聞くだろう。そして私が「まだ確定ではありません」と言ったとして「アキちゃん(夫)にそういう素因はないから、もしかしてそちら(私)の問題なのかしら?」と言うのだ。実際に言われたわけでもないのに、わざとらしく小首をかしげながら私の方を見つめるお義母さんの姿が容易に想像できた。
「入院」でも義母はフルスロットル
入院の報告をためらう理由は他にもある。実は今年の2月にも三男がRSウイルス感染症で入院をした。当時三男は生後25日で、退院までの2週間をその小さい体で乗り切った。この時私はお義母さんに三男が入院をしたと連絡を入れていた。
報告を受けたお義母さんは、しきりにお宮参りのことを気にしていた。「退院の目途は立っていません」と言っているのに、生後31日目に氏神様に三男を見せなくちゃと何度も電話が鳴った。無理なのだ、入院しているのだから。私自身ずっと病院にいてお宮参りのことなどすっかり忘れていた。しかしスマホのリマインダー機能より正確に「お宮参りまであと〇日です」とお義母さんから連絡がくる。でも無理なのだ、三男は入院をしているのだから。
退院の見込みもなく、日にちだけが過ぎていくことに焦ったお義母さんから翌日長文のメールが来た。要約するとこうだ。
「病室でお宮参りができないか病院と交渉してみるのはどうでしょう? 秋山ちゃんが忙しいなら私が話をします」
たぶん外出できない入院中の両親や祖父母のために、新婦がウエディングドレスを着てミニ結婚式をする映像をどこかで見たのかもしれない。しかし今回の主役は腕に点滴の管を刺され、鼻に酸素供給のためのカニューレ、足にも色々な測定機器がついていた。お宮参りの本質が氏神様に子どもの健康を祈念することなのだとしたら、病室でお宮参りとは本末転倒な気がした。
一応フォローしておくと、お義母さんは病院に迷惑をかけようなどとは微塵も思っていない。ただ、悲しいほどに自己中なのだ。
今年の2月~3月といえば緊急事態宣言が発出される直前で、院内の緊張が高まっていた時期だった。三男の入院した小児病棟も、この頃から付き添いの保護者は1名のみで途中交代が禁止となっていた。兄弟のお見舞いでさえも禁止されている中で、「院内でお宮参りをさせてもらいたいんですけど」と言いながら香水をふりまいた派手な服装のおばあさんが受付に現れたら皆どう思うだろう。国より前に院内で何らかの緊急事態が宣言されていたはずだ。
結局この一件は「母親以外は病棟に入れない」と伝えたところで「自分が関われないんじゃ意味がない」と思ったのかすんなりと引き下がった。その後生後39日で退院した三男は、家族のみで近所の小さな神社でお参りをしてきた。
次男の入院生活
本題に戻るが、今回の次男の入院に関して、一族のルールを破ることに決めた。決めたというより、病院で主治医から病気の話をされたあの時から報告する気などなかったのかもしれない。入院中にアポなしでお義母さんが家に来る可能性もあったが、バレたらその時、次男の病気が確定したらその時また考えよう。私は腹を括った。
夫がすでに伝えている可能性も考えた。この件で夫に口止めをする気はなかったし、もし報告済みの場合は全ての窓口を夫にし、私は付き添いに専念しようと思っていた。
こうしてたくさんの葛藤を抱え迎えた次男の検査入院だったが、結論から言えば、4日間の入院中にお義母さんが我が家に来ることはなく、次男の入院がバレることもなかった。次男も辛い検査をすべてやり切り、看護師さんからたくさん褒めてもらった。3歳児の「まんざらでもない顔」はとてもかわいい。
義母除けの切り札
退院した翌日に、お義母さんから連絡が来ていた。
「胃腸炎は大丈夫ですか? もし元気になったのなら今から行きます」
文面だけで推し量るに、どうやら夫は私を胃腸炎ということでお義母さんに伝えていたようだった。これは我が家では非常に有効な手段として知られている。お義母さんは嘔吐下痢の症状のある人間には絶対に近寄らない。看病などもってのほかで、電波越しでも感染すると思っているのか、電話もしてこなくなる。年に何度も使えないのが惜しいところなのだが、我が家はここぞという場面で胃腸炎という文字がお義母さん宛てのメールで出てくる。私はすぐに返信をした。
「まだ気持ち悪いので無理かもしれません」
お義母さんは来なかった。ほら、効果は抜群だ。