今回は、TVアニメ『五等分の花嫁∬』のOP/EDテーマを収録した主題歌CD「五等分のカタチ/はつこい」を紹介。2期にあたる今回は、OP・EDともにメインヒロインである中野家の五つ子(花澤香菜・竹達彩奈・伊藤美来・佐倉綾音・水瀬いのり)が歌唱を担当。異なる曲調の2曲を通じて、五つ子全員の魅力がさらに引き立つ1枚となっている。
●イヤホン・ヘッドホン必須曲! 五つ子の変化と成長を描いたOP「五等分のカタチ」
まずOPテーマ「五等分のカタチ」は、1期OP「五等分の気持ち」を踏襲する形で五つ子それぞれのセリフからスタート。だがそれは1期とは違って主人公・風太郎に勉強の教えを乞うものであり、彼との関係性の変化に伴って勉強にも前向きになったという内面の変化を描写したもの。”らしさ”を踏襲しながら、五つ子の成長を冒頭に提示するポイントである。
加えて、サウンドも恋愛面の進展も感じさせてくれるものに。ぱたぱた感の強かった1期OPに比べて、今回は木漏れ日差し込むような爽やかさのある、どこかキュンとくる要素強めの楽曲。よりラブコメ作品における”ラブ”の部分が強まったように感じられるのだ。
また、この5人ならではの要素として特筆すべきは、Bメロ後半。一花から五月まで順に「好きの」のフレーズを歌っていく部分は、徐々に左から右へと声の聴こえるポジションが変化(※イヤホンやヘッドホンで御確認いただきたい)。
これは目の前で5人が並び、風太郎に――曲を聴いている間はリスナーである”自分”に――想いを順に伝えている光景が音のみで描写されたもの。そのうえで大サビ終盤に待ち構えている「最後の答えはねキミって言いたい」のフレーズが、非常にズルい。”答えを教わる側”から、”自分の気持ちを「答え」として伝える側”への変化を再認識させられることで、ラストにもう一度ハートを持っていかれること請け合いである。
もちろん各々のソロフレーズでの個性の立ち方も良好。これは五つ子を表現する5人の力量あればこそのものであり、その力もあってキャッチーさと各々の個性の両取りを成功させた、作品の看板らしい楽曲が完成をみた。
●五者五様の恋模様が描かれた、より個性際立つED「はつこい」
そして、同時収録されたEDテーマ「はつこい」は、5人が歌うバラード。作品自体の看板となるOPに対し、こちらはソロパートを中心に、五つ子の個性や放送中のエピソードになぞらえた内面をより強く感じられるのがポイントだ。
冒頭を穏やかに歌い始めてどこか余裕があるように見せつつ、2-Bメロの温かさで風太郎への想いがにじむ一花。1-Aメロの声に若干の震えを残した部分から、シリーズ前半における心の動きと恐る恐る変化へと踏み出す姿を想起させる二乃。”5人平等”という自身が心に作った枷から抜け出して、風太郎への想いに正直になった姿を想像させるように、温かくまっすぐに歌う三玖。
少し離れた音階に飛ぶ際に勢い余って若干はみだしつつも思い切り外れはせず、持ち前のあふれんばかりの元気さを感じさせる四葉。基本マジメな性格を反映して正統派に歌い上げる一方で、2-Aの後半では表に出かけた想いを引っ込めるかのように引いて歌う五月。短い各ソロフレーズでそれぞれの姿が明確に目に浮かぶ歌唱表現に、改めて拍手を送りたい。
また、パート割にもグッとくるポイントが。1番では一花から五月まで順番にソロを執っているのだが、2番ではそれをそのまま逆順にはせずBメロが三玖→一花→二乃の順に。これも、想いを胸に秘めつつ「可笑しいくらい いっぱいなの」と一花が歌い、猪突猛進な部分もある二乃が「ブレーキなんてもう無い」と続くことで、キャラクター性を優先したもの。形式的に順番をただなぞるのではなく、よりファンが感情移入する並びを選択している部分だ。
加えて5人がユニゾンするサビも、1サビから大サビへと進むにつれて、想いの芽生えから膨らみを描写。5人それぞれの形の”はつこい”と成長を同時に描き、エピソードの最後に改めて視聴者をキュンとさせる、良作が誕生した。
延々と聴き続けていられそうなほど満足度の高い主題歌2曲を発表してくれた五つ子だが、実は彼女たちは、これからリリースラッシュを迎える。
本作リリースの2週間後・3月3日には昨年に引き続きキャラソンミニアルバムが、さらにその3週間後・3月24日にはゲーム『五等分の花嫁∬ ~夏の思い出も五等分~』の主題歌CD「みなみかぜ/サマーデイズ」も発売。そちらでは五つ子のどんな表情を感じることができるのだろうか。放送も折り返したアニメを追いかけるのと同時にこちらの登場にも期待し、五つ子に振り回されつつそれぞれの良さを感じていようではないか。
●商品情報
TVアニメ『五等分の花嫁∬』OP&EDテーマ「五等分のカタチ/はつこい」
歌:中野家の五つ子(花澤香菜・竹達彩奈・伊藤美来・佐倉綾音・水瀬いのり)
M1:五等分のカタチ
M2:はつこい
M3:五等分のカタチ TVサイズ
M4:はつこい TVサイズ
M5:五等分のカタチ インストゥルメンタル
M6:はつこい インストゥルメンタル
●著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける
Twitter:@sunaken
記事内イラスト担当:jimao
まいにち勉強中。イラストのお仕事随時募集しております。Twitter→@jimaojisan12
(C)春場ねぎ・講談社/「五等分の花嫁∬」製作委員会