新宿、渋谷、池袋、品川などの巨大ターミナル駅。そのひとつ隣の駅周辺には、懐かしい風景や歴史の面影をとどめる、エアポケットのような街が数多く残されています。
この連載では、そんなターミナル隣の駅周辺を探訪。ひとり暮らしや転居を考えているサラリーマンに、アクセス抜群でありながら、ほっと落ち着く、エアポケットタウンの魅力を紹介します。
小田急全駅で2番目に少ない利用者数
小田急線の新宿駅で各駅停車に乗り、発車してからわずか数分。ふたつ続く踏切を過ぎると電車は「南新宿駅」に停車します。小田急線で利用者数1位の新宿駅の利用者が1日約50万人に対し、その隣の南新宿駅は約4,000人。小田急線全駅で2番目に利用者が少ない駅です。
新宿駅・代々木駅が徒歩圏内という街
南新宿駅の開業は1927年(昭和2年)。小田急線の開通と共に誕生した歴史ある駅です。開業時の駅舎は、現在より新宿駅寄りにあり、駅名も「千駄ヶ谷新田駅」でした。
1937(昭和12)年に「小田急本社前駅」、1942(昭和17)年に「南新宿駅」に改称。1973(昭和48)年には、新宿駅改良工事に伴い、現在の場所に移転しました。
都心とは思えない静かで落ち着いた街並み
南新宿駅周辺の特徴は、多くの路線が乗り入れる新宿駅、代々木駅も徒歩圏内でありながら、静かで落ち着いた街並みがあること。
高校生や浪人生が集う代々木ゼミナールが甲州街道側に移転したことで、より閑静な街へ変貌を遂げています。
ひとり暮らしに最適なマンションやアパートも豊富
南新宿駅周辺の1R、1K、1DKの家賃相場は約11万円で、隣の新宿駅周辺の10.6万円より少し高いそうです。独身者や学生にとって利便性が高いエリアであるため、一人暮らし用の家賃相場が高くなっていることが考えられます。
一方、1LDK、2K、2DKの家賃相場は約18.4万円で新宿の約19.2万円よりは少し低いとのこと。ルームシェアやカップルで暮らすなら、適当な価格といえるかもしれません。
日常使いの食事処や人気のレストスポットも
かつて代々木ゼミナールに通う高校生や浪人生で賑わっていた南新宿駅周辺には、若者の空腹を満たすラーメン店や定食屋がたくさんありました。その中には、いまでも営業を続ける人気店があります。
また、代々木ゼミナール校舎跡地の再開発で新たなレストスポットも誕生しました。その中で「ポパイ」は南新宿を代表する老舗洋食店。
ハンバーグ、生姜焼き、唐揚げ、メンチなど、組み合わせ自在でボリューム満点のメニューとリーズナブルな価格が魅力。かつて高校生だった大人が、いまも通い続ける人気店だそうです。
都心でありながら歴史と自然を身近に感じる
東京の歴史を感じ、豊かな自然を満喫できることも南新宿駅周辺の魅力。戦前から続く伝統ある人形劇団の劇場や玉川上水開削の歴史を刻む「葵通り」、徒歩圏内に広がる明治神宮など、休日に散策したくなるスポットも身近にあります。
ゆったりのんびり、休日には最寄りの銭湯へ
かつて南新宿には駅そばに「奥の湯」という銭湯がありましたが2015年に惜しまれつつ閉店しました。現在、南新宿駅から最も近い銭湯は、各駅停車で2つ目の代々木八幡駅下車、徒歩約1分の場所にある「八幡湯」です。八幡湯は代々木公園でジョギングを楽しむランナーにも人気の銭湯。休日に散歩を兼ねて、温泉気分も楽しめます。
日々、膨大な数の人々が集まり散っていく巨大ターミナル・新宿駅。そのひとつ隣の駅周辺には、意外なほど閑静で、どこか懐かしい街並みが広がっています。そんなエアポケットのような街で暮らしてみるのも、東京の新しい楽しみ方のひとつではないでしょうか。