わかっていそうでイマイチわかっていない「ウェルビーイング」というキーワード。

「Well」(良い)+「Being」(状態)=「Well-being」(心身ともに満たされた状態)という意味で、私たちの暮らしや働き方にも良い意味で影響を与えるトレンドであることは間違いないらしい。

今回は、ここ数年でウェルビーイングサービスに急速に取り組んでいる住友生命の新規ビジネス企画部・渡辺翔さんに、ウェルビーイングに関する話をうかがった。

  • 住友生命 新規ビジネス企画部・渡辺翔さん

利用者の運動状況をポイント化するサービス「住友生命バイタリティ」

――まず、簡単な自己紹介と現在のお仕事などについて教えていただけますか?

住友生命の新規ビジネス企画部で働いている渡辺と申します。2010年に新卒入社し、東京で販売現場を転々としたり、札幌でバックオフィス業務などを担当していました。その後、これからは住友生命も保険以外のサービスも開発し、提供していこうという流れが強まり、2019年に新規ビジネス企画部が発足したことで異動を希望し、参加しました。

現在はお客様にウェルビーイングをお届けする新サービスを、オープンイノベーションで作っていこうと考えているところです。

――具体的にはどのような新サービスを展開しているのでしょう?

お客様の日々の運動状況をポイント化して、そのポイントに応じてお客様の保険料が変動する「住友生命バイタリティ」という、新商品を広くご案内しています。要は、たくさん頑張って運動して、ポイントが貯まると保険料が安くなっていくという健康増進型の保険商品ですね。

お客様にとっての健康は、身体的なものだけではありません。もちろん身体的な健康もウェルビーイングですし、そもそも生命保険自体が「万が一のときにお金を保障する」という経済的なウェルビーングな商品になりますが、私たちはもう少しウェルビーイングの幅を広げていきたいと考えているんです。

  • 資料提供:住友生命

――経済的ウェルビーイング以外の領域も、ということですね。

昭和の時代、保険は社会保障制度の一翼を担っていて、お亡くなりになったときの保障、もしくはご病気やお怪我をされたときの保障、介護になったときの保障、働けなくなったときの保障みたいな商品を打ち出してきてました。

それが平成になって、健康寿命も伸び、人々が豊かになったことを受け、今度は「住友生命バイタリティ」という、運動することで保険料が変動する仕組みを取り入れたプログラムを作り出しました。つまり、お客様に運動していただくことで健康になっていただく。結果、病気になる確率やお亡くなりになる確率が下がります。運動して保険料が下がればお客様もWin。保険金をお支払いする事例が減れば、住友生命もWinということで、非常にWin-Winな保険商品となっています。

――確かに、お互い良いことだらけですね。

バイタリティに入れば、その瞬間から保険料が15パーセント安くなり、その後も毎年の運動量に応じて、保険料が最大70パーセントまで安くなります。また、バイタリティプログラムにご加入いただくと、アディダスなどのパートナー企業の商品が割引価格でご購入いただけるなど、さまざまな特典もご用意しています。

運動の目標ポイントみたいなものも1週間ごとに設定していて、これをクリアすればハズレなしのルーレットを体験でき、スターバックスの500円チケットやローソンのコーヒーやスムージー、ファミリーマートのお茶などが無料でもらえる仕組みになっているんです。こうして楽しく運動を体験していただくことで、実際に死亡率や入院率の改善に効果的だというエビデンスも出ています。

――そういうエンタメ感もあると、運動もはかどりそうですね。

そうですね。この令和の時代は、経済的健康、身体的健康に加え、精神的健康や社会的健康も含めて、もっとひとりひとりのウェルビーイングに貢献できる会社に進化していこうと考えています。

私のいる新規ビジネス企画部は、まさに保険外のサービス、つまりウェルビーイングサービスを開発するのがミッションで、他にも美容や出生サポート、女性特有の健康問題、生活習慣病のなられた方の重症化を予防するサービス、メンタルヘルスに関するサービスなど、さまざまな新サービスに取り組もうとする部署になります。

  • 資料提供:住友生命

ウェルビーイングに注力したことでユーザー層も拡大!

――ウェルビーイングの視点で新たなビジネスを展開する中で、 何か今までとの違いや変化などは感じますか?

