毎日40度近くまで上がる気温。コロナ対策とともに熱中症対策の呼びかけを聞く一方で、「今夜は熱帯夜だわ! 」という幼少期の母の声を思い出します。最近聞かなくなりましたが、そもそも熱帯夜とは何だったのでしょう。
熱帯夜とは、夕方から翌朝までの最低気温が25度以上のこと指すそうです。毎日熱帯夜では、話題にも上らない言葉になったのも納得です。いったいいつからこんなに暑くなったのでしょうか。
気温の推移と気候変動
下図は、日本の年平均気温の偏差、つまり平均気温からのブレ幅です。特に1990年後半から、暑い方向に振れる傾向があります。
世界的に見ても同じ傾向にあります。18世紀中頃から19世紀にかけた産業革命以降、気温が上昇していると言われています。
環境省は、1931年以降、最高気温35度以上という猛暑日の日数が明確に増えていると発表しています。産業が発展することにより温室効果ガスの排出が増えて温暖化が進んだことにより、世界中で洪水や干ばつ、大雨などの自然災害が起きていると言われています。日本でも2019年、2020年と続けて集中豪雨があり、特に今年は梅雨が明けるのが大変に遅かったことは記憶に新しいことでしょう。このような気候変動について、どのような取り組みがなされているのでしょうか。
気候変動への世界の取組み
以前より、気候変動についての国際会議はありましたが、特に注目されているのは2015年11~12月にかけて開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)。パリ近郊で開催されたため、パリ協定とも呼ばれています。パリ協定は、温室効果ガス排出の中心となってきた先進国だけでなく、全ての国が温室効果ガス削減などへの取組みに参加をすることが初めて合意されたという点で大変注目されました
温暖化に対して何も対策をしない場合、21世紀末にはRCP8.5、つまり産業革命前に比較して4℃前後の気温上昇が見込まれています。非常に厳しい対策をした場合でもRCP2.6、2℃未満の上昇が見込まれています。すでに以前のような気温に戻すことは難しいものの、何とかして産業革命前に比べて2℃未満の上昇に抑えようという具体的な数値目標などがパリ協定で示されました。
とはいえ、実際に温室効果ガスをどのように削減していくのかは大きな課題です。ここでは代表的な取組みをご紹介しましょう。
SDGs(Sustainable Development Goals)
SDGsは、2015年9月の国連総会で採択されたグローバルな「持続可能な開発目標」です。気候変動への対応だけでなく、経済的不平等の解決、イノベーションの推進、持続可能な消費の実現、平和と正義の実現など17の目標が設定されています。各企業が17の目標から取り組む項目を選定し、ホームページなどで発表したり、SDGsバッジを付けている方を目にしたりすることも増えています。
ESG(Environment Social Governance)
ESGは、E(Environment:環境)、S(Social:社会)、G(Governance:企業統治)を表しており、環境課題、社会的課題、企業統治に関する企業の取組み姿勢を評価するものです。利益のみを追求して、例えば、環境破壊につながる行動をとったり、途上国の工場で劣悪な環境で現地の人を働かせていたり、社員を大切にしなかったりといったことは当然してはならず、また企業ぐるみでの不正などが起きないようにきちんと企業統治をしていくことを求められるようになりました。投資家や金融機関は、利益を求めて企業に投資をしますが、最近では企業のESGへの取組みについても注目した上で投資をすることが求められています。
PRI(Principles Responsible Investment)
投資顧問や保険会社のような機関投資家は、非常に大きな資金を動かして投資をします。どの企業に投資をするかなどを決定する際には、利益のみの追求ではなく、ESGの理念に基づいて投資をする「ESG投資」を求められるようになりました。そのため、投資先の決定にESGの理念を組み込むことや、投資先にESGに関する情報開示を求めることなどを宣言する「国連責任投資原則(PRI)」が2006年に国連から提唱されました。2020年4月時点で、全世界では3,054社、日本では年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など82社が署名しています。
ESG投資は、日本でも飛躍的に増えているとはいえ、先進国に比較するとまだまだ遅れています。投資家としては、環境のため、世の中のために投資をするのではなく、利益を得るために投資をしたいというのが本音でしょう。
ですが、本当に環境をはじめとした様々な課題に対峙していると利益が減るのか、これについてはまた改めてご案内しましょう。私たち個人投資家は、機関投資家のように大きな資金を動かすわけではありませんが、投資先を探す際には、ぜひESGを思い出したいものです。