12回目となる今回は、亜咲花、angela、オーイシマサヨシ(以上五十音順・敬称略)をご紹介。過去のアニサマで大トリを務めたことのあるangelaと、彼らのステージに憧れてアニサマのステージを目指した亜咲花。そして今年のアニサマのテーマソングを手掛け、そこにあらたな”アニサマ魂”を込めたオーイシマサヨシといった3組の必聴曲を、今回も”予習”していきたい。
【亜咲花】三度目のアニサマだからこそ! 会場を多幸感で包み込めるゆるっと温かなナンバー
May'nの歌声に衝撃を受けて”アニソンシンガー”を志し、2016年に夢を叶えた亜咲花。パワフルな歌声で激しいロックからハッピーなポップナンバーまで歌い上げる一方、近年では加えてバラードを聴かせる力の成長も著しい。 また彼女が叶えた夢はアニソンシンガーだけではない。2014年のアニサマに観客として訪れていた彼女は、angelaのKATSU(Gt.)がステージ上で口にした「この場所は世界一気持ちいいから、上がってこいよー!」との言葉に刺激を受ける。
そして見事2018年にそのステージに立つという夢を叶えた彼女は、”アニサマの申し子”と呼んでも過言ではないのではないだろうか。それから3年連続での出場を決めていた亜咲花。今年ぶつけることができなかったアニソンと「アニサマ」への愛を、来年さらに膨らませて形にしてくれることに、心から期待したい。
☆この曲を聴け!……「The Sunshower」(TVアニメ『へやキャン△』主題歌)
『ゆるキャン△』のOP/ED陣が集結して作り上げた、ハッピーで穏やかなナンバー。前述したようなパワフルなボーカルこそが亜咲花の持ち味としてイメージされている方もいるかもしれないが、温かみのあるスローな楽曲を歌うなかで彼女の歌声が発露する多幸感はたくさんの方に改めて感じていただきたいものであり、「アニサマ」でもSSAを包み込んでほしいものだ。
なので、歌い出しも極力肩肘張らない、力を抜いたアプローチ。パワフルなイメージからはあまりにも意外過ぎる印象を受けるかもしれないが、これも間違いなく計算のうち。サビではその歌声はふわぁっとリスナーを包み込むように優しく広がっていくが、そこでもパワーを全開にするわけではない。つまり、そのサビに向けたメリハリ・起伏のために歌い出しは抑えめに入っているわけだ。
そしてこの曲、描かれている景色が刻々と変わっていくのも味わい深いところ。タイトルもあって、序盤に描いたのは穏やかな昼下がりだろうか。そこから次第に夕暮れ時を迎えていくこの曲は、アコースティックなサウンドも手伝って夜も似合う楽曲なんかもしれない。アコースティックなサウンドも手伝って、日が暮れたキャンプ場で焚き火を囲みながらアカペラで合唱――などというのも、非常にハマりそうな曲である。
フェスという場では、勢いがあって曲を知らない人でもノれるような曲が好まれがちかもしれない。しかしライブというものは、アッパーチューンだけでは成立しないはず。これまで「アニサマ」という場ではみせてこなかった温かな歌声という魅力、来年来るであろう3回目の大舞台では存分に発揮し、多くの人へと届いてほしいものだ。
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【angela】”新しさ”を感じるポップなナンバーに凝縮された、ふたりの”凄さ”
『蒼穹のファフナー』や『K』といった人気シリーズをはじめ、数々のアニメ主題歌を担当する2人組ユニット。細やかなビブラートのかかった伸びと厚みを兼ね備えたatsuko(Vo.)の歌声と硬質な打ち込みサウンドも取り入れたロックがサウンド面での特徴で、シリアスな楽曲から底抜けに脳天気なナンバーまで、作品に応じた硬軟自在の楽曲を生み出し続けている。
ブレイク前にはSSAのけやきひろばにて路上ライブを行なっていたふたりだが、それから時を経て2016年のアニサマでは3日間の大トリを張るまでの大きな存在となり、そのなかでは前述の亜咲花のようなフォロワーも生んだ。もはや中堅からベテランの域に突入した感のあるふたり。観客を釘付けにし巻き込んでくれるパフォーマンスを、また近いうちに観れる日が来ることを願ってやまない。
☆この曲を聴け!……「乙女のルートはひとつじゃない!」(TVアニメ『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』OPテーマ)
"angela×異世界転生ラブコメ"という初の掛け合わせから生まれた楽曲は、いい意味で想像の範疇を思いっきり飛び越えたぶっ飛んだ楽曲に。「キャンディ・キャンディ」のオマージュを感じる冒頭のハープシコードのフレーズが"乙女感"を楽曲に与えたら、ハープの音色とともに本格的な幕開けを迎えると、疾走感とともに軽快なブラスやストリングスの音色が加わってサウンドには一気に華やかさが。
歌が始まっても随所で鳴るハープが、サウンドに高貴さを与えている。なのでこの曲から、"全く新しいangela"という印象を受けたアニソンファンも多かったことだろう。
だがこの曲、特にサビのメロディに注目すると、実は非常にangelaらしい譜割り。この曲とテンポ感の近い他のangela曲2~3曲を、それぞれメロディに合わせてクラップしてみると、実は近さを有していることに気付けるはずだ。だからこそファースト・インプレッションでリスナーに新しさを感じさせ、しかもそれをストーリーにもマッチさせる形でひとつの作品として仕上げたangelaは、凄いアーティストでしかないのだ。
また、Dメロのコール・アンド・レスポンスはこの曲におけるオーディエンスを巻き込んでのいちばんの盛り上がりどころなので、そういう意味でもしっかり”予習”をしておけば、今後のワンマンをはじめとしたangela出演ライブで、一緒に思う存分遊び倒せるはず。ただノリよく楽しめるだけではない、angelaの凄さが詰まったこの曲を、細かい部分まで注目して楽しみ尽くしてほしい!
