最近、飛ぶ鳥を落とす勢いの格安航空会社。正式にはLCC(ロー・コスト・キャリア)と呼ばれ、平たく言えば、「経費を低くおさえた航空会社」である。さぞ安っぽい機内なのだろうと想像して機内に入ると、全席革張りのシートを使っていて意外に思う人も多いはずだ。スカイマークのクリーム色のシートなどは、なかなかいい質感を出している。それにしても、革なんて使って経費を抑えられるのだろうか。

スカイマークの機内。シートピッチ(座席の前後間隔)は大手に比べて広め

今夏、日本国内にも就航するエアアジアも総革張りシート

実は掃除が簡単

まず、革には長持ちするメリットがある。布のシートは長く使うと色あせて安っぽくなっていくが、革は時間が経っても色あせないどころか逆にいい味が出てくる。それに、革は掃除が簡単。実はここがポイントで、LCCは短距離路線を日に何度も往復するシャトル運航便が多い。これは、乗客の利便性を高めるためだが、一方で、空港に飛行機を長い時間とめておくと駐車料金ならぬ駐機料金が上がってしまい損をするから、着陸したらなるべく早く出発したいという裏事情がある。掃除に長い時間をかけている暇はないのである。

また、布のシートは食べ物などが付くと清掃に時間がかかってしまうが、革ならさっと拭けば、汚れも匂いもとれてしまう。さらに、LCCは客室乗務員が清掃係も兼ねているので、仕事の負担を軽くできる効果もある。

ジェットスター航空の上級クラス。革張りの上に見た目にも豪華なシートを採用

いわゆる普通の布製シート。ただし燃えにくい素材でできているのが常識

昔は機内でタバコが吸えたので、革だとタバコの火が飛んでシートに穴があいて見苦しかった。だから飛行機用の燃えにくい繊維が開発されて、多くの航空会社が布のシートを採用していった。しかし、いま機内は禁煙だから穴が開く心配もない。

庶民には縁遠いプライベート・チャーター機には、こんな高級ソファタイプのシートも。最新の人間工学を基につくられている(エアバスA318エリート)

革のシートに座ると座面が硬く感じるかもしれない。かつてファーストクラスではふかふかの革張りシートが主流だったのは、豪華さが出るからだ。しかし、人間工学が発達するにつれ、座面は柔らかいより硬い方が身体は疲れず、腰にも良いことが分かってきた。そのため布だろうが革だろうが、いまは座面の堅いシートが主流となっている。

でも、「冬場に革張りシートに座るとひんやりして冷たい」という人は多いかもしれない。それについては、ご自分のお尻で温めて、としか言いようがありません(笑)。