先日、相談にのったAさんは上司(課長)に対するストレスを抱えていました。
「とにかく『仕事ができない人』。例えば、資料作成の指示を受けても、指示が曖昧、質問しても的を得ない。仕方なく、与えられた情報で作ってみると、イメージと違うと言われました。もうめちゃめちゃ腹が立ちました。
最初に『具体的に、こうしてほしい』ときちんと伝えろよ! って話です。課長という偉いポジションにいるわけですから、きちんと指示を出すスキルがあるのが当然ですよね? ほんとあの人の下は、ストレスが溜まります」。
気持ちはよく分かります。私も同じような悩みをもったことが20代の頃にありますから。
上司は全員スキルがあるという幻想
そもそも論になりますが、なぜAさんは、上司にストレスを感じているのでしょうか?
「コアビリーフ」という心理学用語があります。個人が正しいと思っている信念や価値観のことです。これがストレスの要因になっている場合がよくあります。
Aさんの発言の中に「課長は指示を出すスキルを持つのが当然」という部分がありますね。これがコアビリーフです。
コアビリーフとは、言い換えると、「理想像」です。けれど、現実は、「抽象的な指示しか出せない。質問しても答えが曖昧」という状態。この「理想と現実のギャップ」がストレスのもとになっているわけですね。
ただ、考えてみてください。
本当に、あらゆる課長職の人は的確な指示を出せるのでしょうか? もちろん、こういったスキルが高い上司も世の中には沢山います。
一方で、所属する企業の評価制度が適切でなく、「年次が上がった」「特定の領域に詳しい」「プレーヤーとして優秀だった」という理由で管理職ポジションに就いている(就かされている?)管理職が沢山いるのも、また現実ではないでしょうか。
だからこそ、組織内の人間関係においては、「〇〇たるもの、こうあるべき」といった自分の価値観に当てはめようとしすぎないことが大切です。
Aさんの場合で言えば、「課長=指示を出すスキルが高い人もいれば低い人もいる」という中立的な捉え方をする方がストレスも減りますし、質の高いアウトプットを出すための建設的な打ち手を取ることにつなげられます。
曖昧上司への対処法
では、ここではどんな打ち手が効果的でしょうか。
Aさんは、「質問をしても曖昧な指示しかこないので、仕方なく、その情報だけで、資料を作りあげる」という仕事の進め方をしていました。
おそらくですが、その上司は、言いたいことを言語化することが苦手なタイプです。こういったタイプの人に有効なのは、図解化してあげること。
「(1)まずは引き出した曖昧な情報を基に「ポンチ図」をささっと作る、(2)そのポンチ図を見ながらすり合わせをする、(3)確定版に仕上げる」という進め方の方が効果的です。
ポンチ図とは、とりあえず分かるくらいにまとめた簡単な絵や図のことで、時間をかけず、イメージが分かる程度にざっくり書いたもののことです。
図解化した叩き台を作り、それをベースに修正をかけていく方が、効率的に精度の高いアウトプットを出せますし、ストレスも軽減できるのではないでしょうか。
上司は選べません。上司の能力に不満がある場合もあれば、タイプが合わない場合も当然、あります。
そんなときは、相手に「こうあって欲しい」と過度に期待し続けるよりも、自分の捉え方や、関わり方、仕事の進め方を工夫してみると、ストレスも減り、仕事もスムーズに進められるのです。