「無観客試合」は国内外にどのような波紋を呼ぶのか(画像はイメージ)

国際サッカー連盟(FIFA)の公式エディターやJリーグクラブで要職を歴任し、国内のサッカー事情に精通する筆者が、サッカーの魅力をグローバルな視点から論じる本連載。今回のテーマは、Jリーグ史上初となる「無観客試合」だ。

試合終了まで放置された「JAPANESE ONLY」

3月23日、Jリーグ史上初となる「無観客試合」が開催される。埼玉スタジアムで行われるJ1リーグ、浦和レッズ対清水エスパルス戦がその対象だ。

これほどまでに重い処分が下された理由は、浦和の本拠地で開催された8日のサガン鳥栖戦で発生した差別的横断幕の掲出事件にある。一部の浦和サポーターがゲートに「JAPANESE ONLY」と書かれた横断幕を掲げたのだが、運営責任者である浦和レッズ側はこれを認識しておきながら、試合終了まで放置した。この事態に関して、Jリーグの村井満チェアマンは「差別的行為を放置したこと自体が、差別行為に加担したと思われても致し方ない」と語っている。

「JAPANESE ONLY」という言葉は、「日本人以外お断り」という意味である。ちなみに、「ONLY JAPANESE」にすれば「日本人だけ」「日本人のみ」という意味となるが、いずれにしても、スタジアムという公共の場所で掲げる横断幕としてはあまりにも排他的である。

Jリーグの海外展開へ与える影響は

今回の一件はあくまでも「一部の浦和サポーター」による行為である。私の知る限り、大半の浦和サポーターは純粋にレッズを愛し、ホームタウンを愛し、チームを、選手たちを愛している人々である。それだけに、横断幕を長時間放置したクラブは、大多数の良識的なファンをも裏切ったと言える。クリーン性と公平性を尊ぶスポーツの舞台において、排他的言動は一切排除しなければならないのである。

おりしもJリーグは、ASEAN諸国とのアジア戦略、すなわちリーグ間提携とクラブ間提携、そして放映権販売などをパッケージ化した独自のアジアマーケティングを積極的に展開中だ。東南アジア諸国のサッカーファミリーが今回の一件をどう見たのか(あるいはどう見られると推測できるのか)、しっかりと検証しなければならないだろう。

著者プロフィール

鈴木英寿(SUZUKI Hidetoshi)


1975年仙台市生まれ。東京理科大学卒。サッカー専門誌編集記者を経て、国際サッカー連盟(FIFA)の公式エディターに就任。FIFA主催の各種ワールドカップ運営に従事する。またベガルタ仙台(現J1リーグ)のマーケティングディレクター、福島ユナイテッドFC(現J3リーグ)の運営本部長などプロクラブでも要職を歴任。2012年から2013年にかけて英国マンチェスターを拠点に欧州のトップシーンを取材。拠点を日本に移した2014年もグローバルに活動中。

Twitter: @tottsuan1