新型コロナウイルスが世界経済まで肺炎状態にさせる中、閉店、倒産、リストラの声があがりはじめ、40代はリストラの陰に怯えているでしょう。
ご安心ください。これからの時代の「40男に求める要件」つかめば、大丈夫です。
テレワーク等、新しく身につけなくてはいけない知識やスキルもありますが、今まで培ってきた強み、経験、スキルの売りを捨て、新たに組み立て方をガラリと変え、今の時代に合わせれば簡単です。ただ、掘り起こしにはコツと時間が少々かかります。
この連載では、40男が「いつまでも転職できる武器」を手に入れ、不測の事態に備えるコツを解説します。
普通の人は「過去」「現在」に固執する
前回の記事で語った通り、40男は、自己PRで雇ってもらう発想から、幹部として「迎え入れられる」発想への転換が大事。では、どのように自分を伝えれば転換できるのか。実は簡単で、「現在、過去、未来」で自分の価値を伝えればいいのです。
現在:現在の仕事(会社名、役職、役割など)
過去:価値を提供できることを証明する根拠や実績(根拠となるノウハウや実績)
未来:現在、過去を踏まえ、その会社にどんな価値を提供できるか(提供価値)
現在・過去・未来は3つで1セットです。一つひとつがバラバラではいけません。
現在だけでは名刺交換と同じです。「シャープで30年勤務した技術者」と自己紹介しても、「ソニーで31年~」「パナソニックで~」という他の応募者がいれば、採用担当からすると違いは少なく、差別化できません。なぜなら、求人案件に対して、同じようなスペックの求職者が集まるからです。
そして、過去だけだったら「私は、こんな凄い実績があるのです」という自慢話にしかなりません。普通の人は、この現在と過去までを熱心に細かく語り、かえって自分の価値を下げています。
いわば、薬局に風邪薬を買いに来た人に、「この風邪薬の成分の〇〇には〇〇という効果が……」と、いちいち、細かくあらゆる内容を説明するのと一緒です。
薬であれば相手から「一番安いのは?」「喉の痛みに効くのは?」とニーズを言うので、合わせれば良いのですが、採用面接の時は違います。
まして、新卒採用や若手社員と違い、幹部クラスで迎え入れるかを判断するのに具体的なニーズは言いません。
「部長職として機能できますか?」「可能です。なぜなら、現在、会社で部長の職務を行っています」というように、「できます! 実績があります!」という返事が来ることは明らかだからです。
幹部採用のキーは「未来」
キーは「未来」と、その伝え方。若手や中堅社員は実績が十分でない分、「〇〇で貢献できます!」など、無意識のうちに「未来」を語り、ポテンシャルを感じてもらう伝え方でOKです。
しかし、実績や経験がある40男の場合、逆にそれらが邪魔をします。幹部クラスで転職する人材だと、実績があるのは当たり前。そのため、「これだけ実績があり、今があるから、あとは察してくれ」となりがち。自分の仕事を黙々とこなすことに慣れすぎて、普段は自分がどんな価値を提供しているかを意識しないことで、自らを語る言葉が出てこないとも言えます。
未来をより確かなものにするには、現在と過去が重要です。「〇〇できます!」だけでは、多くの採用担当は本当? と思うでしょう。取って付けたものでなく、相手が納得でき、再現性を感じる実績とノウハウが40男の転職には必須なのです。模範解答を紹介しましょう。
メンタル不調や、それが原因で退職する女性社員が多い成長企業に応募するケース
「女性社員のメンタル不全をなくし、生き生きと活躍していただき、結果退職率を改善できます(未来)」
「私は25年間プロジェクトを担当していますが、メンタル不調になった女性メンバーは一人もいません。関わった数は累計〇〇名で、今も元気に活躍しています。私は祖母、母、姉二人、妹二人に囲まれた家庭に育ち、子どもの頃からどう接すれば人間関係やコミュニケーションがうまくいくか、叩き込まれました」
「男性マネジャーがやりがちなミスと、どうすればうまくいくのかを30のポイントでまとめました。社内で広めた結果、全社の女性メンタル不調者も退職者もゼロになったので御社でも同じ結果を出せるでしょう」
いかかがでしょうか。提供価値を証明する実績と根拠をセットで示すことで、「この人が入ってきたら我が社もこう良くなりそう!」と相手はイメージできるので、その他大勢から抜け出すことができるのです。
現在・過去・未来は並び順ではなくセットです。話す順番に決まりはありません。「どんな価値を提供してくれるか聞きたい」「じっくり実績を聞きたい」など相手が興味・関心あるところから答えれば良いのです。
現在・過去は共通で、未来だけ使い分ける
提供価値やその根拠は相手によって変わります。慣れれば瞬時に組み上げられますが、事前に書き出して整理しておくことをお勧めします。
まずは、自分のメインキャラを「過去・現在・未来」と整理しましょう。その上で、相手に応じて調整するのがラクで速いです。私を例に解説しましょう。
私のコンサル対象は2種類で、1つが企業(事業コンサルティングや研修を提供)、2つ目は個人のビジネスパーソン(仕事術や働き方、キャリアの考え方やノウハウ提供)になります。今回はこの連載の読者である40代男性に向けた内容です。
現在:コンサルタントとして独立し、人事分野のコンサルティングとリーダー選抜、研修講師、ビジネス書の執筆、講演を行っています
過去:なぜなら、マーサー、アクセンチュアなど600社以上の人事改革、5万人のリストラと7,000名以上の次世代リーダーの選抜と育成を通したコツを知っているからです
未来:あなたの職業人生の価値の取り出し方を変えることで、アラフォー以上でも選ばれるキャリアの組み立て方をお教えします
いかがですか?
未来は相手がワーキングマザーなら、そこに向けに提供できること、第二新卒なら同様に変えればOKです。
人は「自分に関係することに一番の興味・関心」を持つので、「私にどんな価値を提供してくれるのか」を伝えることで必ず、相手にポジティブに覚えてもらえます。
「大人の自己紹介」と私は呼んでいますが、転職だけでなく、あらゆる自己紹介の場面で使えます。「過去・現在・未来」、大人の自己紹介、効果てきめんなのでお勧めです。