僕はB型男子というだけでなく、オジッパリ男子でもある。正体は30代の独身オジサンのくせに、心の中では「自分はまだまだ若い」と意地を張り、挙句、ハタチそこそこのフレッシュギャル(表現が古い)との恋愛を夢見ていたりする悪質なピーターパン思想を捨て去ることができない。オジサンなのにイジッパリ。略してオジッパリなB型男子というわけだ。

そんなオジッパリ男子を見極める大きなポイントはファッションである。30歳を超えているくせに、やたらと明るい色使いのカジュアルな洋服を好み、サングラスやアクセサリーにも細かく気を遣う。落ち着いた大人のファッションよりも、20代の若者たちと同じようなファッションに身を包み、後ろ姿だけを見れば大学生と見分けがつかないが、正面を凝視すれば明らかにオジサン。それでいて、最新ヒットソングもカラオケ用にマスターしていれば、かなり末期症状のオジッパリである。

ちなみに僕も恥ずかしながら、いまだに若者ファッションを好んでしまう。いつだったか、6歳下の妹に「お兄ちゃん、いいかげんツナギを着るのやめときや」と呆れ顔で諭され、新たに買ったピンクとグリーンが混じったエスニック調のニット帽を爆笑されたぐらいである。携帯の待ち受け画面を仔猫の写真にすることで若い女子に関心を誘い、本当は生姜焼き定食が食べたいくせに、わざわざお洒落なカフェ(店内にアロワナの水槽があったりする)で量がちょっとしかないお洒落プレートランチ(なぜか必ずアボガドが添えられている)を注文し、若者気分に浸ってしまう。無理してでも「33歳なんてまだまだお兄さんじゃーん」って思っておかないと、このまま寂しい独身男子として生涯を終えてしまうような悪い予感がしてならないのだ。

しかし、現実は厳しい。髪形にもファッションにも120%以上の神経を遣い、以前にも書いたような「若作り隠蔽工作」に励んでいる僕だが、いくら加齢臭を隠蔽するべく自分にリセッシュをしようと、いくら肥大化していく腹部を隠蔽するような洋服を選ぼうと、いくら薄毛を隠蔽するために髪形の工夫をしようと、最近になってまたも新たな「老化の敵」があらわれたのだ。

それは豊齢線である。

先日、自分の写真を見て初めて気づいたのだが、なんだあれ。鼻の両脇から自己主張の強いシワが伸びているじゃないか。しかも、結構目立つぞ。写真にもばっちり映りこんでいるぐらい。日々進化していくデジタルカメラの鮮明ぶりはオジッパリにとって、はた迷惑な話なのだ。

これはかなりショックだった。顔の肌が確実に劣化してきているということに他ならない。オジサンと若者の大きな違いの一つはシワと肌質である。オジサンは豊齢線が濃くなり、顔全体が月の断面やREX(安達祐美が映画の中で飼っていた小さな恐竜)の肌みたいになっていくから女子たちはキモーイってたじろぐのだろう。男子は女子と違って毎日化粧するわけにもいかないし、衰えていく肌を見守ることしかできない。嗚呼、懐かしき若肌の透明感よ。哀しいったらありゃしないのだ。

そこで、最近の僕がひそかに考えている隠蔽工作が寝る前の化粧水を欠かさないことだけでなく、日焼けサロンで肌を焼くことである。(はい、笑わない!)

つまり、色黒になれば豊齢線も目立たなくなるだろうし、髭の剃り跡も肌の劣化も遠目には隠すことができる。おまけに顔全体が引き締まって見えるため、たるみを隠すことにもつながるし、精悍な印象を与えるだろう。

一生懸命若作りして、シャツのボタンを三つ以上開けている30代後半の遊び人風テレビ局員や広告マンたちがみんな色黒なのはそういうことじゃないのか。清原だって長渕だってそうじゃないか。ヤンチャな中年男子がみんな色黒なのはオジッパリな隠蔽工作だからだろう。オジッパリは苦労が多いのだ。

というわけで僕は近々、日焼けサロンに行こうと思っている。もちろん、それが将来の肌荒れの原因になることはわかっている。しかし、そんな先のことよりも、とにかく今が大切なのだ。独身30代のなんとも中途半端な時期、まだこれから素敵な恋愛をたくさんしたいと夢見ている時期にこそ、精一杯の抵抗を見せたいのだ。

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