6回目となる今回は、DAY2より大黒摩季、鈴木愛理、鈴木雅之(五十音順・敬称略)をご紹介。
活動のメインフィールドがアニメ主題歌ではない大物アーティストについて、改めてそれぞれの魅力やアニサマのステージに立つ意義などとともに楽曲をご紹介していきたい。
【大黒摩季】20年以上愛され続けるあの名曲、深堀りすると実は……?
筆者のような30代にはあまりにもド真ん中すぎる大物アーティストの出場発表に、驚いたアニソンファンも少なくなかったのではないだろうか。アニソン以外の楽曲も含めて、彼女の歌を多感な時期に耳にし、様々な思い出を持つ人も多いことだろう。
近年もTVアニメ『名探偵コナン』のOPを担当した彼女は、とりわけメガヒットを連発していた1990年代中盤にも数曲アニメタイアップの楽曲をリリースしていた。一定の世代には懐かしさをもって、そして若い世代には一周回って、新鮮さをもって“発見”されるような感覚で受け入れられたことだろう。
☆この曲を聴け!……「あなただけ見つめてる」(TVアニメ『SLAM DUNK』EDテーマ)
今聴き返すと、いろいろな意味で”時代”を感じる曲だなぁと思う。イントロ序盤のオーケストラヒットや「ポケベル」という言葉といった年代的なもの。そしてリリース当時の、世の中でのアニソンの取り扱われ方という意味での時代性だ。
近年とは違いこの曲の発表された’90年代中盤頃まで、TVアニメのOP/EDは”タイアップ”として扱われるものが非常に多かった。この曲も実は女性を主人公としたラブソングであり、そのうえバスケ作品のEDにもかかわらず登場するスポーツが”サッカー”でさえある。
誤解と失礼のないように重ねて明言しておきたいが、この曲や彼女だけがそうだったわけではない。当時はむしろ、そういった扱いが主流だったのである。
そんなこの曲を『SLAM DUNK』のEDとして成立させ、今でもカラオケで歌われ続けるなど根強い人気を誇る曲にしたのは、ひとえに大黒摩季の歌声のもつパワーや熱さに他ならないと筆者は考える。
歌詞をもう少々深堀りしよう。描かれているのは、彼氏にひどく依存し執着している女性像だ。これをかわいげや清涼感の強いボーカルで歌われると、ただただ縋りつくようで、受け手としては怖さが強く立つ。しかし実際この曲は、持ち前のパワフルなボーカルでガンッ!と歌われていく。それは前述した歌詞だけから受ける印象をひっくり返し、ある種の前向きさや、”自立”さえも感じさせるかもしれないものへと変貌させるのだ。
そしてそれほどまでに強烈なパワーをもった歌声は、間違いなくライブでオーディエンスの心を直に揺さぶる。たとえ約2万8千人が相手になったとしても、熱狂の渦に巻き込んでくれるだろう。
余談だが、昨年のアニサマで鈴木雅之が自身初のアニソン「ラブ・ドラマティック」以外も歌唱していたことを踏まえて、アニメタイアップ以外に「熱くなれ」も合わせて推したい。
タイトル通り、アグレッシブな楽曲に「あなただけ見つめてる」以上のパワーと情熱をふんだんに叩き込んだナンバーだが、この曲はNHKのアトランタオリンピック中継のテーマ曲。もちろん今年は(そして来年も)オリンピックイヤー。そしてさいたまスーパーアリーナという会場も踏まえると……この2曲の披露を、どうしても期待してしまう。
何より、真夏に大黒摩季の歌声は、やっぱり似合いすぎる。
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【鈴木愛理・鈴木雅之】ファンキーなラブソング、お相手が替わったことによる変化とは……?
