数ある投資の中でも、少額から始められ、郵便局や銀行でも買える、といった敷居の低さから、多くの人の注目を集める「投資信託」。老後の資産形成にも有益だと言われていますが、本当に投資信託でお金を増やすことはできるのでしょうか。
この連載では、金融商品の斡旋や販売をしない中立的なお金の学校ファイナンシャルアカデミーが、投資信託の「よくある落とし穴」の中身を分解しながら、着実に資産形成をするためのヒントをお伝えします。
連載5回目の今回は、商品選びで非常に重要な「手数料の落とし穴」について勉強していきましょう。
「販売手数料0円=手数料がかからない」ではない?!
長期でコツコツ資産を大きくする投資信託。運用はプロに任せられるからこそ「商品選び」が非常に重要であることは既にお話ししました。その中で特に考慮すべきことの一つが、iDeCoの回でも伝えた「手数料」について。2000万円を着実に作る上で欠かせない知識ですので、再度確認していきましょう。
みなさんは証券会社のホームページを見たことがありますか? 実際にいくつかのページをのぞいてみると、パッと目につくのが「手数料0円」という文字。たいていその文字の近くには、「販売手数料」や「申込手数料」であることが補足されているのですが、ここでみなさんに質問です。「販売手数料無料=手数料はかからない」。こんな風に捉えても果たして問題はないのでしょうか? 実は答えはNO。これこそが投資信託の「手数料の落とし穴」なのです。
投資信託の手数料には、「買う時にかかる手数料」「持っている間ずっとかかり続ける手数料」、そして「売る時にかかる手数料」の3種類が存在します。
証券会社が大々的にアピールしていた手数料はここで言う「買う時」にかかる手数料のこと。この手数料は、前述した「販売手数料」とか「申込手数料」、また「買付手数料」などと呼ばれており、無料の場合は「ノーロード」とも呼ばれます。
実は2019年12月頃から、投資信託の販売手数料の無料化は急速に進んでいます。現在大手ネット証券では、インターネットで投資信託を購入する場合、全ての商品の「販売手数料無料」が当たり前になりつつあります。
言い換えれば、「販売手数料無料」に惹かれて、これはお得な商品だ!と判断してしまうのは、非常に危険だということです。
チェックすべきは「信託報酬」、でも安ければ安いほど良いとも言い切れない
「販売手数料」以外の手数料としては、保有している間、毎日かかり続ける「信託報酬」と、売却する時にかかる「信託財産留保額」があります。
両方とも私たち投資家が支払うべき手数料にも関わらず、手数料という名前がついていないので、しっかり言葉まで覚えておくようにしましょう。その中でも、2000万円を作りたい人が重要視すべきなのはズバリ「信託報酬」です。
持っているだけで、もれなくかかってしまう信託報酬の金額は、安いものでは0.1%を切るものから、高いものでは4%を越えるものまで、商品によって様々です。昨年は「最初の10年間は信託報酬0%」という商品まで登場し、大きな話題になりました。
みなさんの中には「たった数%でしょ?」という感覚の人もいるかもしれませんが、投資信託は頻繁に売買をする株式投資などと違い、20年、30年と長い年月をかけることで資産を増やす商品です。そのためこのちょっとした違いが、ケースによっては受取時、数十万円から数百万円の大きな違いへつながってしまうのです。
ですが、ここでもう一つ、たくさんの受講生を見てきた学校としての立場からアドバイスをすると、信託報酬は安ければ安いほうが良い、と言い切れないのも一つの事実です。
初心者向けの投資信託に関する記事やブログを見ると「とにかく信託報酬は安ければ安いほうが良い!」と主張するものにたまに出会います。しかし、仮にその商品が手数料は安いけれど運用成績がイマイチだったとした場合、本当に選ぶべき商品だと言えるのでしょうか? 答えはもちろんNO。信託報酬は目安にしながらも、過去の運用成績など他の要素も加味した上で、トータルで成果の出る商品を選ぶ必要があるのです。
次回は、信託報酬論争に欠かせない「インデックス投資VSアクティブ投資」の落とし穴について、深掘りしていきましょう。
ファイナンシャルアカデミー
お金の教養を身につけるための「総合マネースクール」。2002年の創立以来、東京校・大阪校・ニューヨーク校・WEB受講を通じて19年間で延べ60万人が、貯蓄や家計管理といった生活に身近なお金から、資産運用、キャリア形成、人生と社会を豊かにするお金の使い方までを学んでいる。現在、全くの初心者でも投資の基礎知識をわかりやすく学べる「株式投資スクール体験セミナー」「投資信託スクール体験セミナー」などを無料提供している。