女友達がたくさんいることと女子にモテるということは微妙に違う。
初めて会った女子と簡単に仲良くなることはできるが、恋人同士にはなかなか発展せず、いざ愛の告白なんかすると、
「友達としては好きだけど、男としては見られないんだよね~」
などと、言われてしまうイイ人系の男子は結構多い。
挙句、意中の女子から「○○くんもそろそろ彼女作りなよ~。誰か紹介してあげようか? 」なんてショッキングな優しさを見せられたり、その女子から他の男についての恋愛相談を持ちかけられたり、イイ人系男子はつくづく哀しい生き物である。
僕も少なからず、そういう要素がある。以前、ある女友達から
「山田くんって女子みたいだよね。昼間に二人でランチして、カフェでお茶飲んでケーキ食べてって感じが似合うもん。女子力高いよね」
と言われたことがある。正直、ショックだった。女子力が高い。だから、僕はモテないのか。いくら女子の前で一生懸命おもしろトークをしようと頑張り、それなりに女子を楽しませることができたとしても、相手が「女子と一緒にお喋りしているような楽しさ」を感じてしまったら、恋愛的にはまったく意味がない。うーん。おかしいぞ。僕の何がいけないんだろう。どう考えても僕は男の子だ。いや、完全なオッサンだ。ついてるもんもついてるし、それはそれで元気いっぱいなのだ。
かくして一時期の僕は、これを回避するために"ある作戦"を意識的に敢行していた。それは新たな女子と出会い、初めて二人で食事などに出かけたとき、なにげない会話の中に「デート」という言葉を頻繁且つさりげなく挿入することである。
「たまにはこういうデートも楽しいよね」
「今度は昼間もデートしようね」
もちろん、狙いは一つ。「遊びに行く」や「飲みに行く」ではなく、「デート」という言葉を使うことで、女子に自分のことを恋愛対象としてはっきり意識させるということ。こうすれば僕は女子じゃなくなるだろう。つまり、ちゃんと「男の子扱いして欲しい」という心の叫びを「デート」という言葉に置きかえたのだ。
しかし、これはまだ序の口である。より女子に自分のことを恋愛対象として意識させるために、僕は女子に対して以下のような台詞を吐くようにした。
「例えば俺と君が付き合ってるとするでしょ?」
名づけて、例え話攻撃である。「好きなタイプの男性は?」とか「○○ちゃんって尽くすタイプ?」などといった月並な質問から徐々に恋愛談義に話題を展開させ、そこから「例えば俺と君が付き合ったとすると、どんな感じになると思う?」と質問することで、女子になるべく自分との恋愛シーンを想像させるよう仕向けたわけだ。
質問の内容は何でもありだ。もしも音楽の趣味が一緒だったら「例えば俺たちが付き合ったとすると、一緒にライブによく行くんだろうね?」と言ってみたり、もしも住んでいる家が近かったとすると「例えば俺たちが付き合ったとすると、家が近いから便利だね?」と言ってみたり、僕は例え話攻撃をあらゆる質問に応用した。とにかく、うまくいくかいかないかは別として、こうすることで女子に「俺は恋愛対象なんだよ」とはっきり認識させることが恋愛の第一歩だと思っていたのだ。
ところが、よっぽど僕は男性としてのフェロモンが欠如しているのか、そういった緻密な質問を女子に向けても、こう返されることが多かった。
「まったく想像できない」
だーかーらー。そこを想像してくれって言ってんじゃんよっ。
おまけに酔っぱらった僕がつい調子に乗って、「例えば俺たちが付き合ったとすると、俺って精力強いか淡白かのどっちだと思う?」などと、女子に自分とのHを想像させるような質問をしたときなんか、こう一蹴されたほどだ。
「性欲なさそう……」
あります! 人並みにあります! 朝はちゃんと元気です!
まったく。おかしいぞ、世の中の女子は。こうなったら怪しい通販サイトで売っているフェロモン香水とやらに手を出してみようか。中学生のとき、モザイク除去装置を買ってしまった経験があるだけに、本当に注文しそうな自分がちょっと怖い。
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