前回、僕が恋愛教師と勝手に崇めている超モテ男のOに誘われ、男7女3という大人数の飲み会に参加した話を書いた。女性陣はみんな彼氏がいるということだったため、僕にとって実用的な婚活の舞台にはなりえなかったのだが、それでも今後に向けての練習の場としては充分だった。

Oが授けてくれた「初対面の女性と簡単に打ち解けるためには、最初に自分の失敗談を話すといい」という失敗談作戦は、確かに効果的だと思う。男としては少々情けない気もするが、初対面で変に偉ぶるより、にこやかに自虐する人のほうが人間は安心感を覚えるものだ。

しかし、だからといって、それ以降も流暢なトークを続け、女性をますます楽しませていけるかというと、それはまた別の話になってくる。大体、僕はどんな話をしたら、最近の若い女子が喜んでくれるのか皆目見当もつかないのだ。

「好きな音楽の話でも気軽にすればいいんだよ」

そんなことを簡単に言われても、僕はEXILEとかGReeeeNとかにまったく興味がないし、歌詞の意味が理解できない洋楽になってくると騒音でしかない。

大体、さだまさしや忌野清志郎、阿久悠の曲が好きな若い女子なんか日本に実在するのか。阿久悠が作詞した『ジョニーへの伝言』(ペドロ&カプリシャス)や『恋のアメリカンフットボール』(フィンガー5)、『カサブランカ・ダンディ』(沢田研二)が文学的にいかに優れているかを懇々と語ったりした日にゃあ、間違いなく若い女子に変なおじさん扱いされて、嫌われちゃうじゃないか。

「じゃあ、趣味の話でも気軽にすればどうよ?」

いやいや、そんなことを簡単に言われても、僕はサーフィンやスノボを一回もやったことがないし、クラブ遊びなんか僕にとっては不快でしかない。 大体、プロ野球や格闘技の話、小説の話なんかを嬉々と喋り倒して、喜んで聞いてくれる若い女子なんか地球上に実在するのか。「最速156キロを誇る阪神の藤川球児の火の玉ストレートは1秒間に45回転もするんだけど、それは松坂大輔の41回転をも上回り、並みの投手の三割増しの回転数なんだよ」なんてことを切々と語ったりした日にゃあ、間違いなく若い女子に悪質なトラキチ扱いされて、トイレに立たれちゃうじゃないか。ちなみに巨人のクルーンでも43回転です。(ほんと、どうでもいい)

しかし、恋愛教師Oはそんな僕にもこんな極意を授けてくれた。

「女の子と会話するだけなのに、そんなに難しく考える必要ないって。最初はひたすら女の子のことを褒めといたほうが無難だと思うよ」

いや、わかる。それぐらいは僕もわかっている。石田純一やロンブーの淳なんかを見ていても、モテる男はとにかく褒め上手だ。僕も褒められるのが大好きな単純な生き物だから、褒められて嫌な気になる生き物なんか、この世に存在しないとすら思っている。猫だけは例外かもしれないけど。

しかし、だからといって、一体どうやって女子を褒めればいいのかよくわからないのだ。正直、いきなり初対面で「綺麗だね」とか「かわいいね」なんて、とてもじゃないけど恥ずかしくて言えるわけがないし、もし言えたとしても間違いなく場違いな空気を作ってしまうだろう。大体、いくら人間は基本的に褒められるのが好きな生き物だと言っても、褒め方を間違えば、つまりあまりに不自然な褒め方をすれば、むしろ嫌悪感を抱かれる危険性もあるじゃないか。

「いや、だから間接的に褒めるんだよ。それなら簡単だろ」とO。

間接的ってどういうこと?

「間に何らかのアイテムを挟むんだよ。例えば『そのピアスかわいいね』とか『スカートかわいいね』とか『ネイルかわいいね』って感じ。それなら簡単だろ」

なるほどっ。その手があったか!(単純すぎる)

O曰く、女子を褒めるときは全体をただ漠然と褒めるのではなく、何でもいいから細かいアイテムを発見して、そこを徹底的に褒めていくほうが効果的だという。そうすればパーツごとだから何回も反復できるし、女子にしてみれば「そんな細かいところまで見てくれているんだ」と感動するだろう。普通の褒め言葉より説得力が何倍も増し、女子の気分を高揚させること間違いなしというわけだ。

正直、かなり使えると思った。今後の婚活にこれを実践しない手はないだろう。かくしてO主催の飲み会は、僕にとって多大な収穫を残し、幕を閉じたのだった。

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