とある企業の営業部にAさんとBさんがいました。状況は真逆ですが、2人ともストレスをたくさん抱えていることは共通しています。
Aさんは、とても上昇志向が強いタイプ。仕事ができるC先輩や上司を見て、「自分もそうあろう」と常に努力するタイプで、その通りになっていない自分へのもどかしさからストレスが溜まっていました。
Bさんは上昇志向は強くないけど、何よりも周囲の評価が気になるタイプ。現状は、周りと比較してうまくいっておらず、ストレスを強く感じつつ、「自分より下には、Dさんがいるから大丈夫」と自分を慰めていました。
自分を他人と比較するのが人間
人間は、社会の中で協力して生きてる必要があるため、自分の立ち位置を知りたいと無意識に考え、人間は他人と自分との比較をする動物であり、それ自体は当然のことです。これを、社会的比較理論といいますが、
「比較する」に際して、Aさんのように、「あの人は、自分より○○が優れている」といったように、自分より上の存在と比較することを「上方比較」といいます。
反対に、Bさんのように、「あの人は、自分より○○が劣っている」といったように自分より下の存在と比較することを「下方比較」といいます。
上下のどちらを向く傾向があるかは、今の自分自身の現状や欲求が反映されます。だから、そのときの気分や状況によって、どちらもしてしまうのが人間です。
上方比較で疲れた場合と対処法
現状が安定し、気力がみなぎっている時は、上方比較に偏る傾向があります。
Aさんはまさにこの状況。仕事ができて、尊敬できるC先輩のようになろうと前向きに、努力をしていました。
しかし、正直なところ、C先輩の現状の仕事力を10点だとしたら、Aさんの現状は3点くらい。かなりの差がありました。そこに追いつき、追い越そうと頑張っていたのですが、あまりにギャップが大きく、その発揮するパフォーマンスの差に「なんて自分はできないんだ」と凹んでいる状態だったのです。
もちろん「今の自分はまだまだ甘い。先輩みたいになれるようにがんばろう」といった前向きな気持ちは素晴らしいことであり、成長ドライバーになるものです。
しかし、何事も精神論だけで乗り越えていけるというのは、現実的だとはいえません。結果は、行動の積み重ねで出すものです。
目標の粒を粗くする方法
そこで、Aさんのように上方比較で疲弊したら、「目標の粒を細かくする」という方法を勧めます。
Aさんは、「Cさんのようなビジネスパーソンを目指す」という漠然とした目標を立てていました。この漠然とした「粒が粗い」状況では、具体的に、何をどうしたら良いのかイメージしづらいので、行動につながりません。
それよりも、「Cさんと同レベルのヒアリング力を身につける」といったように、具体的にこの部分(=粒を細かく)と焦点を絞ることから初めてはいかがでしょうか。
そうすれば、その部分において、具体的に、どこをどういう風に変えられていけば良いのか? という打ち手が考えやくなるためです。
下方比較で疲れた場合と対処法
反対に、現状が安定せず、気力が落ちている時は、下方比較に偏る傾向があります。
Bさんのように、結果が出ていないときや、自分に自信がなくなっている時は、「Dさんは、自分よりも全然できていないのだから、自分はまだ大丈夫だ」といった後ろ向きな考えになりませんか?
人は、うまくいかない現状が続くと「どうせ自分なんて……」「(現実として、そういう場合もありますが)こんなことをさせる上司に問題がある」といったように「自己否定」や「責任転換」をしてしまいがちです。
気持ちを吐き出すことで、ストレスの解消になり、癒やしになる側面もありますから、それはそれで悪いことではありません。
ありのままを受け入れる
しかし、それ「だけ」では、状況は打開しませんから、ストレスはたまる一方になります。
こういった状況のときのコツは(愚痴は吐きつつも)「意図的に、ただ事実を見て、打ち手を考えるようにすること」です。
「現状では○○がうまくできていない」「現状では○○が、目標と現実との間にギャップがある」といったように私見を挟むことなく「ありのままの現状」として受け入れることから始め、その上で、どういう行動を取れば、その状況が解決できるのか? を建設的に考えることを意識して行うと効果的です。
「周囲の評価を全く気にする必要なはい」というのは現実的ではありませんが、気にし過ぎる必要はありません。
今の自分をありのままに受け入れながら、自分のペースで、自分の価値観に合った形で、成長していけると良いですね。