32歳にもなってまったく女っ気のない暮らしをしている僕はここ最近、出会いを求めてキャバクラに出向いている。しかし、断わっておくが僕は別に結婚を焦っているわけじゃない。ここ数年あまりに彼女ができないため、このままだったら将来結婚できないんじゃないかと不安を抱いているのである。僕にとってキャバクラ婚活の動機は焦りではなく不安なのだ。

というわけで溝ノ口のキャバクラで出会った里田まい似のヒトミのことである。外見的にはかなりストライクだったため、僕は早い段階で次の質問をぶつけた。

「血液型は何型?」

これ実は僕的にはマストな質問なのよ。だってもし彼女がA型だったら、最初は良くても付き合っていくうちにどんどん嫌われていくに決まってるもん。

今までの経験上、A型女子は床に落ちた食べ物に3秒どころか30秒ルールをも適用させてしまう僕の習性やバターとジャムのスプーンを一緒にしてジャムをバター混じりにする僕の無頓着ぶりを見て三行半を突きつける危険性がある。A型女子のすべてがそうだとは限らないが、僕のネガティブ妄想は膨らむばかりなのだ。

しかし、そんな僕を嘲笑うかのようにヒトミはこう言った。

「A型だよ。それがどうかした?」

ガーン。いきなりかよっ。ドラクエでしょっぱなからボスキャラに遭遇してしまった気分。いや、マリオでキノコが欲しくてブロックを壊したら毒キノコが出てきたって感じか。A型女子の皆様、ごめんなさい。皆様を悪く言っているわけではなく、これは僕の感情なんです。

そうは言ってもヒトミはとっても気さくで話しやすく、A型というだけで圏外にするのはもったいない女子だった。もしかしたら、この娘は例外なんじゃないか? A型といっても両親のどちらかがAB型やO型だったり、兄弟にB型やO型がいたりすることで、B型の扱いにも慣れていたりして……。

「へえ、A型なんやぁ。でも、血液型なんかただの傾向でしかないから、あんまり関係ないよね。そもそも人間をたった4種類に分類するなんてナンセンスやん」

僕はそんなつまんない男が言いそうな月並な血液型否定論をあえてヒトミにぶつけ、様子を伺った。ちなみにこの手の理論をさも自分の意見かのように嬉々として語る男って、なんだか伊勢丹メンズ館で服を買って、深夜に『あらびき団』を観ながら笑いの研究をしていそうって思ってしまうのは僕の勝手なイメージである。

しかし、ヒトミはユルキャラのA型女子ではなかった。親兄弟も見事なぐらい全員A型で、血中A型濃度がかなり高いと予想されるサラブレッドだったのだ。

「私は血液型って信憑性あると思うよ。私自身もA型っぽいなぁって思うから」

ヒトミの言葉に僕はますます動揺した。ど、どの辺りがA型っぽいんでしょうか?

「私、自分でも嫌になるぐらい几帳面なんだよね。部屋は超綺麗だし、本棚の漫画とかも全部1巻から順に並べてあるもん」

あわわわ。絶対やばい。僕なんか『こち亀』やらがぐちゃぐちゃに山積みになっていて、たまに順番通り並べても「1巻、2巻、3巻、4巻、4巻、4巻、8巻、10巻、10巻、14巻……」って同じ巻が複数あったり、ところどころ抜けてたりするもん。やっぱ、そういうのって信じられない?

「ありえないっしょ」

もしそういう人が彼氏だったらどうする?

「私が全部整理整頓してあげるから大丈夫」

えっ、そうなの!? だったらそういうだらしない人でも付き合えるんだ?

「そりゃ好きになったら別だよ。私、超尽くすもん」

いいじゃん、いいじゃん。ってことはB型男子でもあり?

「それはない。B型とはうまくいったためしがないもん」

……こうして僕の恋はあっけなく散った。合掌である。

しかし、キャバクラ婚活の良いところは一人ダメでも、またすぐに次の女性と新たに出会えるところだ。次にやって来るキャバ姫様は何型なんだろうか?

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