40男は古田新太を目指せ

人生100年時代とはいえ、40男に残されて時間はあまり多くありません。日系企業なら55歳で役職定年になってしまうことが多いからです。今から学び直しをするにしてもハーバード大学にMBAを取りに行ける時間とお金の余裕がある人も少ないでしょう。

では、そもそも論になりますが、40男はどんなキャリア感を目指せばいいか。俳優の古田新太さんを目指しましょう。古田新太さんは超個性派俳優で、オファーが常に引く手あまた。半沢直樹ではキーになる脇役、CM、舞台、ドラマの主役、お笑いやトーク番組でも自分の個性というも持ち味をベースに活躍しまくっています。

持ち味がベースなので、ライバルはいません。唯一無二の存在で、自身の生かし方を本人も相手も分かるからオファーが途切れないのです。「イケメンだけ」の俳優であれば代わりはたくさんいます。年を重ねると若いイケメン俳優にポジションを奪われてしまうことは世の常。

これはビジネスのキャリア構築でも一緒です。学歴や実績だけでなく、自分らしさを全開放し、相手が望むことに応えることができれば、自然と世に合わせたアップデートも付いてくる好循環になります。これは一社に勤め上げるキャリアの考え方では実現しません。なぜなら、日本企業の大多数はアスリート型の発想をしているからです。

  • 持ち味を生かし働けていますか?

従来のアスリート型から役者型に変わる

従来の役職の序列(と極一部の専門職)を中心にした人材マネジメントは、「アスリート型」。優勝や金メダルなど「1位」を目指し、いい意味で競争、切磋琢磨し、レベルアップしていくモデルです。

ベテランになり、若い選手にかなわなくなれば引退。例えば力士の場合、引退すれば現役時代の職位に応じ、横綱なら親方、十両未満ならちゃんこ屋など、引退後でも活躍できるキャリアの選択肢が存在しますが、残念ながら企業ではこれがありません。

外資系企業だと、引退状態になれば他の会社に移って同じように活躍することも可能ですが、日系企業では引退後も「同じ土俵に入れたまま」にするのでややこしくなるのです。

それを避けるため、40男はアスリート型ではなく「役者型」を目指しましょう。古田さんを例にすると、個性の生かし方が分かり、映画、ドラマ、お笑いなどキャラに合った仕事が幅広くオファーされ、評判が広まり再度起用され、どんどん自分のキャラにあった仕事が増える好循環。

そう、これはビジネスパーソンでも一緒です。パラレルワーク、副業、転職など、キャリアのオプションを複数選べる状態になります。それにはパーソナルブランディングを確立し、必要とされる場所に届けば、自然と本人に向いた、やりたい仕事が舞い込むようになるでしょう。

  • アスリート型と役者型のキャリアの違い 図版作成:松本利明 画像素材:PIXTA

自分らしく強くなれる人

本連載では、40男の逆転の転職術という視点で解説してきましたが、実はこれからの時代のパーソナルブランディングについて転職目線で解説してきました。今回の連載の内容を実践すれば、誰でも自分のブランドが確立し、オファーが選び放題になります。

ポイントをおさらいすると、キャリア観を「北斗の拳からワンピースへ」シフトすること。北斗の拳の世界では拳法はたくさんの流派があり、かつ、北斗百裂拳以外にも、たくさんの技を身に付けねばならず、習得まで時間が必要。

ラオウやケンシロウ級が駆使する「秘奥義」まで修得するとなると、子どもの頃から修行にだけ明け暮れるほど時間がかかり、変化が激しい時代では対応しきれません。

ところが、ワンピースは悪魔の実を食べるとその能力者になります。ルフィーはゴムゴムの実を食べてゴム人間となり、その持ち味であらゆる局面を乗り越えるしかありません。

悪魔の実は2つ食べられないので、自分の持ち味を生かして強くなるしかないのです。逆に言うと、自分に向かない能力や技にあこがれても身に付けるのは困難。ボアハンコックのメロメロの実の能力のように相手の目をハートマークなるくらい魅了し、その瞬間石に変えることはあこがれても、ゴム人間にはできません。

つまり、自分の持ち味に沿ったスキルや経験という武器を仕入れ磨くことしか選択肢がないので割り切れます。どんな変化がおきても持ち味を基軸に乗り越えることに集中すればいいので無駄な悩みや、遠回りすることは激減するからです。

自分の持ち味の探し方

まさに古田新太さんは、3次元でワンピースの世界を体現しています。では、どうすれば古田新太さんやルフィーになれるか。ゴムゴムの実のように自分の持ち味を最初に発見すること。持ち味は資質とも呼ばれ、諸説ありますが、DNAで半分、25歳くらいまでで固まる特徴で、後天的には変わりにくいものです。

持ち味の見つけ方については、以前の「『ありがとう』を持ち味にした自分の売り込み方」に詳しく解説しました。自の強みがそれでも見つからない場合、人の持ち味や魅力はコンプレックスや欠点の中に潜んでいるもの。「欠点やコンプレックスを自分の魅力として『持ち味』とする方法」で発見できるしょう。欠点やコンプレックスを乗り越えるヒントにもなります。

それでも、自分の持ち味がしょぼく、戦えないという場合、数ある持ち味を組み合わせればオリジナルの存在になれます。詳しくは、「自分の強みを『掛け算』で考えると失敗する」「小さな魅力もコンボすると『大きな魅力』としてアピールできる」で持ち味の組み合わせ方のコツについて解説しています。

今は良くも悪くも「すべてがつながる」時代になりました。自分の過去を無かったことにはできず、情報が必ず付いてきます。逆に言うと、自分のキャラを知り、生かし方を知れば、おのずとあなたに向いた好条件のチャンスが年齢にかかわらず回ってくるようになりました。


コロナ禍でも必要以上におびえ、恐れる必要はありません。まずは、自分のキャラを知り、生かし方を知り、生かせる場所を見つけ、そこへ向かうことは人生を最大限で豊かにするだけでなく、もっとも職業人生のリスクを無くせます。では、また、お会いしましょう。