経済的に独立し、早期リタイアを目指す「FIRE」。アメリカ発祥のこの言葉は、日本でもここ数カ月の間で急速に市民権を獲得し、お金や投資の学校である私たちファイナンシャルアカデミーの門戸をたたく受講生からも「FIREを目指して投資を学びたい!」という声が聞かれるようになりました。
日々の労働に縛られることなく、自由に人生を謳歌できるFIRE。ただ、その実態をよくよく見てみると、落とし穴とも言えるいくつかの弱点に気づきます。
連載2回目の今回は、絶対に語られない「FIREした後のあるあるパターンから気づく重大な事実」についてお話しします。
究極の質問「何のためにFIREするのか」
FIREに興味を持つ人に質問です。あなたは何のために、FIREを実現したいですか? こう尋ねるとおそらく多くの人から「日々の仕事に縛られずに自由に生きたい」といった答えが返ってくることでしょう。ではもう一つ質問です。いま20代の人であれば40歳で、30代の人であれば40代半ばくらいで、40代の人であれば50歳で無事FIREを実現できたとします。あなたはその後、90歳まで生きるとして、FIREした後の40~50年という長い人生に、何を実現したいですか?
具体的な内容が思い浮かんだ人もいるでしょう。ですがその一方で「のんびりする」「旅行する」といった漠然としたアイディアしか浮かばなかった人もいるのではないでしょうか。果たしてそれを365日×40年間、満喫し続けることはできるのでしょうか。お気づきの方もいると思いますが、FIREは「目的がリタイアであること」に大きな弱点があるのです。
今でこそ、一般的な関心を集めるようになったFIREですが、私たちファイナンシャルアカデミーの受講生には、投資によって経済的自由を手に入れた人が以前からたくさんいました。ただ、これらの人たちを「人生の幸福度」という観点で見てみると、大きく2つのパターンがあることに気づかされます。
一つ目は経済的自由を得たことで、より大きな生きがいに向かって充実した人生を送れるパターン。そしてもう一つのパターンが、経済的自由を獲得するのと同時にリタイアすることで、結果的に幸福度が下がってしまうパターンです。
後者はいわば、定年退職後、日々の張り合いをなくし、徐々に老け込んでしまうような状態と同じだと言えるかもしれません。
この2つの差はどこにあるのでしょうか。それは、経済的自由が手段なのか、目的なのかにあります。前者は自分らしい人生を実現するために経済的自由を獲得しているのに対し、後者はリタイアすることそのものが目的になってしまっているのです。
もちろん、早期リタイア自体が目的でも、しばらくは目標達成感や仕事をしなくてよい自由な時間が得られたことで、充実した日々を送れるかもしれません。
ですがある時ふと、昔の同僚が生き生きと仕事をしている様子を見て取り残され感に襲われ、家族以外とのコミュニケーションが減ったことで寂しさに苛まれ、子どもが成長する一方で何も変わらない自分に焦りを感じるようになる……。しかし時すでに遅し、同じところから再スタートを切ることは、容易ではないのです。
好きなコトで生きる、仕事観は変えられる
私たちファイナンシャルアカデミーが、FIREをしたい人にぜひ考えてもらいたいことは、「FIREした後の人生」です。目の前の仕事に対しての窮屈さや日々の通勤の疲労感からFIREをしたいと感じている人であれば、「とにかく早くリタイアしたい!」という思いでいっぱいかもしれません。ですが、その先の人生はまだまだ長く、経済的自由の獲得は「通過点」でしかないのです。
私たちが提唱する進化版FIRE「パラレルインカム」は、並行したインカム(収入)という言葉からもわかる通り、投資で得る資産所得とあわせて、労働所得を得続けることも前提としています。経済的自由は獲得しながらも、仕事からの「リタイア」は目的にしていません。
こうお伝えすると「経済的自由を得てまで働くのは嫌だな」と思う人もいるでしょう。でも、ここでいう「働くこと」とは、今の仕事を、ということではありません。
パラレルインカムが目指す仕事とは、「収入の大小に関係なく、自分の好きなコトで対価を得ること」。今の仕事自体にはやりがいを感じているけれど時間的制約がネックになっているなら、働き方を変えるのもありでしょう。全く違う仕事に挑戦してみるのもいいでしょうし、お金にはなりにくいけれど社会的価値の高い仕事にコミットするのもいいでしょう。
つまり、「生活のための仕事」から解放されて「自分も他人も幸せにできる、思いっきり自由な仕事をしませんか?」ということを提唱しています。
リタイアでは満足できない! 自己実現を求めるのが人間
心理学者のマズローが唱えた有名な説に「欲求の5段階説」というものがあります。人間の欲求には下から「生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求」の5つの段階があり、下層の欲求が満たされると一つ上の欲求を満たそうとし、最終的には最上位欲求である「自己実現欲求」に向かっていく、それが人間だ、と仮定した理論です。 この理論を借りるなら、進化版FIRE「パラレルインカム」は、経済的自由の獲得だけでなく、自分らしい生き方の実現をめざします。それは、社会的欲求、承認欲求、そして最高次の自己実現欲求まで叶えられる最高の状態、と言えるでしょう。
リタイアを「ゴール」ではなく「通過点」として捉えるからこそ、人生はもっと面白くなる。FIREに興味を持つ人には、ぜひそのことに気づいてほしいと思います。最終回の次回は、進化版FIRE「パラレルインカム」の具体的な手法についてお話をしましょう。
ファイナンシャルアカデミー
お金の教養を身につけるための「総合マネースクール」。2002年の創立以来、東京校・大阪校・ニューヨーク校・WEB受講を通じて19年間で延べ60万人が、貯蓄や家計管理といった生活に身近なお金から、資産運用、キャリア形成、人生と社会を豊かにするお金の使い方までを学んでいる。現在、労働所得と資産所得という「2本の収入の柱」で経済的自由を獲得し「好きなコト」で人生を創り、自分らしく生きることを目指す「パラレルインカム実現スクール」などを開講している。