「ウチの親、ぶっ飛んでるところあるんだよね……」と思い当たること、一つや二つはありますよね。筆者は、高校生になったときに「もう、家の中だけでやっていいことと、外では絶対やっちゃいけないことの区別、つくわよね?」と"品行方正"な親に確認され、目の前でケーキのクリームのついたお皿をペロっと舐められた衝撃を忘れられません。その後も時々、「こんな一面があったんだ……」ということが両親ともあります。

お金の面で見ていくと、高齢者世帯の8.2%に借入金があるということが平成28年の国民生活基礎調査(厚生労働省)で公表されています。一方で、貯蓄がない高齢者世帯は15.1%。これらのデータからは、貯蓄のない世帯だけが借金をしているかどうかまでは読み取れませんが、亡くなったときに借金が残ってしまう高齢者もいるでしょう。

借金の行方

残った借金は、相続人である配偶者や子供等が引き継いで返済することが原則となっています(団体信用生命保険つきの住宅ローンは除きます)。この引き継ぎを拒否するためには、亡くなった日から3カ月以内に家庭裁判所で放棄の手続きを行う必要があります。

ところが、親に借金があることを知らなかった場合、放棄の手続きをしそびれてしまいます。3カ月を過ぎてから借金が発覚しても放棄はできません。そんな事態を防ぐには、ただ一つのことをするだけです。

念のために絶対やるべきこと

貸し金業者は私たち消費者にお金を貸すと、指定信用情報機関に個人情報や貸付残高等を提供することが義務付けられています。どの貸し金業者で借りたとしても、一人の人の借金に関する情報は指定信用情報機関にまとめられているのです。つまり、指定信用情報機関に問い合わせをすると、親に借金があったかどうかを確認することができるのです。

現在、日本にある指定信用情報機関は2つ。日本信用情報機構(以下JICCと表記)とシーアイシー(以下CICと表記)です。本来、信用情報は本人だけが開示請求できますが、本人が亡くなった場合、配偶者または2親等以内の血族(子、孫、親、祖父母、兄弟姉妹)で相続人となる人等ができます。

開示請求の手続きに必要なもの

郵送または窓口で開示請求できますが、郵送の場合は10日ほどかかります。手続きに必要なものは以下のとおりです。

(1)信用情報開示申込書
JICC/CICの窓口またはサイトよりダウンロードして入手

(2)手数料
・郵送の場合は定額小為替証書1,000円(ゆうちょ銀行で購入)
・窓口の場合は現金500円

(3)手続きする方の本人確認書類
運転免許証やパスポート、マイナンバーカードのコピー等
※CICの場合は2点必要

(4)親族関係が確認できる書類
戸籍謄本等

(5)亡くなっていることが確認できる書類
戸籍謄本、除籍謄本等

郵送先はそれぞれ以下のとおりです。

JICC
〒530-0003
大阪府大阪市北区堂島1-5-30 堂島プラザビル6階
日本信用情報機構 開示窓口

CIC
〒160-8375
東京都新宿区西新宿1-23-7 新宿ファーストウエスト15階
シー・アイ・シー 首都圏開示相談室

窓口はそれぞれ以下のとおりです。

JICC(全国2カ所)
東京窓口
〒101-0042
東京都千代田区神田東松下町14 東信神田ビル2階

大阪窓口
〒530-0003
大阪府大阪市北区堂島1-5-30 堂島プラザビル6階


CIC(全国7カ所。代表的な場所は以下のとおりです)
首都圏開示相談室
〒160-8375
東京都新宿区西新宿1-23-7 新宿ファーストウエスト15階

近畿開示相談室
〒530-0001
大阪市北区梅田3-4-5 毎日インテシオ 5階

特に、自由に動ける元気で"ヤンチャ"なご両親が亡くなった場合や突然亡くなった場合には、必ず確認すべきでしょう。また、借金の有無と親子関係の良し悪しは別の問題です。子供に心配をかけないよう、一時的に借りたまま亡くなってしまうこともあります。

とはいえ、仮に借金があって放棄の手続きをすると、何一つ受け取ることができなくなります。借金を返済してあげるという選択肢ももちろんアリです。問題は、放棄の手続き期間も終わり、そして返済してあげるだけの余力がない場合。亡くなった親御さんが天国から心配して"ごめんね……"と謝り続けることのないよう、最後の親孝行だと思って信用情報の確認をしてみてください。

執筆者プロフィール : 国分さやか


お金の教室 おさいふほんわか心もほんわか 代表
創価大学教育学部を卒業後、旧日本興業銀行の保険代理店や政府系金融機関に従事。"得をする方法を知りたい!"という一般生活者が多いものの、実は金融知識の不足から損をしている場面、しかも損をしていることにすら気付かない場面があまりに多い現実に問題意識を抱く。これを解消することを決意し、金融教育に携わる仕事を希望してFPの資格を取得。金融資産が増やすことだけでなく、幸福度数も増えることを大切にしている。現在、個人相談業務と並行して、金融の基礎知識を学ぶためのセミナーやFP資格講座、高校・大学、企業への出張講義などで活動中。


2013年
・第4回日本一のマネー講師決定戦E1グランプリにてグランプリ受賞
・第4回FP向上のための小論文コンクールにて奨励賞受賞
2014年
・三省堂より初めての出版(その後、学研出版等より計5冊の出版)
・日本FP協会電話相談員
・資格の学校TAC専任講師
2015年
・NHKラジオ「午後のまりやーじゅ」「ごごラジ!」お金のコーナー担当
2016年
・日本FP協会パーソナルファイナンスインストラクター

<保有資格>:CFP、FP技能士1級、相続アドバイザー2級、小学校教諭第一種、幼稚園教諭第一種