今回紹介するのは、3月6日発売の「『五等分の花嫁』キャラクターソング・ミニアルバム」。

『五等分の花嫁』は、貧乏生活を送る高校生・上杉風太郎が、落第寸前で勉強嫌いの同級生・中野家の五つ子の家庭教師を務めることをきっかけに、それぞれの信頼を勝ち得るところから始まるラブコメ作品。現在TVアニメが放送中。本作はそのヒロインである中野家の五つ子それぞれが歌うソロ曲を収録しており、どの曲も個性の強い彼女たちの魅力を切り取った、ジャンルかぶりのない1枚に仕上がっている。

そんな本作の収録曲を、ここから1曲ずつ細かく掘り下げていきたい。

●中野一花(CV:花澤香菜)「Hello, dear my dream~一秒後には~」
中野一花というキャラクターと彼女を演じる花澤香菜との、両方の魅力が生きる絶妙なバランスに落とし込まれた奇跡的な1曲。曲中幾度も登場するコーラス部分は花澤の持ち味であるふわっとした歌声を活かす非常に聴き心地の良いものだし、ショーやブロードウェイを連想させるサウンドも、花澤個人での音楽活動とも結びつく。そしてその“ショー”を想起させる要素は、女優という一花の夢とも繋がるもの。駆け出しながらも、今取り組んでいる女優業の楽しさや、それに伴うあふれるわくわくやきらめきを感じさせる歌声なのだ。それでいて甘くなりすぎないように一花としての声域をうまく守っているのが、花澤の巧いところである。そして2コーラス目には、少しずつ風太郎の存在が歌詞にも見え隠れ。ここまでの作中における、彼女の心の動きをしっかりなぞったつくりと言えるだろう。

●中野二乃(CV:竹達彩奈)「アイツとキミ~二度とない運命~」
当初もっとも風太郎へ悪感情を持っていた二乃らしく、セリフもバックに交えながら、序盤はメロディをはみ出るほどにツンケンして歌われていくドタバタ感のあるロック。しかしサビはただ単にそれを通すだけではなく、中盤に歌声が一瞬緩まって何やら気になっているような素振りも見せつつ、でも最後にその感情を否定するかのようにもう一度強く出す……といった表現が可能なのが、竹達の巧みさ。一方、歌の対象が一目惚れした金髪の風太郎(通称:キンタロー)へと変わる2コーラス目では、二乃らしさから逸脱せずに歌声に乙女さを上乗せ。続くBメロに織り込まれた今後の展開や、Dメロで何かを暗示する“夢”などを踏まえると、5曲の中でいちばんストーリーを忠実になぞっている曲と捉えられるのだ。なのでこの曲は、リリース直後はもちろん先々の展開を踏まえてから改めて触れ直せば、感覚の違いも楽しめるはず。

●中野三玖(CV:伊藤美来)「Lovely music~三週間前までは白かった~」
日本史をきっかけに風太郎、いやフータローと打ち解け、早い段階から彼への恋心を抱いた三玖の楽曲は、ストリングスとアコースティックギターがメインに来る爽やかなポップナンバー。無口でクールな彼女らしく力押しはせずに、ファルセットを効果的に用いつつ歌っていくのだが、伊藤の声質とのマッチングや声の出し方もあって、全体を通して非常に聴き心地が良好だ。また、比較的心の動きが表に出やすい三玖の表情が想像しやすい点も、この曲の魅力のひとつ。本編でフータローにタイプを尋ねたエピソードを織り込み、それだけに留めず後に述懐して赤面している姿が想像できたり、2コーラス目ではっきりと嫉妬していたりと、いじらしさをもってストーリーの“余白”を絶妙に埋めてくれている。ラストには、内側に好意を閉じ込めていたような“My Music”が変化してヘッドフォンから流れ始めるのだが……どう変わったのかは、ぜひその耳で確かめていただきたい。

●中野四葉(CV:佐倉綾音)「ハートのカタチ~四つ葉のClover~」
普段から快活な四葉によく似合う、跳ねるようなリズムのポップナンバー。歌声がメロディをちょっとはみ出しちゃっても気にせずに弾けるように歌っている点も、ボーカルから四葉らしさを感じられるポイントだ。そんな“中野四葉”のパブリックイメージそのままのように聴こえるこの曲は、実は彼女の内面を順序立てて丁寧に掘り下げた1曲。1コーラス目ではサウンド同様“中野四葉像”を提示しつつも、2コーラス目からはまわりのために隠していた彼女の内面が少しずつ見えてくるし、後半になればなるほど風太郎へのほのかで爽やかな恋心も顔を出してくる。そんな、よりいっそう彼女のかわいらしさを感じることのできる、四葉らしい明るく爽やかなポップナンバーに仕上がっているのがこの曲なのだ。

●中野五月(CV:水瀬いのり)「素直にOpen heart ~五つ数えて~」
これは、“五月を好きになるための曲”だ――最悪だった出会いから風太郎に徐々に心を開いていくプロセスを丁寧に、五月からの目線で描くこの曲は、意地を張りがちな性格も反映してスカ風味のアッパーチューン。彼女の普段の口調を反映してか、5曲中この曲だけ丁寧語が貫かれているのも特徴で、それがより強く「歌詞=彼女自身の言葉」のように感じさせてくれる。だから彼女の意地の理由がわかる1サビや、その殻の内側の想いが見える2サビに触れれば、強気がすぎて悪印象を持っている人がいたとしても、それを一気にひっくり返せるようなナンバーになっているのだ。サウンド的には前述のようにスピード感のある楽曲で、五月の声質が水瀬の地声よりも若干低め・太めである事も手伝ってか、アグレッシブなナンバーを爽快感と力強さとの両方を併せ持つ歌声で彩ることに成功している。

[まとめのひと言]
推しのヒロインに惚れ直すもよし
推し増しするもよし
本作を聴いたうえでアニメ放送の終盤を迎えれば、よりドキドキ・キュンキュンしながら楽しめるはず!

  • 「『五等分の花嫁』キャラクターソング・ミニアルバム」

●商品情報
『五等分の花嫁』キャラクターソング・ミニアルバム
発売日:3月6日
価格:2,000円(税抜)
・収録内容
01.Hello, dear my dream ~一秒後には~
歌:中野一花(CV:花澤香菜)
02.アイツとキミ~二度とない運命~
歌:中野二乃(CV:竹達彩奈)
03.Lovely music ~三週間前までは白かった~
歌:中野三玖(CV:伊藤美来)
04.ハートのカタチ~四つ葉のClover~
歌:中野四葉(CV:佐倉綾音)
05.素直にOpen heart ~五つ数えて~
歌:中野五月(CV:水瀬いのり)
06.Hello, dear my dream ~一秒後には~(Instrumental)
07.アイツとキミ~二度とない運命~(Instrumental)
08.Lovely music ~三週間前までは白かった~(Instrumental)
09.ハートのカタチ~四つ葉のClover~(Instrumental)
10.素直にOpen heart ~五つ数えて~(Instrumental)

5月5日東京・有楽町・よみうりホールにて「五等分の花嫁 スペシャル・イベント」開催決定
3月20日発売のBD&DVDに申込券封入
応募期間:3月26日23:59
詳しくは公式サイトにて

●著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける
Twitter:@sunaken

記事内イラスト担当:jimao
まいにち勉強中。イラストのお仕事随時募集しております。Twitter→@jimaojisan12

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