3児の良き父でもあるJ.J.エイブラムス
撮影:石井健

観客の好奇心をあおるハイクオリティな作品を独創的なプロモーション活動でヒットに導くJ.J.エイブラムス。制作&監督最新作『スター・トレック』が米国公開後わずか2週で興行収入1億4,761万ドルを突破、欧州や南米も合わせると2億ドル間近という大ヒットぶりを目の当たりにすると、映画作りにおける彼の豪腕ぶりがいかに凄まじいものであるかということがよくわかる。

最近よく耳にするJ.J.エイブラムスという名前。彼は一体何者なのか、と問われたら一言ではとても答えられない。映画監督でありプロデューサーであり、テレビドラマの仕掛け人、作曲家、脚本家……と実に様々な顔を持つ人物なのである。それは同時に多彩な才能を併せ持っていることと同義であり、「天才」の呼び名を欲しいままにしているのも頷ける。彼がどのような経緯で現在の名声を手に入れたのか。まずは生い立ちから俯瞰してみよう。


J.J.エイブラムス、本名ジェフリー・ジェイコブ・エイブラムスは1966年6月27日、ニューヨーク州で生まれた。父は100以上のテレビ映画を手がけたプロデューサーのジェラルド・W・エイブラムス。家族でロサンゼルスに引っ越し、8歳のときユニヴァーサル・スタジオの見学ツアーに参加したことをきっかけに映画ビジネスに強く憧れるようになる。幼稚園時代からの友人グレッグ・グランバーグを主演俳優に据えて自主制作映画を撮り始めたのはその1年後だった。ちなみにこのグレッグ・グランバーグはのちにJ.J.の作品である『フェリシティの青春』『エイリアス』などに出演し、一躍スター俳優となる。

数々の映画コンテストに手当たり次第に応募していた14歳のとき、スティーヴン・スピルバーグの学生が撮った映像を編集する仕事が舞い込む。ギャラは100ドル。1年後には映画『Nightbeast』の劇中音楽を作曲し、自作の脚本をプロダクションに売り込むまでになっていた。この脚本は『Taking Care of Business』(1990)というタイトルで映画化された。主演はジェイムズ・ベルーシ。翌年書いた脚本はハリソン・フォード主演の『心の旅』(1991)として大ヒット。メル・ギブソン、ジェイミー・リー・カーティスが共演した『フォーエヴァー・ヤング 時を超えた告白』(1992)の脚本を担当したときには25歳にして200万ドルの小切手を手にしていた。

1998年、『アルマゲドン』を共同執筆し名実共にヒットメイカーの仲間入りを果たしたJ.J.は友人のマット・リーヴスとテレビドラマの制作に乗り出す。この『フェリシティの青春』は4シーズンに渡り放送され、大成功を収めた。

世界はJ.J.の一挙手一投足に注目し、彼が発信するすべてのモノは驚きと賞賛をもって迎えられる。次回からは彼を語る上ではずせない代表作をご紹介していこう。