理想の自分と現状の自分のギャップがあまりに多い場合は、ストレスフルになるものです。
先日、ある場所で会ったGさん(30代前半男性)は、「今の時代、未来は自分で切り開くしかないと思うんです」と言います。そして、以下のような話をたくさん紹介してきました。
「先日、A先生のセミナーに行きました。また、Bという作家の方の書籍を読んで感動し、読書会に参加しました」
「C先生のセミナーは最高でした。ワクワクを大切に、熱く生きるという目標ができました」
「DさんのEという本は読みましたか? 付き合う人のゾーンを変えると、自分自身のランクも変わるそうです」
発言内容からは、「未来を自分で切り開く」ために、大変熱心に勉強されている印象です。しかし、ある質問をすると、少し様子が変わったのです。
「Aさんは、どんなお仕事をされているのですか?」と尋ねると、「本業はたいした仕事じゃないです。まあ普通に会社で働いています」といったように、急に歯切れが悪くなるのです。おそらく、普段の仕事では、「行動に移す」ことをできていないのではないかと推察します。
自己効力感を高める経験
私は、人材育成やキャリア開発のお手伝いを仕事にしていますが、Aさんのように「明るい未来を自分で作りたいけれど、行動に移せない」という状態の方は、(表には出さないけれど)強いストレスや不安を抱えている場合が多いように感じています。
こういった方々の共通点は、心の根っこの部分にある「自己効力感」の低さです。自分に自信がなく、「どうせ自分なんてムリ」という捉え方をしてしまい、何も行動に移せないのです。
自己効力感は、以下4つの経験で高まります。
1:何かを、自分の力でやり遂げたという経験(=遂行行動の達成)
2:自分と似たような立場にある他者が成功するのを見聞きする経験(=代理経験)
3:他者から繰り返し認められたり励まされたりする経験(=言語的説得)
4:リラックスして落ち着いた状態でいる経験(=情動的喚起)
つまり、これまで自分自身が何かうまくやり遂げて結果を出した経験が少ない場合、周囲にいた人が、「何かを成し遂げたがおらず、言い訳や他人のせいにして自己弁護ばかりするような人ばかり」、「褒めてくれたり認めてくれたりする人が周囲に少なかった」、「『これがうまくできなければ許さないぞ!』という、常に緊張を与えてくる人の下で生きてきた」という過去のある人は、自己効力感が低く、「行動に移す」ことをしづらい傾向があるのです。
ちなみに、自己効力感は、例えば、何に取り組んだわけでもなく、何も成し遂げていないのに、「あなたならできる!」といった熱いメッセージを他者からもらっても、(一時のテンションは上がるかもしれませんが)本質的には変わりません。つまり、精神論では変わりません。
自己効力感の高める方法
自己効力感を高めるには、次の2つの方法があります。
自分のレベルの範疇で、「達成したこと」を積み上げる
「どうあるべきか?」ではなく、「自分のレベルにあってさえいればどんなことでも良いので、目の前に真剣に取り組み「できた」という達成経験を積み上げる
自分のいる環境を変える
モデルになりそうな人、自分を承認してくれる人がいる場所、もしくは、落ち着いて自分のことに取り組める環境に身を置くことが良いでしょう。社内など、身近にそうした人がいない場合は、転職などで環境を変えること。もしくは、社外コミュニティやオンラインサロン等を探すことも必要になります。
特に大切なのは「達成経験の積み上げ」です。「今の時代、未来は自分で切り開くしかない」と思うのであれば、尚更、まずは言い訳せず、目の前にあることにきちんと向き合い、達成経験を積み上げていくことが必要ではないでしょうか。
自信は、「人から持てと言われて」もしくは「自分で持とうと思って」、持てるものではないのですからー。