2021年への開催延期が発表された「Animelo Summer Live 2020 -COLORS-」。そこへの出場が発表されていたアーティストについて、今聴いてほしい楽曲のレビューとともにご紹介し、一緒に”予習”をしていこう! というこの企画。
4回目となる今回は、DAY1よりASCA、スキマスイッチ、西川貴教の3組をご紹介。初出場となるASCAとスキマスイッチに6年ぶりの出場となる西川貴教、それぞれアングルは違えど、いずれもアニソンファンからアニサマへの出場を”待望”されたアーティストだった。
【ASCA】ソリッドな歌声だけでなく、情感を込めた柔らかな歌唱表現にも要注目!
2017年にソロプロジェクト"ASCA"としての1stシングル「KOE」をリリース後、シャープな歌声を武器に数々のTVアニメの主題歌を担当。昨年11月には待望の1stフルアルバム『百歌繚乱』をリリースし、今春には西川貴教とコラボした「天秤-Libra-」(TVアニメ『白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE』OPテーマ)を発表。力強い歌声で西川と堂々と渡り合っている。
まさに脂の乗り切った今だからこそアニサマで聴きたいシンガーであり、この経験を糧にさらなる成長も期待したいという意味で、アニソンシーンにとっても大舞台への登場に"待望"感のあるシンガーだと言っていいだろう。
☆この曲を聴け!……「雲雀」(TVアニメ『ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-』EDテーマ)
「まず『天秤-Libra-』は歌うだろう」という大前提のもと、「もう1曲ソロで歌うとしたら?」といった観点から選んだのがこの曲。前述の「KOE」や昨年リリースした「RESISTER」など、楽曲のスピード感と好相性のソリッドな歌声を発揮できる曲ももちろん聴いてほしいのだが、それらとは異なる魅力を感じられる曲として「雲雀」を推したい。
その「雲雀」は、EDに起用された『ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-』の主要人物・グレイの目線を投影したミドルバラード。 ASCAにとって、アニメ主題歌としては初挑戦となるジャンルだ。楽曲制作を手掛けたのは、OPや劇伴も担当する梶浦由記。全体としては切なさをはらみながらも最後には温かく閉じていき、その中にはわずかに"哀しみ"も感じられるが、いたずらにフィーチャーされすぎることなく"切なさ"との境界レベルでうまく留められている。
その"哀しみ"は、ASCAの歌声からもほのかに感じられるもの。サビの高音部における、彼女の声質からくる微かにかすれた歌声が、ひとつまみのスパイスのようにほんのわずかな哀しみをこの曲に与えている。その一方で、楽曲の雰囲気に沿い、丁寧に世界観を増幅させてリスナーに届けてくれている点もポイント。
ひと言ひと言を大事にしてはっきり伝えつつ、無機質にはならずに情感をふんだんに込めて柔らかく歌い上げる。わかりやすいアグレッシブさのようなものはない曲だが、彼女の確かな歌唱力が随所に光る、聴き応え十分な楽曲なのだ。
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【スキマスイッチ】実は多数のアニソンを手掛ける彼らが手掛けた、ファンキーでスリリングなイチオシ曲
実は「ボクノート」(劇場版『ドラえもん のび太の恐竜2006』主題歌)や「Ah Yeah!!」(TVアニメ『ハイキュー!!』OPテーマ)など、アニメ主題歌も数多く担当しているスキマスイッチ。
そんな彼らのアニサマ出場は、間違いなく"待望"されていたことのひとつだっただろう。加えて、近年J-POPなどで活躍する大物アーティストの出演が増えるなかで、自身のターニングポイントだと公言した氷川きよしをはじめアニサマを好きになっていくアーティストも多い。なので、ステージ上で果たされるであろうアニソンファンとの心の距離の接近、これもまた"待望"された出来事だったはずだ。
☆この曲を聴け!……「ゴールデンタイムラバー」(TVアニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』OPテーマ)
みなさんは"スキマスイッチの楽曲"に、どんなイメージをお持ちだろうか。数多く発表してきた珠玉のバラードや、爽やかで前向きなアッパーチューンが思い浮かぶ方も少なくないとは思うのだが、この曲はそのいずれとも違うオトナなカッコよささえ感じられるもの。
イントロのパーカッションに乗るメロウなエレピは"夜"を想起させ、そこに重なるシンセやギターの音色に、続く大橋卓弥(Vo.)の歌声はいずれも実にファンキー。歌い出しからいきなり、ぐっと惹きつけられる。
この曲は、制作スタート時点での元々のテーマは麻雀。TVサイズには含まれない2番での"ロンよりショウコなんだ"といったフレーズなどにその名残を感じることができるのだが、その要素が実はプラスに作用している。ピンと張り詰めた空気のなか一手一手に勝敗のかかるスリリングさは、『ハガレン』のストーリーのテンション感にも通ずる部分があるのではないだろうか。さらに歌詞にも、直接的に作品と結びつく言葉やサウンド同様のスリリングさを織り込むことで、作品の顔となるOPを飾るにふさわしい楽曲が誕生した。
またこの曲、ライブ映えも間違いない曲。暗めのライティングのなかギターがかき鳴らされ、徐々に高まっていくライブ会場の空気……想像するだけで、たまらなく最高じゃないか! そんな光景が現実のものになるアニソンファンと彼らが出会う機会は、来年の夏にはきっと来るはずだ。
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【西川貴教】剥いた”歌声の牙”がリスナーに突き刺さる、ソロ名義の初シングル曲を聴け!
