2019年10月より、消費税率が8%から10%に上がります。そのため、高価な買い物は消費税増税前にすべきだという声をよく聞きます。高価な買い物の代表的なものは住宅でしょう。ですが、本当に消費税増税前に住宅を購入した方が得なのでしょうか。

住宅購入時にかかる税金

住宅を購入すると、消費税だけでなくさまざまな税金が必要です。主な税金は以下のとおりです。

・印紙税

契約書に記載される金額に対して課税されます。契約金額が1,000万円超5,000万円以下の場合、本来2万円であるところ、2020年3月31日までの作成であれば1万円。契約書1通ごとに課税されます。

・登録免許税

所有権移転登記や抵当権登記などの不動産登記に対して課税されます。売買による土地の移転登記の場合、本来は不動産の価額(原則として固定資産課税台帳に記載された価格)の0.2%であるところ、2021年3月31日までに登記を受けると0.015%。住宅用家屋の所有権の移転登記の場合、本来は不動産の価額の0.02%であるところ、2020年3月31日までに登記を受けると0.003%(長期優良住宅等の場合0.001%)。抵当権の設定登記は2020年3月31日までであれば0.001%。

・不動産取得税

土地や住宅を取得(相続などは除く)したことに対して課税されます。本来は固定資産税評価額の4%であるのに対し、2021年3月31日までの引き渡し分までについては税率が3%になります。また新築住宅の場合、固定資産税評価額から1,200万円(長期優良住宅等は1,300万円)を控除した後の額に対して課税されます。土地部分については固定資産税評価額の1/2相当額に対して課税されます。

・固定資産税・都市計画税

不動産を所有することに対して毎年課税されます。2020年3月31日までに竣工された新築住宅については、原則として税額が1/2になります。そのほか、期限なく住宅用地の特例があります。

・消費税

購入した不動産の建物部分にのみ課税されます。土地部分には課税されません。税率は現在8%ですが、2019年10月から10%になります。

住宅購入によって軽減される税金の制度

住宅を購入すると、給付金が支給されたり税金が軽減されたりします。

・すまい給付金

原則として、住宅ローンを利用して取得した住宅に自分で居住する場合に支給されます。実施期間は2021年12月までに引き渡されて入居が完了した住宅までです。

【主な要件】
1)住宅の所有者が不動産登記上の保有者であること(一部も可能)
2)住宅の居住者は、住民票によって居住が確認できること
3)収入要件を満たすこと(家族構成や夫婦の収入によって異なる)

※夫のみに収入があり、妻、中学生以下の子供2人の世帯で、夫の不動産登記上の持ち分が100%である場合
①消費税8%時…収入額の目安が510万円以下(給付額:10~30万円)
②消費税10%時…収入額の目安が775万円以下(給付額:10~50万円)

【実施期間】
2021年12月までに引き渡され入居が完了した住宅まで

・住宅取得金等特別控除(住宅ローン控除)

住宅ローンを借り入れて住宅を購入すると、原則として毎年末の住宅ローン残高の1%相当額が取得から10年間所得税額から控除されます。所得税から控除しきれない場合には翌年の住民税から一部控除されます。ただし、2019年10月1日から2021年12月31日までの間に居住を開始した場合、控除される期間が13年になります。

【主な適用要件(新築住宅の場合)】
①床面積が50㎡以上であること
②住宅ローンの借入期間が10年以上であること
③控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であることなど

【最大控除額】
一般の居住用住宅の場合、2019年9月までは10年間で最大400万円、2019年10月1日から2021年12月31日までの間に居住を開始した場合は13年間で最大520万円。 

消費税増税に伴い、さまざまな措置が講じられています。消費税だけでなく、その他の税金の優遇制度や住宅ローンの内容なども併せて購入のタイミングを検討してみてください。

国分さやか

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お金の教室 おさいふほんわか心もほんわか 代表
創価大学教育学部を卒業後、旧日本興業銀行の保険代理店や政府系金融機関に従事。"得をする方法を知りたい!"という一般生活者が多いものの、実は金融知識の不足から損をしている場面、しかも損をしていることにすら気付かない場面があまりに多い現実に問題意識を抱く。これを解消することを決意し、金融教育に携わる仕事を希望してFPの資格を取得。金融資産が増やすことだけでなく、幸福度数も増えることを大切にしている。現在、個人相談業務と並行して、金融の基礎知識を学ぶためのセミナーやFP資格講座、高校・大学、企業への出張講義などで活動中。


2013年
・第4回日本一のマネー講師決定戦E1グランプリにてグランプリ受賞
・第4回FP向上のための小論文コンクールにて奨励賞受賞
2014年
・三省堂より初めての出版(その後、学研出版等より計5冊の出版)
・日本FP協会電話相談員
・資格の学校TAC専任講師
2015年
・NHKラジオ「午後のまりやーじゅ」「ごごラジ!」お金のコーナー担当
2016年
・日本FP協会パーソナルファイナンスインストラクター

<保有資格>:CFP、FP技能士1級、相続アドバイザー2級、小学校教諭第一種、幼稚園教諭第一種