コロナ禍で過去実績は無駄になった
コロナ禍が40男の転職市場にも直撃しています。ただでさえ厳しく狭い市場だったのに針の穴程の狭き門に。過当競争は激しさを増すばかり。コロナ禍で会社の倒産やリストラリスクが高まっているからです。
狭き門ゆえに、過去の実績を具体的に積み上げて即戦力であることをPRしたくなる気持ちは分かりますが、ここに罠があります。あなたの輝かしい実績はコロナ禍以前の「過去」のもの。ガラケーのノウハウはスマホの時代に通用しないことと一緒です。
今欲しい人材は過去の栄光ではなく、WithコロナやAfterコロナの時代を切り開いていける人材。ご安心ください。コロナ禍は世界中初めてのことで誰も正解を持っていません。正解を作れる可能性を感じてもらえればいいのです。早速解説します。
今までの常識はすべて捨てる
「営業は足で稼ぐもの」と新人にヒラメ筋を自慢する企業CMは見たことがあるでしょうが、笑えない現実です。コロナ禍で対応できるように仕事が変化しています。
飲食業が分かりやすいでしょう。ウイルス対策しながら耐えしのいでいるだけでは未来がありません。ソーシャルディスタンスで客数が半分になれば売り上げも半分になるからです。そもそも、リモートワークが進み、会社から会食を禁じられているのでサラリーマンは以前のように気楽に職場のメンバーと飲みに行けないので客数そのものが減ります。
そこで、テイクアウトや通販に力を入れざるを得ない。そうなると、インスタなどSNSで新しい顧客をつかんでくれる人材が欲しくなるのは分かるでしょう。
コロナ禍は一時的な我慢では済まず、業態も変えてしまうのです。残酷なことに、一度消えた仕事は戻ってきません。レジもどんどんセルフ化が進み、Amazon GOのように無人化に向かっています。無人化が定着すれば人がレジを打つ仕事は無くなり、戻ってきません。
昔は改札で切符を切る駅員がいましたが、今はSuicaなどの電子対応。テクノロジーは効率的に便利にするので元に戻る理由がないからです。
テクノロジーは優しい顔をして近づいてきますが、人の仕事と置き換わり、奪っていきます。今回、その変化が一気に加速している感覚はあなたも気付いているでしょう。頭では分かっているけど、やめられない、「変われない病」は40男をむしばんでいます。
「どうすれば実現できるか?」を考える人だけ生き残る
自分に置き換えてみましょう。リモートワークは一時しのぎ。コロナ禍は収束し、また会社にみんな集まって仕事するのが一番、と考えている40男に転職先はありません。
今のご時世、リモートワークでマネジメントすることに抵抗がない人材でないと次の転職先は無いことは頭では分かるが抵抗感がある人も多いのではないでしょうか。それはいたしかたないのです。人の脳は過去の成功体験を記憶し、無意識でもそれを繰り返す習性があるから。
思い切ってラクになりましょう。過去の成功体験・常識を一旦全部なかったことだと割り切りましょう。その上で、これからどんな人材だったら仕事があるかを洞察すればいいのです。出勤形式でのマネジメントはもちろん、よりハイコンテクストなリモート環境でのマネジメントができないと仕事にならないことは少し考えれば分かること。
大事なのはその次。「どうすればそれが実現できるか?」という視点だけで考えることです。できない理由は考えないこと。過去の成功体験を中心に幾つも理由が上がってきます。遅刻の理由が頭に山のように浮かぶのと一緒です。
「できない理由を論理的にしっかり伝える人」は頭がいいかも知れませんが、変化のタイミングで時代を切り開く時には1ミリも役に立たないことは、この連載の読者なら気付いているでしょう。
過去に数多くの業務リストラや、数千人のリーダー選抜・育成に関わりましたが、正解がない時代に道を作れる人はすべて「どうすればそれが実現できるか?」という視点でしか発想しません。
織田信長も不利な状況でもどうすれば勝てるかという視点で考え、桶狭間の戦いでの奇襲を思いついたのと一緒。それがこれからのセオリーになります。
子どもから素直に教えてもらう
自分の過去の経験から解決策を探ると過去の焼き直ししか出てきません。インプットが必要です。若い人から学びましょう。デジタルネイティブで育った人が無意識でやっていることが、これからの時代を動かすヒントになることは気付いているでしょうか。
40男がやりがちなのは、入門書やネットの記事を読み漁り、一から自分で学ぼうとすること。9割は挫折します。頭で理解しようとするからです。
エンジニアを今から目指すのであれば止めませんが、テクノロジーは理解するのではなく、やってみて得られる感情がネット時代ではキーになっています。
メルカリ、Uber Eatsなど、「知ってはいる」「アプリをインストールしてはいるけど、使ったことがない」は論外。テクノロジーは使ってみて、物理的な便利さと楽しさの両方に気付くことができます。まずは恥ずかしがらずにやってみること。
職場の若手に聞けないなら、自分の子どもに聞くのが手っ取り早いです。動画編集など、中学生以上であればスマホがあれば一瞬で仕上げてしまいます。難しいプログラミングを知っているのではなく、マニュアルなしでもアプリを簡単に使えるのと、土地勘があれば他のアプリでも同じようにできるからです。
オンラインゲームもいいでしょう。ネットの中でどこの誰かも分からない人と出会い、交流し、時にはけんかし、マネジメントやチームワークを発揮していくことは、リモートワークのマネジメントにも通ずるものがあります。「フォートナイト」(Epic Games)という世界的に流行しているネットゲームを親が子どもに教わりながら一緒に楽しんでいる人も多いです。
インプットを踏まえ「ありがとう」の声をアップデートする
その上で、もう一度、基本に戻りましょう。変化を起こせる可能性を秘めた人は次の転職先が見えたら、自分の持ち味を生かした「ありがとう」の声をアップデートするべき。詳しくは本連載の「『ありがとう』を持ち味にした自分の売り込み方」で解説しています。
ビフォーコロナと1点違うのは、正解がない時代なので、「ありがとうの声」も実績ではなく「できそうだと」と可能性を感じて貰えれば十分です。求人先も初めての経験なので正解を持っていません。
可能性を感じてもらうには過去・現在・未来で自己紹介すればいいことを本連載「面接では自分の価値を『現在、過去、未来』で語れば成功する」で解説しました。
「自分をアップデートしながら、一緒に正解を作っていけそう」と未来の可能性を相手に感じて貰えれば勝ちです。同じ求人なら、40男の方が実績と経験があるので、可能性と実績を組み合わせれば、若い人には負けないことを保証します。