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【オーイシマサヨシ】2020年代に入ったから今だからこそ、また肌で感じたい”原点”のカッコよさ
2010年代後半以降のアニソンシーンに欠かせない存在のひとりとして、彼の名前が挙がることには異論はないだろう。バンド・Sound Scheduleのメンバー(Vo. / Gt.)である大石昌良は、2014年に初めてソロでTVアニメの主題歌を"オーイシマサヨシ"として担当すると一気に注目を浴び、その前年からTVアニメ『ダイヤのA』主題歌でタッグを組んでいたTom-H@ckと正式に音楽ユニット・OxTを結成。さらには「ようこそジャパリパークへ」をはじめアニメ主題歌や声優アーティストへの楽曲提供も行ない、とにかくキャッチーかつ物語の勘所を押さえた楽曲を次々と生み出し続けている。
そして今年、ついにオーイシは「アニサマ」のテーマソングも担当。残念ながら開催は順延になってしまったが、そのテーマソング「なんてカラフルな世界!」は受け継がれることも決定。今年と来年とをつなぐこの曲とともに、オーイシ自身もシンガー・クリエイターの両面でさらなる活躍をみせてくれることだろう。
☆この曲を聴け!……「君じゃなきゃダメみたい」(TVアニメ『月刊少女野崎くん』OPテーマ)
通常であれば新曲を”予習”するのが筋かもしれない。だがこれは”オーイシマサヨシ”としてのはじまりの曲であるのと同時に、オーイシ曲ならではのおいしいところが詰まりまくっている曲。ブラスの挿し込まれ具合やサビのリズム感など、その後の自身の曲や提供曲にも通ずるポイントが満載。だから、「アニサマ」のテーマソングを手掛けた今年だからこそ、再注目してほしい曲なのだ。
また、女性曲も原キーで歌えるほどのハイトーンボイスは、この曲からすでに発揮。そのうえでAメロの少し高めの音域の部分ではわずかにハスキーさを強調しており、それがブラスと組み合わさることでファンキーさも現出。男性である筆者からしても思わず惹かれてしまうカッコよさをもっている。
にもかかわらずこの曲の歌詞は、徹頭徹尾想い人にぞっこん。こんなにカッコよく歌ってるのに実はベタ惚れっていう姿が、もうたまらなさすぎる。しかも曲が進むにつれてその恋心はますます募っていき、2-Aメロのコールも実は1番とは異なる、「君じゃなきゃ意味がない」へとさらに強い想いを表したものへと変化しているほどなのだ。
さて、カッコよさと言えばもう一点。イントロや間奏・後奏で力強くかき鳴らされるアコギは、その音色はもちろんのこと、生のステージでオーイシ自身によって奏でられることでさらにカッコよさを増す。
もちろん過去の「アニサマ」でも歌われたことのある曲ではあるが、意外にもソロでこの曲が歌われたのは初出場を果たした2015年の一度きり(※OxTとしては2017年にも演奏有)。だから2020年代に入った今、最近アニソンにハマってオーイシ楽曲のとりこになったリスナーにも肌で感じてほしいのだ。「オーイシマサヨシは、カッコいい」と。
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今回は象徴的なアーティストをご紹介したが、もちろんこの3組以外も、「アニサマ」のステージを踏んだからには多かれ少なかれ”アニサマ魂”は抱いたはず。それが毎年たくさんのアーティストに受け継がれそれぞれの中で大きなものへと育つことで、これからも「アニサマ」とアニソンシーンがも盛り上がり続けていくことを、改めて心から祈りたい。
さて、次回は”えりぴよ&舞菜 from 推し武道”、” SHOW BY ROCK!!”(五十音順・敬称略)をピックアップ。いずれも今年TVアニメが放送された、まさに今が旬の2組を取り上げていきたい。どうぞ、お楽しみに!
●著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける
Twitter:@sunaken
記事内イラスト担当:jimao
まいにち勉強中。イラストのお仕事随時募集しております。Twitter→@jimaojisan12