14回目となる今回は、雨宮天、仲村宗悟、森口博子(五十音順・敬称略)を紹介。仲村はソロでの初「アニサマ」であり、雨宮と森口は過去にソロでの出場経験はあるもののいずれもサプライズでの出場。事前に出場者としてラインナップされるのは今回が初となる。そんな立ち位置だからこそ改めて歌ってほしい曲を、今回はチョイス。ぜひ一緒に楽曲を聴いて、”予習”していただきたい。
【雨宮天】経験を積んだ今だからこそ生で聴きたい、彼女の良さが引き出されまくったデビュー曲、
2014年の春にTVアニメ『一週間フレンズ。』で初のヒロインを担当すると、同年7月にはアーティストとしてもソロデビュー。涼やかな声質を活かしてシャープなロックや情感深いバラードなど幅広い楽曲を歌唱。かと思えば2020年には自身がヒロインとして出演する作品のOPテーマ「PARADOX」で表題曲としては初めてキュートさに全振りした楽曲も発表したり、ジャジーな4thシングル「irodori」のリリースをきっかけに"リサイタル"と称するスタイルの公演も開催したりと、さらなる挑戦を続けている。
「アニサマ」には声優ユニット・TrySailとしては2015年以来出場を続けているが、ソロでは2018年にサプライズで1曲歌唱したのみ。その他各種ユニットとしてもアニサマのステージを踏んだ経験を活かしたソロでの大舞台、来年はどう彩ってくれるのか、今から楽しみで仕方がない。
☆この曲を聴け!……「Skyreach」(TVアニメ『アカメが斬る!』OPテーマ)
約6年前にソロデビュー曲としてリリースされた、ストレートかつハードなロックチューン。イントロの切り裂くようなエレキギターをはじめ、メインキャラの間でも容赦なく命のやり取りが繰り広げられるというシビアな物語にマッチする、ヒリつく雰囲気やシリアスさを兼ね備えた楽曲だ。
雨宮の歌声も、シャープでありながらサウンドに力負けしないパワーも前面に出したもの。序盤の歌声は比較的整理されたものでありつつも、疾走感ある楽曲に決して置いていかれることはなく、サビに入ると同時にアクセル全開。ちょっとはみ出すような荒っぽさを端々に感じさせるボーカルワークも、楽曲とアニメの双方にマッチする。
そのうえで、デビューを飾る楽曲らしさもしっかりと踏まえられているのがこの曲。前述したサビの冒頭で受ける一気に世界が開けていくような感覚は、デビュー後に彼女を待つ、無限大に広がる表現の世界を想起させるよう。加えてサウンドのもつ疾走感は、そこへと向かって駆け出していく彼女の姿も想像させてくれるものだ。
そんな、デビュー曲にして自身にも主題歌として起用された作品にもハマる楽曲だったからこそ、それから6年経った今の「Skyreach」が聴きたくなるというもの。それも自身のワンマンではなく、アニサマという彼女の熱烈なファン以外もオーディエンスに含む、ビッグフェスで。彼女が満員のSSAに叩きつけてくれる、2020年の「Skyreach」――想像するだけ絵でワクワクとゾクゾクが止まらない。
今年はそんな姿を見ることは叶わなかったが、来年こそはぜひ、7年間磨き上げた「Skyreach」を体感できると信じて。
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【仲村宗悟】大舞台で聴いて喜びを分かち合いたいのは、念願叶えたあの曲
2015年、『アイドルマスター SideM』の天道輝役で声優としてデビューし、一躍脚光を浴びた男性声優。元々はミュージシャンを志したことがきっかけで上京してきた彼は、その後もアニメや吹き替えなど活躍の場を広げ、2019年についに念願のソロデビューを果たした。
アーティスト活動のなかでは、高校時代にバンドのギターとボーカルを担当していたという過去の経験も活かし、これまでリリースしたシングル2枚にはいずれも自ら作詞・作曲を手掛けた楽曲も収録。彼の人間性ともリンクする、内側からスッと素直に湧き出てきたような、爽やかでポジティブなナンバーが顔を揃えている。
ちなみに「アニサマ」には、前述の『アイドルマスター SideM』を通じて2017年から3年連続で出場。その経験も活かしてソロとして大舞台に立つ大きな夢を叶える姿、来年こそはきっと現実になるはずだ。
☆この曲を聴け!……「Here comes The SUN」(TVアニメ『厨病激発ボーイ』EDテーマ)
仲村のアーティストデビュー作にあたるこの曲は、自身も出演した作品のEDを飾るミドルポップ。イントロで一旦完結してAメロでリスタートするような形ではなく、イントロで爪弾かれたアコースティックギターの音色に、自然と歌声を重ねていくような面白い構成の楽曲だ。そのアコギは、間奏を中心に楽曲注意たるところで存在感を発揮。
あれこれ詰め込まれすぎずに軽快ささえ感じるサウンドと相まって、楽曲の爽やかさをさらに増幅。ジャケット通り、空と陽射しが非常によく似合う楽曲に仕上がった。
