前回に引き続き、今回も航空会社の安全性についての話題。

現在はデルタ航空となったノースウエスト航空。この航空会社が1990年代の一時期、たびたび機材トラブルなどで出発した後に空港へ引き返したり、フライトをキャンセルしたことがあった。では、ノースウエスト航空は特に危険な航空会社だったのかといえば、そうではない。

航空会社の安全基準は、その航空会社の「国籍」によって決められる。ノースウエストはアメリカの航空会社だから、アメリカの安全基準によって運航される。そして、一般に欧米(旧西側)諸国は安全基準が厳しい傾向にある。

だから、アメリカ基準のノースウエスト航空では空港へ引き返すようなトラブルでも、たとえばアジアのある航空会社では問題なく飛んでいるというケースもあるのだ。トラブルが表面化する回数が多いからといって安全性に問題があるとはいえないわけで、むしろ厳しい基準と情報公開により信用できるともいえるのだ。

退役した飛行機が並べられたアメリカのピマ航空宇宙博物館。すべての飛行機が無事に退役まで飛んでもらいたい

しかし、これは逆にいえば日本に就航している航空会社は、一概に安全とは言い切れないということだ。利用者目線からいえば当然、政府なり関係機関が何らかの安全基準をもって日本就航の許可を与えていると思うだろうが、そうではない。

例えばEUでは、安全性に問題のある航空会社の"ブラックリスト"をつくって、リストに上がった航空会社の域内への乗り入れを制限している。一時期、続けて墜落事故を起こしていたガルーダ・インドネシア航空がこの中に入ったことがある。しかし、その頃(2000年代半ば)の日本にはガルーダの飛行機が普通に飛んで来ていた。今はガルーダの安全性は改善されてリストから外れているが、当時航空業界ではかなり話題になった。

ここ10年間で航空機事故の割合は、100万フライトに1回程度から約300万フライトに1回と大幅に減った。しかし、利用者の願いは事故率ゼロである。航空需要は増すばかりで特にアジアではLCC(低コスト航空会社)をはじめとする新しい航空会社が続々と誕生し、業界の規制緩和で国のバックアップのない航空会社が次々に日本に就航している。資金力のない航空会社が事故を起こせば、補償の面で問題が出る可能性もある。何らかの安全基準を設けることも必要だと考えるのは筆者だけではないだろう。