やっぱり最初は、「保険会社さんなのに、保険以外もやっているんだ」と驚かれることも多かったのですが、5年くらいかけて徐々に認知度は広がってきたと感じています。

ただ、世の中の誰もが知っているレベルのサービスはまだリリースできていませんし、まだまだ道半ば……いや、半ばにも立ってないかとは思っていますが、それでも少しずつ協業パートナー様たちとの良い出会いに恵まれたり、徐々にサービスを実装したりするなど、着実に変化できていると考えています。

――ウェルビーイングに関するビジネスならではのメリットなどはありますか?

いろんな観点があると思いますが、やはり一番大きいのは、これまでより多くのお客様と接点が持てるという点だと思います。住友生命の本業は、お客様のニーズに合った保険を提供することですから、従来はお客様に対して保険に関するご案内しかできませんでした。

しかし、ウェルビーイングを扱うようになったことで、もっと幅広いお客様に情報を提供できるようになりましたし、幅広いお客様のお役に立てるサービスを用意することができました。ウェルビーイングサービスを通じて、まずはお客様の喫緊の課題の解消に役立ち、その後も末永くお付き合いができればと考えています。

  • 資料提供:住友生命

――今後の課題などがあれば教えてください。

各領域によって進捗状況にかなりバラつきがあって、すでにサービスが実装されている領域もあれば、まだ検討も始まっていないような領域もあるのが実情です。もちろん優先順位は必要ですが、濃淡をできるだけ減らしていかないと、せっかく協業しているパートナーさんから新たなプロジェクトについてお声がけいただいたのに、当社側の準備ができていないというケースもあったりするので、そのあたりの解決は喫緊の課題だと言えますね。

――ちなみに、直近で実装が決定している領域や取り組みなどはあるんですか?

女性特有の健康課題を解決するサービスについて、まさにウィメンズ漢方さんたちと協業しながら、世の中に出していく最終調整を今行っている状況ですね。これは薬剤師さんのような専門家が、お客様ひとりひとりの体質を見極めて、パーソナライズさせた最適な生活スタイルを提案しながら、その習慣化に向けて伴走するサービスを予定しています。

あとは企業従業員様向けのサービスとして、メンタルダウンを予防するメンタルヘルスサービスも実装に向け、最終的な検証を行っているところです。これは2週間に一度、全7問のメンタル診断を受けていただくことで、利用者の心の状態が
「安全」「注意」「警告」という3段階で表示され、この心の変化を追うことでストレスの悪化を防いでいこうというサービスになります。

住友生命社内の「バイタリティ休暇」とは?

――ちなみに、住友生命社内のウェルビーイングに関する社員サービスなどはありますか?

「バイタリティ休暇」といって、要は「お客様に『健康増進しましょうね』と言っているんだから、当然、従業員のみんなも健康を増進しましょう」という意味合いで、それ用の有給休暇が年4日分付与されています。この有給は「よかったら利用してね」という任意的なものではなく、「必ず使ってね」という類のものなので、みんな必ず利用していますね。

――それは嬉しい制度ですね!

住友生命バイタリティを提供することになってから、従業員の意識はかなり変わってきた気がします。やはり生命保険の会社なので、以前はバチッとスーツを着て、バチッと革靴を履くのが当たり前でしたが、今はスニーカー通勤が完全に浸透しました。

その影響もあって、例えば「この日はみんなで懇親会しましょう」という話になった場合、わざと会社から徒歩15〜20分くらい離れたところにお店を予約して、そこまでみんなで歩いていくということがすっかり定着しました。

――社員の皆さんの意識もウェルビーイングに変わっていっているんですね。それでは最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします!

我々は本当に幅広い領域でウェルビーイングについて考えてますし、お客様がウェルビーイングに生活を置く輝サービスを提供し続けたいという思いがあるので、ぜひみなさまからのご意見やお話もお聞かせいただけると嬉しいなと思います。今後もいろんな場に出てこういった発信をしていきたいと思っていますし、いろんな方々とのご縁をお待ちしております。本日はありがとうございました!


従来の経済的な健康、身体的な健康だけでなく、精神的な健康や社会的な健康までフォローの幅を広げた住友生命。「人生100年時代」とも言われる令和の今、保険の世界も「ウェルビーイング」なサービスへと進化しようとしているようだ。