僕は今年33歳になるが、よく30歳ぐらいの方に「3歳差なんて、あんまり変わらないですよ」と言われたりする。つまり、33歳と30歳は同世代というわけだ。

確かに一見、そう思う。僕も36歳の方を同世代と認識し、勝手な親近感を覚えてしまうところがある。チェッカーズやBOOWYの話もできるし、『ポニーテールは振り向かない』や『ヤヌスの鏡』の話もできる。ちなみに先日、とある20代前半の青年と話したとき、彼が「フミヤってチェッカーズだったんですか?」と聞いてきたのには驚いた。いやあ、すごい時代になったもんです。

しかし、僕は同じ3歳差でも33歳と30歳は明らかに世代が違うと考えている。

その理由は携帯電話やPHSの存在だ。日本で最初にPHSが発売されたのが1995年。僕が高校を卒業して1年目のことである。

以降、PHSは急激に普及し、次いで携帯電話が驚くべきスピードでPHSのシェアを抜き去り、現在に至る。つまり、僕が思うに33歳と30歳の間には携帯電話やPHSの出現という大革命があり、高校時代に「家の電話しかなかった世代」と「携帯やPHSがあった世代」とでは青春の恋愛体験に圧倒的な違いがあると思うのだ。

……あ、30歳以下の方の中にも様々な事情で携帯電話やPHSを持たずに中学高校時代を過ごした人がたくさんいることは、もちろんわかっております。おおまかな世間の傾向ってことね。それに僕が言いたいのは別に世代論ではなく、あくまでも「携帯電話がなかった時代の恋愛って大変だったなあ!」ってライトな感じなんです。

というわけで高校時代の恋愛を思い出してみる。あの頃、僕は男子校に通っていたため、違う高校の女子と付き合っていたのだが、とにかくデートどころか、学校帰りに彼女と会うことすら簡単じゃなかった。携帯がないため、前もって待ち合わせの時間と場所を正確に決めなくちゃいけないし、駅の東口と西口を間違えただけで、その日は結局会えなかったなんてこともあった。

今じゃ考えられないぐらい駅の伝言板も活躍した。色んなカップルが伝言板にメッセージを書いているため、伝言板が文字で埋め尽くされ、新たに書き込めるスペースがないという微笑ましい悩みもあった。

そう考えると、北条司先生の大ヒット漫画『シティハンター』も、あの時代だったからこそ生まれた名作なのだろう。伝言板に「XYZ」と書いたら冴羽遼と連絡が取れるなんてアイデアは、携帯がなかった時代じゃないと沸いてこなかったはずだ。

また、駐輪場に停めてある彼女の自転車に「どこそこで待っている」と書いたメモをおみくじの要領で結びつけ、待ち合わせにこぎつけるといった面倒くさい作業も日常茶飯事だった。深夜遅くに彼女の家の前まで迎えにいき、家の電話を鳴らすのが迷惑なので、彼女の部屋の窓ガラスに小石をぶつけて音を鳴らす……といった古い恋愛映画みたいなことも現実にやっていた。

そして、中でも僕が最も苦労したのが、当たり前だが彼女との電話である。

当時、彼女に電話しようと思ったら、家の電話を使うしかなかった。だから、よく彼女の父親に「どこの山田さんですか?」「娘とどういう関係ですか?」なんてことを厳かな口調で訊かれ、アワアワしたものだ。

さらに、山田家においては、そこにマイ母ちゃんという天敵が襲ってくる。とにかくマイ母ちゃんは、僕の電話を盗聴することに異様な執着心を持っていたのだ。

当時の山田家の電話はコードレスではなく、親機と子機が切り離せない旧式電話である。しかも自室に電話がなかったため、居間の電話を使うしかない。

かくして山田少年は夕食が終わり、家族がそれぞれの部屋に散り散りになった後の居間を狙って、ひっそりと彼女に電話をかける。しかし、そこから盗聴職人であるマイ母ちゃんとの熾烈なバトルが始まるのだが、それはまた次回。

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