前回までのあらすじ
超マイペース且つ大雑把なB型男子である僕の彼女は、あろうことか超几帳面なA型女子だった――。このエッセイは独身B型作家・山田隆道が気ままに綴る、A型彼女・チーとの愛と喧嘩のウェディングロードです。
このたび、僕とチーは本当に結婚することになった。結納は都内のホテル、結婚式は同じく都内の専門式場で行うことに決定した。どちらも来る大安の某休日だ。
式場選びはさすがに苦労した。こちとら結婚式について何の知識も経験もないものだから、専門雑誌を買って一から勉強したわけだ。定番のゼ○シーである。
しかし、これが余計に困惑した。雑誌を読むとあまりに情報が膨大すぎて、どれもこれも魅力的に見えてしまう。結婚式場もいいし、ホテルウェディングもいい。最近ではゲストハウスやレストランウェディングなんかも流行っており、僕のような熱狂的阪神ファンの中には、甲子園球場で挙式を行うカップルもいるらしい。
なるほど、たまにディズニーランド結婚式なるものを見かけるが、あれはおそらく新婦の趣味なのだろう。日本では結婚式に関するイニシアティブを新婦が握るケースが多いという。以前、学生時代の友人男性の結婚式に出席したときもそうだった。僕が知る限り、その彼は別にミスチルファンでもなんでもなかったはずなのだが、なぜか披露宴のBGMが全曲ミスチルだった。彼曰く、奥様が勝手に決めたとか。
そうなのだ。これはあくまで一般論だが、日本人の新郎には「結婚式は新婦が主役であり、新婦のためのもの」という認識があるのか、新郎側の意見はもっぱら金銭面が中心で、内容に関するこだわりは特にない場合が多いらしいのだ。例えばウェディングドレス選びが一番わかりやすい。新婦があれこれ悩んでいる一方で、新郎は「君が選んだものなら、俺はなんでもいい」とお任せするスタンスがほとんどだとか。確かに女性用ドレスのことを相談されても、男にはよくわからないのだろう。何にも意見がないというより、意見できるほど女性用ドレスに関心がないわけだ。
ところが、僕の場合はそうじゃなかった。はっきり言って、式場選びからチーのドレス選ぶに至るまで自分も納得できなきゃ絶対に嫌だ。世のカップルの中には新郎が仕事ばかりしている間に、新婦が一人で勝手に、あるいは新婦が母親と一緒に式場見学やドレス見学に励む場合も多いらしいのだが、そんなの僕的にはありえないとさえ思っている。何もかもチーにお任せするのではなく、僕も仕事の都合が許す限り、あらゆる見学や相談の場に参加したい。ちゃんと二人で決めたいのだ。
なお、式場選びに関する僕の最大のこだわりは「その瞬間の気持ちに捉われて、つい変わったことをしない」ということだった。つまり、自分たちの現在の趣味を必要以上に反映せず、できるだけゲストの皆さんにまんべんなく楽しんでいただけるようなニュートラルな式にしたい。間違っても僕が阪神ファンだからといって甲子園球場を式場に選ばないし、披露宴のBGMに『六甲おろし』をかけようとも思わない。
式場の立地もポイントだった。ゲストの皆さんにとって、アクセスが便利なところがいいだろう。海が見えるとか、そういうロケーションを重視しすぎると、新郎新婦だけが喜んでいる一方で、ゲストは意外に面倒くさいと思うかもしれない。
以上のことを踏まえると、結婚式場に関しては前述した都内の某専門式場が一番ベターだと思ったわけだ。他にホテルやゲストハウスも最後まで候補に残ったが、ホテルは式の最中に一般の宿泊客と顔を合わせる可能性が高く、それはちょっと抵抗があるという理由で断念した。一方のゲストハウスは装飾や演出の類を何から何まで新郎新婦で決められるという自由度の高さは魅力的だが、そのぶん持ち込むものが多くなり、値段がみるみる高くなってしまうから厄介だ。あくまで僕の意見です。
ちなみに今回の式場選びに関して、かなり役立ったのが某所にある『ウェディングコンシェルジュ』である。ネットで探せば全国にいくつか見つけられると思うが、ここは式場選びに悩むカップルの相談に乗ってくれるだけでなく、式場探しを代行してくれたりもする、いわゆる不動産の仲介業者みたいなところだ。結局僕とチーは雑誌やネットで式場を探すことを断念して、途中からそっちに走ったわけだ。
個人的には雑誌で探すよりも、最初からコンシェルジュの門を叩いたほうが効率的だと思った。コンシェルジュのいいところは不動産の仲介業者と違って、仲介手数料が発生しないところだ。もしコンシェルジュの仲介を通して、新郎新婦と式場が契約を成立させたら、新郎新婦が式場に払う金額の中から一定のパーセンテージ分を式場がコンシェルジュに支払うというシステムらしい。要するに新郎新婦が相談するぶんには無料なのだ。もしかしたら僕が相談したコンシェルジュだけがたまたまそういうシステムであり、他のコンシェルジュの類は多少異なるのかもしれないが。
なお、コンシェルジュとの相談の場で僕はチーの五倍は喋り倒した。男のくせに式場選びにピーチクパーチク意見するのは少々恥ずかしい気もしたが、口が勝手に動いたのだからしょうがない。担当者曰く「こんなに喋る新郎さんは珍しい」とか。
さすがのチーも呆れていた。挙句、「うるさい」と怒られましたとさ。
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