前回、33歳ながら超モテ男のOから「モテたければ自分の属性を変えるべし」という婚活の極意を授かった。(前回のリンクとか貼れませんか?)さらに「飲み会があったら誘うよ」という温かい言葉まで。かくして、僕はOを「恋愛教師」と崇め、彼に従うことで幸せな結婚を手に入れようと心に決めた。
実際、恋愛教師Oの動きは早かった。彼と再会してから数日後、早くもある飲み会の誘いがあったのだ。その飲み会は、いわゆる一般的認識の合コンではなく、Oの親しい友人たちを集めたミニパーティーのようなものだが、それでも独身女性が何人か参加するため、婚活への試運転には丁度良いのではということだ。
僕もそのほうがありがたいと思った。しばらく恋愛から遠ざかっているため、まずはリハビリ代わりになるような気楽な飲み会に参加して、少しは場慣れしておいたほうがいいだろう。「モテたければ自分の属性を変えろ」という恋愛教師の極意を信じるなら、孤独に慣れてしまった妖精オジサンみたいな今の自分を「女性と楽しく交流できる華やかな男」という属性に自己改革する必要がある。本格的な婚活、つまり合コンやお見合い(あるのか?)は、リハビリ明けのほうが効果的に違いない。
というわけで、僕は先日、恋愛教師Oの友人たちが集まった総勢10人の飲み会に参加した。メンバーは男7、女3。年齢も職業もバラバラで、男性陣には20代のギャル男もいれば、30代の既婚男性やOのような独身貴族もいた。一方の女性陣はアラサーから20代半ばまでのOL三人衆。合コンではないため、みんな彼氏がいるとのことだが、それでもなかなかの美女が揃っていた。Oは豊富な人脈を駆使して、このような異業種交流会を定期開催しているとか。そりゃあ、出会いも多いはずだ。
モテ男とは基本的にマメな人種のことを指すのだろう。「出会い」というバッターボックスに立つ回数、つまり打席数が多いほど、「恋愛」というヒットの本数が増えることは自然の理だ。そんなことを考えていると、僕はますます途方に暮れた。生来の出不精であり、極めて怠惰な性格をしている僕が、一体どうあがいたらマメ男に自己改革できるのか。 情けないけど、お先真っ暗である。
そんな絶望感は、いざ飲み会が始まって以降も容赦なく膨らんでいった。
こんなことを書くと身も蓋もないのだが、とにかく僕は初めて出会った女性とうまくお喋りできないのだ。(仕事は別ですよ、仕事はっ)
いや、あのね。打ち解けた後は別ですよ。けど、初対面って女性も少しは身構えているわけで、そういう心の壁が伝わってきたら、それだけで僕は挫折してしまう。自慢のトークで緊張をほぐしてあげるなんて芸当は、僕にとって高度すぎるのだ。
しかし、そんな中、恋愛教師Oがとっておきの極意を教えてくれた。
「初対面の女と話すときは、最初に自分の失敗談を話せばいいんだよ」
日常生活における些細な失敗なんて腐るほどある。最初にそんな自虐ネタを自分から喋れば、人間は不思議なことに相手に心を許してしまいやすくなるという。これは自分に置き換えてみたらわかるだろう。自慢話ばかりする人間と情けない話を笑いながら喋ってくれる人間だったら、後者のほうが安心できるに決まっているのだ。
ちなみに、この「失敗談作戦」は推理ドラマでも多用されている。例えば『古畑任三郎』なんか典型的だ。古畑は犯人であると目星をつけた人物に接触するとき、必ず会話の冒頭で「さっき自転車がパンクしちゃいまして~」や「トーストを焦がしちゃいまして~」など、日常の些細な失敗談を苦笑しながら語り、なかなか本題に移らない。あれは古畑の性格というより、相手の警戒心を解くためにわざとやっていることだと僕は勝手に分析している。ああやって自虐することで、犯人に「なんだ、この情けない刑事は?」という印象を与え、徐々に気が緩んでいった結果、犯人はつい口を滑らせてしまう。つまり、脚本家の三谷幸喜氏は古畑と知りあったばかりの人物の心を打ち解けさせようとしているのだ。 かくして僕は早速、「失敗談作戦」を実行した。これによって僕は初対面女子とずいぶん気軽に話せるようになったのだが、それはまた次回の話だ。
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