鈴木愛理は、2017年まで活動していたアイドルグループ・℃-uteの元メンバー。解散後はソロシンガーとしても活発な活動を行なっている。実は彼女、所属するグループがアニメ主題歌を担当することも多く、特に3人組アイドルグループ・Buono!結成のきっかけとなったTVアニメ『しゅごキャラ!』ではOP・EDテーマを合わせて10曲以上担当。
作中のキーワードや主人公・日奈森あむを想起させるフレーズも織り込んだ主題歌を次々と生み出していった。
一方、鈴木雅之は、歌手生活40周年を目前にした2019年初頭に初めてアニソンを歌唱した、自称”アニソン界の大型新人”。その「ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花」は長年培ってきた”鈴木雅之らしさ”を曲げないファンクでありながらアニメにも寄り添い、作品への導入としてパーフェクトな”OP主題歌”だった。
また、昨年アニサマ初出場を果たした際には、スフィアを従えて「め組のひと」など彼が所属するラッツ&スターの楽曲も歌唱。あくまで”大型新人”としてアニソンシーンへの敬意も持ち合わせながら、”異ジャンル交流”というフェスの醍醐味も味わわせてオーディエンスを魅了していった。だからこそこの夏の、2年連続のアニサマでのパフォーマンスが、楽しみで仕方なかった。
この曲を聴け!……鈴木雅之「DADDY! DADDY! DO! feat. 鈴木愛理」(TVアニメ『かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~』OPテーマ)
本編が始まってしまえば雰囲気的には割とガチャガチャしたシーンも散見されるラブコメ作品ではあるが、秀知院学園の内装のシックさや赤絨毯の敷き詰められた生徒会室など、画面の色合い的には落ち着いているのが『かぐや様は告らせたい』。
そんな本編やOP映像の雰囲気にマッチしていた1期OPテーマの雰囲気を引き継ぎつつ、サウンド的には少々明るさを増したような印象を受ける。これは(多少は)進展した四宮かぐやと白銀御行の恋模様や、その熱を反映しての若干のテンポアップが大きな要因であろう。
それを裏付けるように歌詞も、駆け引きが主要素だった前作に比べれば、まっすぐに恋心を歌うものになっている。
そして前作とのもうひとつの違いは、鈴木雅之のフィーチャリング相手。前作「ラブ・ドラマティック」での相手を務めた伊原六花の歌声はスーッと抜けるようなものであったが、それは特にストーリー初期のかぐやの佇まいを彷彿とさせるものであり、1期のOPとしてはズバリだったように思う。一方で、鈴木愛理のボーカルはそこにさらに色気を乗せて本線と絡み合うようなものに。
これもまた前述のような関係性の進展を反映した選択であり、歌声の面からもアニメと寄り添っていくもの。そういったエッセンスを汲み取り形にした、作詞曲を担当した水野良樹や編曲・プロデュースを手掛けた本間昭光の力もあって、”アニソン界の大型新人”はその看板通りに2作連続でしっかりと作品に沿う”主題歌”を届けてくれたのだ。
DメロのクラップでSSA中がひとつになる光景、来年実際目にできることを願うばかりである。
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テーマとして”大物アーティスト”というわかりやすいくくり方をしたが、フェスの出演者はトップバッターから大トリまでバトンを繋いでいくという意味では、みな平等であると筆者は考える。
だがバトンを繋ぐなかで、積み上げてきた経験も活かしつつ、アニソンフェスやアニソンシーンのライブとは異なるやり方も織り交ぜてオーディエンスを新鮮なアングルから盛り上げてくれることも事実。来年のステージではどんなアプローチがみられるのか、本当に楽しみだ。
さて、次回は鬼頭明里、鈴木愛奈、halca(五十音順・敬称略)をピックアップ。ソロとしてはいずれも初のアニサマのステージに登場する3人のもつ、アニサマまで駆け上がった”勢い”も含めてご紹介していきたい。どうぞ、お楽しみに!
●著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける
Twitter:@sunaken
記事内イラスト担当:jimao
まいにち勉強中。イラストのお仕事随時募集しております。Twitter→@jimaojisan12