夏場、バスや車で成田国際空港(以下、成田空港)に向かう時に感じるのは、ここが緑に囲まれた空港だということだ。2004年に成田空港が民営化された時には"グリーンエアポート"と自らを称したが、まさにぴったりのネーミングである。

  • 日本の空港を語る上で、成田空港の歩みとこれからは外せないテーマだ

    日本の空港を語る上で、成田空港の歩みとこれからは外せないテーマだ

その"緑"には空港周辺の農地も含まれ、2018年5月にはJALが成田空港周辺での農業への参入を発表。体験型農園や直売所、バーベキュー施設を造り、機内食にも周辺で採れた野菜や果物を使う予定だ。ANAも機内食に成田周辺の農産物を採用してきた。

ローカル目線を持つグローバル空港

成田空港は開港前から建設反対運動などで苦労してきた歴史がある。そのため地元への貢献意識が高く、こうした航空会社の取り組みもそれに関連している。また、同空港の調査によると、2017年11月1日現在、空港内で継続的に働く従業員数は約4万3,000人と開港時の約2.5倍、地元千葉県出身者の割合は全スタッフの50%超となった。千葉県内の生産年齢人口に占める従業員の割合は約100人に1人。まさに地域に貢献する空港といえる数字となっている。

  • 国際線が豊富なので、様々な国のエアラインが見られる。さくらの山公園はバスでもアクセス可能

    国際線が豊富なので、様々な国のエアラインが見られる。さくらの山公園はバスでもアクセス可能

一方で、成田空港は国内最大の国際線を有し、世界43の国や地域・116都市を結ぶ、国内で最もワールドワイドな空港でもある。2016年12月には日本人の利用者に加え、外国人旅行者が急激に増えたことから、日本と世界を"つなぐ"という想いなどを込めて現在の藍色・青色・水色を基調とした新しいブランドロゴを導入した。成田空港はグローバルなビジネスを展開しながら、同時に地域と共生・共栄を図りその強みをアピールしてきた。

成田空港が開港したのは昭和53(1978)年5月。2018年は開港40周年にあたり、「成田空港チョコクランチ」(東京食賓館)、「トラベラーズノートエアポートエディション」(トラベラーズファクトリーエアポート)など、成田空港限定品をはじめとする40周年グッズを販売中だ。また、同じく創立40周年を迎えたビックカメラとのコラボレーションで、対象店舗で1会計5,000円以上の買い物をして応募すれば抽選で旅行券10万円分、ギフトカード10万円分が当たる総額400万円のプレゼントキャンペーンを実施中だ(7月19日まで)。

  • 国内最長の4,000mの滑走路を持ち、オール2階建ての超大型機エアバスA380も就航(写真はエアバスのテスト機)

    国内最長の4,000mの滑走路を持ち、オール2階建ての超大型機エアバスA380も就航(写真はエアバスのテスト機)

LCCを中心に拡大する就航地と施設容量

ここ数年、成田空港にかつては少なかった国内線が激増した。2012年7月のジェットスター・ジャパンを皮切りに国内線に格安航空会社(LCC)が続々と就航し、2018年6月現在、成田空港は国内18都市を結び、地方空港からの利用者にもより馴染みのある空港となっている。今後も長崎や石垣島、チューク諸島(ミクロネシア)など、国内外の路線が開設される。2015年4月に共用を開始したLCC専用の第3旅客ターミナルビルは、2022年までに約2倍に増築することが決まっている。

  • LCC専用の第3ターミナルは2015年4月8日にオープンした

    LCC専用の第3ターミナルは2015年4月8日にオープンした

ちなみに、第3ターミナルは英国に拠点を置く航空サービスリサーチ会社のスカイトラックス社が選ぶ「ワールド・ベスト・ローコスト・ターミナル」部門で、2016、2017年と2年連続で1位を受賞した。拡張後のサービスや施設も楽しみだ。

2020年に向けて1ビルと2ビルともリニューアル

第1、第2旅客ターミナルビルは2018年7月、東京2020大会に向けて、一足先にリニューアルに入る。アジア主要空港との競争や世界トップレベルのユニバーサルデザインへの対応などをコンセプトに、手続き自動化等の推進に合わせたり、利用者が感覚的に進むべき動線が分かるようにしたりなど、施設を一体的に更新。2019年度内には工事を終える予定だ。

  • リニューアル後の第1ターミナル北ウィング出発ロビーのイメージ(画像提供: 成田国際空港)

    リニューアル後の第1ターミナル北ウィング出発ロビーのイメージ(画像提供: 成田国際空港)

また同じく、2018年7月には第1ターミナルのP1の立体駐車場が工事を終えてオープン。1,200台から1,800台と収容台数は1.5倍になる。第2ターミナルのP2も2019年夏頃に収容台数が2,400台から3,100台に拡大される予定だ。

  • 現在、JRで空港第2ビル駅に到着したらJRだけでなく京成の2つの改札を通る必要があるが、これが2019年度中に解消される予定

    空港第2ビル駅にJRで到着した際の京成との二重改札になっている状態を2019年度中に解消できるよう、現在、関係者で協議中

2018年3月には国土交通省、千葉県、空港周辺9市町、成田国際空港の「四者協議会」で空港機能強化を合意。3本目のC滑走路(3,500m)建設、B滑走路の2,500mから3,500mへの延伸、さらにC滑走路の共用開始に合わせて滑走路の発着時間を現在の(原則)6時~23時から5時~翌0時半に延長するといった内容で、年間の発着枠を現在の30万回から50万回まで拡大させる計画だ。近年の国内外の空港との競争の激化が、この背景にはあるのだろう。

  • 2012年のジェットスターの国内線就航と同時に格安バスが運行開始。京成バスは早割なら東京駅・銀座~成田空港間が900円

    2012年のジェットスターの国内線就航と同時に格安バスが運行開始。京成バスは早割なら東京駅・銀座~成田空港間が900円

さて、一方で成田空港では新しいサービスの導入や施設のオープンも相次いでいる。次回はそれらを紹介しつつ、この大空港の楽しみ方などをお伝えしたい。

  • 成田市の観光キャラクター、うなりくん

    成田市の観光キャラクター、うなりくん

成田国際空港データ
3/4レターコード: NTR/RJAA
開港年月日: 昭和53(1978)年5月20日
年間航空旅客数: 約4,069万人(2017年)
年間航空機発着回数: 25万1,639回(2017年)
敷地面積: 1,111ha
ターミナル/延床面積: 3棟/第1=46.3万平方メートル 、第2=39.1万平方メートル、第3=6.7万平方メートル
滑走路: 2本(4,000m/2,500m)
Wi-Fi: 無料
電源コンセント: 各所に設置
その他: 会社管理空港、管制塔2本

筆者プロフィール: 長崎五郎

20数年間、航空業界、旅行業界、諸外国の観光事情を調査・取材。国内外の空港で過ごした時間は3,500時間超。現在は地域経済研究をライフワークにしている