彼にとっては2014年以来・6年ぶり3度目出場となるアニサマだが、"西川貴教"としての出場は今年が初。この6年の間に彼は個人名義はもちろんのこと、コラボなども通じて様々なアニメや特撮作品と近い距離で活動してきた。
また、2015年からは志倉千代丸とタッグを組み、イケメンアイドルプロジェクト・B-PROJECTの総合プロデュースも担当。二度にわたってTVアニメ化も果たした作品のスタッフとしても活動し、さらにアニメや関連コンテンツとの距離を縮めての出場は、「待ってました!」以外の何物でもない。
☆この曲を聴け!……「Bright Burning Shout」(TVアニメ『Fate/EXTRA Last Encore』OPテーマ)
歌声の前に、まずはそもそもの楽曲自体の素晴らしさについて語らせてほしい。歌詞を手掛けたのは、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)。近年数多くのアニソンを手掛けてきた彼は、独特な語感をもって生み出した歌詞や気持ちよすぎるコールを乗せた楽曲が厚い支持を受けてきた。
この曲はそんな彼の作にしては、作品の世界観を直球気味に表現する言葉が主となっている。だが、それでいてカギカッコ付きのセリフのような記述からはじまる部分などに田淵節も残し、口語的な"らしさ"も残したバランスのよい仕上がりとしている。
歌詞にそういった方向性を与えたのは、神前暁によるサウンドの力も大きいだろう。彼が生み出したのは、ストリングスを従えシリアスさを前面に張った、雄々しく重いダークなロックチューン。その一方で、サビは終盤にて光が差し込む光景を想起させて結ばれるもの。ここに、サウンドの面からの物語に対する"救い"を詰め込んだのだろうか。
特に1番や大サビでの、サビが一旦締まってからの開放感を生む後半部分のコード展開はたまらなく気持ちよく、曲自体・サビの聴後感をより一層高め、ついつい「また聴きたい!」と思わせる。
そんな楽曲を表現する西川の歌声のこの曲における特徴であり、長所として特に活きているポイントは、曲が盛り上がるにつれて"吠える"といった形容がピッタリくるような点。内面での心の動きが中心となる序盤においてはそこまでの力は込めず、中盤以降のサウンドの盛り上がりや歌詞における想いの開放に合わせて荒々しさを増していく歌声。それが、彼の声質も相まって、鋭い牙で吠えて噛み付いてくるかのよう。
しかも高すぎない音域だからこそ、より重量感を伴った力強さとして響き、リスナーの胸へと突き刺さる。その衝撃、まだ味わったことのない方は、ぜひ感じてほしい。
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3組それぞれが特別な”待望”感をもって歓迎されていた、今年の「アニサマ」出場。この夏のSSAで生で観られないのは非常に残念だが、1年間溜めに溜めた想いが2021年の夏に結実することを今は願いつつ、3組がこれまで生んできた素晴らしい楽曲に触れて待ちたいものだ。
さて、次回は大橋彩香、富田美憂(五十音順・敬称略)をピックアップ。いずれもDAY1の出場が決まっていたソロ声優アーティストだが、かたや常連かたや初出場。そんなふたりの楽曲で、今聴くべきものとは? どうぞ、お楽しみに!
●著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける
Twitter:@sunaken
記事内イラスト担当:jimao
まいにち勉強中。イラストのお仕事随時募集しております。Twitter→@jimaojisan12