高卒で自衛隊に、その後大学生活を経て現在会社員として働いているIさん。前編では自衛隊時代から、現職に至るまでを聞きました。

後編では、都内を中心に室内サバイバルゲーム(以下、サバゲ)フィールドを運営している「ASOBIBA」の中身はどのようなものか、聞いてみます。

『遊び全般』が事業領域

――「ASOBIBA」での具体的な業務は何でしょうか

店舗運営と企画です。その日に店舗に集まった人たちのゲーム進行をしたり、その準備をします。お客さんとのコミュニケーションも大切な仕事です。初心者でも楽める環境を提供するのが会社の存在意義なので、お客さん同士を繋げて新しいコミュニティを作っていかないといけません。あとは新しいゲームを考案したり、店舗の装飾を考えたりすることもメインの仕事です

――まさにサバゲフィールド運営が仕事なんですね

いえ、会社全体で言えば、もっと視野を広く持っています。『遊び全般』が事業領域だと思ってもらえると嬉しいです。やっぱりトレンドを追いかけて仕事に生かさないといけませんし、逆にニッチな遊びを広げて事業化しようという意識も必要です。『サバゲフィールドを運営する会社』だと思っていてはいけないと日々、自分にも言い聞かせています。

――じゃあ、もし入社したい人がいたら、会社の方向性を理解しておいたほうがいいですね。Iさんは入社して面接時点とのギャップはありましたか?

かなりありました。何かやりたいと思っていないと、すぐに社内ニートになります。常に向上心を持って、店舗や事業を良くする気持ちがないといけません。しかし、ベンチャー企業では当然ではないでしょうか

――与えられることだけをやっていればいいわけではないんですね

『これをやって』と上の人に言われるのは『試されている』と思うようにしています。失敗してもそこまで咎められないので、意欲的でいればいいのではないでしょうか。小さいことでも成功すれば、次はもう少し大きいことをやらせてもらえますし。要は積み重ねですね。

自衛隊の経験を生かして

――これから、どうなっていきたいですか?

自衛隊の経験を生かして、サバゲを正しく広めたいです。怖い遊びだと思われていますが、注意事項とマナーを守ればとても楽しいので、サバゲが老若男女が楽しめるものにしたいです。純粋な初心者が楽しむためには『安全と安心』が何よりも重要だと思います。それに加えて、さっきも言ったように会社は『遊び全般』を事業領域と捉えているので、トレンドを意識しながら、たくさんの人が夢中になれる遊びを、何か事業化したいです。

――ちなみに、ぶっちゃけ待遇はどうですか?

決して給料が多いとはいえないと思います(笑)。でも食いっぱぐれるようなことはないので、今は趣味と実益を兼ねて、楽しくやれていますね。

――サバゲに興味があるけど経験がない人に向けて、何かメッセージはありますか

怖いイメージがあるかもしれませんが、一人で来店しても楽しめます。自分と同じように初心者の人がいるので、友達になってしまえばいいです。とりあえず飛び込んでいただいて、スタッフと話してみてください。丁寧に1から10まで教えます。サバゲの正しい形を伝えていきたいので、初心者にこそ、来てほしいくらいです。

――僕も行ってみたいです! ありがとうございました!

まとめ

実は彼は筆者の小学校からの幼馴染で、彼のことはよくよく知っています。自衛隊時代にも会っていました。

特殊な経歴を持っている人と話してみて、よく感じることがあります。
それは本人は自分自身が特別なキャリアを持っているとは思っていないことです。

キャリアはほとんどの人にとって『偶然を調整しながら積み重ねたもの』です。特に会社員の場合、自分ではコントロールできないもの(例えば配属・異動)が確実にありますが、それをどれだけ自分の武器に変えているかが社会人としての肝です。
彼も自衛隊に入隊した頃に、現職に就くとは絶対に思っていなかったと話しています。

根拠のない興味関心から始まって、それを調整して、育てて、積み重ねていった結果が、将来になっていきます。
寄り道が必ずしも無駄に終わることはありません。
生かそうとする人が、どんな過去でも生かすのではないでしょうか。


武野光
平成2年生まれ。「TOEIC未受験」「サークル未所属」「友達の数が片手未満」といった状況から就職活動に挑み、その体験から得た教訓をつづったブログ『無能の就活。』が大きな反響に。現在はサラリーマンと兼業で作家活動を行う。著書に『凡人内定戦略』『凡人面接戦略』(中経出版)、『就活あるある ~内定する人しない人~』(主婦と生活社)など。マイナビ2016でも、マンガ『キミ! さいよー』(石原まこちん/小学館)内で、一言コラム平成ベビーの就活用語辞典掲載