2010年になった。読者の皆様、あけましておめでとうございます。今年の僕は例年とは一味違う。恋愛に関する具体的な大目標として、堂々と「結婚」を掲げることにしたのだ。
大体、今年で34歳である。いつまでも自分がB型男子であることで「女子から敬遠されるんじゃないか?」とか「A型女子が怖い!」とか、ヘタレっぷりを発揮している場合じゃない。そろそろ本腰を入れて婚活をしないことには、いよいよ生涯独身になってしまうかもしれない。ネタでも何でもなく、僕は本当に結婚したいのだ。
正直、20代の頃は「結婚なんていつでもできる」とタカをくくっていた。だからこそ今のうちは色んな女の子と遊んでいたいと、能天気なことも考えていた。けど、30歳をすぎて確実にモテなくなったことに気づいてからは途端に不安になってきた。焦りではなく、不安。30代独身が別に珍しくない現代社会だけに、僕は決して早く結婚しなければと焦っているわけではなく、ここ数年あんまりモテないから「このまま一生結婚できないんじゃないか」とだんだん不安になってきているのだ。
かくして、まずは婚活準備である。素敵な女子との出会いをより着実に恋愛につなげるため、今まで以上に身だしなみを整えなければ。よし、ダイエットもしよう。食事制限だけじゃなく、適度な運動も取り入れ、今より最低五キロは落としたい。そうすれば多少は腹がへこみ、洋服も似合うようになるだろう。絶世のイケメンじゃないことは百も承知だけに、せめて清潔感だけでも保たないと。
続いては、以前から何度も書いてきた薄毛対策である。これは本当にどうしたものか。外出前、せっかくブローで頭髪のボリュームを出したとしても、雨が降ったりしたら、いとも簡単に小松菜のお浸しみたいになってしまう。風の日もしかりだ。強風に前髪が煽られると、後退した生え際が世間様に剥き出しになるじゃないか。
しかるに風雨の日の隠蔽工作は帽子である。帽子をかぶればすべてを隠すことができるのだが、いかんせん頭髪が蒸れることによる抜け毛の進行が怖い。しかも帽子をとったときの頭髪のペチャンコ具合たるやひどいのなんの。帽子をかぶる日はなにがあっても帰宅するまで帽子をとらないという、強い覚悟が必要なのだ。
白髪も気になる。もちろん染めればいいのだが、染料を常用することによる抜け毛の進行も怖い。ただでさえ頭髪が瀕死状態なのだから、余計な加工を施したらとどめを刺すことにつながるんじゃないかと、必要以上に戦々恐々としてしまう。
ああ、コワモテ顔に生まれたかった――。そんなことも考えるようになった。
コワモテ顔なら、禿げてきた時点ですっぱり坊主にしてしまえばいい。30歳をすぎるとコワモテ顔のほうが得だと思う。コワモテ顔なら、例え禿げとメタボが同時に襲ってきたとしても、ヘアスタイルを坊主にして、ダボッとした洋服、いわゆるB系ファッションに身を包めば、あっというまに「いかつい系のお洒落男子」になれる。
しかし、僕はどう考えてもコワモテ顔ではない。疲れ気味の野良犬みたいな顔をした身長170センチにも満たないチビ。その場合、禿げとメタボは大敵なのだ。坊主頭も似合うわけがないし、B系ファッションなんかに身を包んだら、人生に失敗したオッサンみたいになってしまう。大体、30すぎてB系が脳裏をよぎっている時点でやばいだろう。いいかげん、ジャケットをさらっと着こなさせる大人にならなければ。
かような思考錯誤を重ねた結果、僕は先日、近所の小さな美容院(もちろん、男性美容師ばかり)にパーマをかけにいった。
この際、ある程度の加工は仕方ない。最近のパーマ技術は著しく進歩しており、毛髪をあまり痛めないというじゃないか。だったら、ボリュームアップできるパーマをかけ、それを今後の基本スタイルにしてやる。パーマはそれなりにお洒落にも見えるし、女子受けも悪くない。ふん、笑うなら笑えばいい。こちとら必死なのだ。
かくして現在の僕は、ゆるいカーリーパーマをかけた新たな山田スタイルを確立した。全体にボリュームが出て、前髪の薄れや生え際の後退もあまりに気にならなくなった。はっきり言って成功である。
なあんだ。頭頂部さえ禿げなければ、パーマで充分隠蔽できるじゃないか。
けど、てっぺんはこわいなあ、てっぺんは。てっぺんだけはなんとか禿げないでくれと祈ってやまない今日この頃である。
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