それはサウンドのみならず、仲村の歌声も同じ。カラッと晴れた青空のように、前向きさや行動力といった部分で彼に強く結びつく言葉をとにかく明るく響かせていく。その生き生きとした歌声は、”歌える楽しさ”が詰まったもの。それがアニメのEDでありながら彼の長年の”夢”もほのめかすような楽曲と絡み合うことで、リスナーに感動とポジティブなパワーを同時に与えてくれるのだ。
だからこそこの曲を、このタイミングで「アニサマ」という大舞台で聴きたいファンは多かったことだろう。特にDメロの歌詞をSSAの舞台から届けられたら、グッときてしまうこと請け合いだ。
ならば私たちも、来年このステージでその言葉を届けてくれることを信じて待とうではないか。その歌声とメッセージを受け止めてハッピーな涙を流せる瞬間が、1年遅れで実現することを祈るばかりだ。
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【森口博子】力強ささえ感じられる、大会場をも包み込む大きな愛の歌
1980~90年代を中心にいわゆる"バラドル"として大活躍していた彼女だが、デビュー曲がTVアニメ『機動戦士Zガンダム』のOPテーマ「水の星へ愛をこめて」だったり、バラエティで活躍するなかでも『エースをねらえ!2』や『鎧伝サムライトルーパー』の主題歌を担当していたりと、実はアニメとの縁は意外と深い。
その縁は、2012年の「アニサマ」にサプライズで出場した頃からさらに強くなったよう。2015年にはTVアニメ『ワンパンマン』のEDテーマ「星より先に見つけてあげる」でアニメ主題歌を久方ぶりに担当すると、アニソン音楽番組『Anison Days』の司会や『GUNDAM SONG COVERS』の発表などを通じて、アニソンとの距離をさらに縮めている。
☆この曲を聴け!……「ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~」(劇場版アニメ『機動戦士ガンダムF91』主題歌)
この曲は彼女が『NHK紅白歌合戦』へ出場するきっかけのひとつにもなった曲で、2012年の「アニサマ」でも歌われた曲でもある。来月には『GUNDAM SONG COVERS』第2弾の発売も控えた今、聴きたい森口の曲は挙げればきりがない。なのでメドレー形式で数曲歌ったのちに、この曲で大団円……という筆者の妄想のうえで、この曲を中心に取り上げさせていただきたい。
この曲は戦争の悲しさを歌ったものであり、同時に作品のエンディングにて戦士たちを包み込むような、大きな愛を歌声に乗せた大バラードでもある。約30年前に歌われた原曲でも、サウンドのもつ大団円感も相まって、すでにリスナーへとその大きな愛が伝わる楽曲に仕上がっていた。
それから月日が経ち、2015年にはセルフカバーバージョンを発表していたのだが、これがまた絶品。全体に包み込むような優しさをただただ感じさせるだけではなく、歌詞カードを一切見なくても明確に言葉と想いが伝わってくるから凄い。
歌詞に沿った哀しみの表現も、非常に的確にピンポイントに行なわれていく。それでいてサビでは優しさがひと回りもふた回りも大きくなるし、大サビに至ってはそこにパワフルささえも加わっていて……改めて、延期を強く残念に思えてしまった。
ちなみにその他『ガンダム』シリーズのカバー曲にも、押尾コータローのギターをバックに、原曲とは異なるテイストでソウルフルに歌い上げた「哀 戦士」をはじめ、生で聴きたい曲は挙げきれないほど。2012年にサプライズで登場してこの曲を歌ったときは違い、事前の出場発表を受けて森口の歌を楽しみにしていたアニソンファンも多かったはず。
ステージに立てば、2万8千人がその歌声が響くのを心待ちにすることだろう。森口自身も8年前以上にアニソンやアニソンファンとの距離が縮まった、さらに”相思相愛”となった状態で、この曲で大きな愛をもってすべてを包み込んでいく――そんな夏の終わりを2021年に迎えられたら、最高すぎないか?
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3人ともここに至るまでの道のりこそそれぞれ違えど、違った形も含めて「アニサマ」のステージを経験済。しかも”サプライズ”ではないからこそ、自身の元からのファンや”予習”を経てパフォーマンスを楽しみにして足を運ぶといった、明確な味方も増えるはず。サプライズやユニットのときでさえ感じられたであろうオーディエンスの温かさを、3人ともソロで感じ、そしてオーディエンスを感動させていく――来年の夏は、そんな夏になるはずだ。
さて、次回は鈴木このみ、ReoNa(五十音順・敬称略)をピックアップ。ふたりのアニソンシンガーがもつ、それぞれの”歌力”にフォーカスを当てつつ、この夏の必聴曲をご紹介していきたい。どうぞお楽しみに!
●著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける
Twitter:@sunaken
記事内イラスト担当:jimao
まいにち勉強中。イラストのお仕事随時募集しております。Twitter→@jimaojisan12